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ブラジルでポピュラーな貝殻占い~守護神が占うあなたの人生~ おおうらもこ 月刊ピンドラーマ2024年8月号

ブラジルでポピュラーな占いの一つが、「ジョーゴ・デ・ブジオス(Jogo de búzios)」と呼ばれる貝殻占いです。路地や蚤の市のフェイラなどで、着飾った女性がトレーに散らばった貝殻を見て対面の人と話し込んでいる光景...それがまさに貝殻占いです。

今回はブラジルの有名人から庶民層にまで幅広く頼りにされ、人々の悩みや迷いに寄り添って貝殻占いも行ってきたクリスチャンさん・パウラさん夫妻に話を聞きました。

パウラさん(左)とクリスチャンさんあ(右)

★アフリカ由来の伝統的な占術

ブラジルの貝殻占いはアフリカ由来の伝統的な宗教カンドンブレで利用されてきた占術です。カンドンブレは植民地時代からバイーア州のアフリカ系奴隷を中心にオリシャーと呼ばれる神々が崇拝されてきたもので、貝殻占いはかつてアフリカ系の人々の間で利用されてきました。

そのカンドンブレとインディオの宗教やカトリックが組み合わさり、20世紀に入ってからはフランスのスピリティズムも融合し、ヒンズー教や仏教などの要素も取り入れられた混合主義(Sincretismo)の宗教がウンバンダです。ウンバンダは現在、バイーア州やブラジル南東部に多く広がり、信者の人種や民族は多様性に富み日系人もいます。特にサンパウロではこのウンバンダに関連して身近な所で貝殻占いが行われています。

カンドンブレやウンバンダはその儀式で使用されるインディオ由来の楽器名からマクンバと総称されることもあり、呪術的なイメージを持たれやすいですが、実際には人生に平安を求める人々の宗教で、その一助となってきたのが貝殻占いであり「占い自体は宗教とは直接関係ない」とのことです。

★霊性の高さが求められる貝殻占い

貝殻占いは「貝殻にエネルギーを集中させる」占いです。相談者に発せられる言葉は単なる占い師の言葉ではなく、オリシャー(神々)からのメッセージです。

ウンバンダの場合、「聖なる母(Mãe de Santo)」や「聖なる父(Pai de Santo)」と呼ばれるシャーマンのみが占断を認められます。クリスチャンさんとパウラさんはサンパウロ市にある創設51年のカシッケ・ペーナ・ブランカ・ウンバンダセンターの聖なる父と母です。センターで行う儀式の中心的役割を担い、霊媒を見守りながら時に語りかけ、時に聞き役となって霊を導くことのできる、ブラジル・ウンバンダ連盟に登録された聖職者です。

クリスチャンさんの両親が同センターの創始者で、母親はカンドンブレのシャーマンから習得した貝殻占いを創設時より行ってきました。20年前に母親から一年をかけて貝殻占いを習い、今日まで依頼があれば占いを行っています。今も、週に3、4人が二人の元を訪れ、依頼主の多くはうつを煩い、その要因を辿ると家族や夫婦、恋人関係の問題、仕事や健康に関する相談だといいます。「ここは魂の救急治療所なのです」。

貝殻占いの様子

★貝殻占いのリアル体験

使用される貝殻はアフリカ原産で、海や滝などの天然水で浄い清めた後、自然豊かな土地に広げてオリシャーのエネルギーを宿らせます。

クリスチャンさんは21個の貝殻を使用しますが、53個使用する方法など人によって様々です。21個のうち、白い6個は家族関係、残りの茶色は他の人間関係を占います。

使用される貝殻

通常、占うためには数日前から赤身の肉を食べないなど、霊性を高める特別な準備を行います。占う時には特別な装身具を身につけ、最初に祈りを捧げ、トレーにひとまとめにした貝殻を手で覆いオリシャーを降ろします。そして、相談者の両手のひらにすべての貝殻を乗せ、相談者は名前と生年月日を言います。その後、貝殻を手のひらから一気に落として散らします。その時の貝殻の散らばり方や、貝の表裏の織り成す模様がオリシャーからのメッセージです。

クリスチャンさんの守護神はエシュ・チリリー(神々のお告げを人間に伝える役割を果たす)です。占いの結果は全てエシュからのお告げです。

深刻な悩みを占った後は相談者からネガティブエネルギーを受け取りますが、その後お香やハーブで心身を浄化して次の占いや儀式に望みます。

今回、筆者自身が仕事運を占ってもらった結果は、
「今の仕事は悪くないがやや閉塞的。その状況はあと6か月から1年後に変化し、より安定した収入の仕事が手に入るだろう。アーメン」
とのことでした。

◎インフォメーション
ウンバンダセンター(Núcleo de Umbanda Cacique Pena Branca)
R. Santo Antônio, 1299 - Bela Vista
https://www.instagram.com/nucleocaciquepenabranca/


おおうらともこ
1979年兵庫県生まれ。
2001年よりサンパウロ在住。
ブラジル民族文化研究センターに所属。
子どもの発達にときどき悩み励まされる生活を送る。

月刊ピンドラーマ2024年8月号表紙

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