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巨大ハイテク企業は独占禁止法で取り締まるべきか?

昨年10月、フェイスブック社が社名を「Meta(メタ)」に変更し、巨大な仮想空間「メタバース」の構築に年間1兆円を投資することを発表しました。

アメリカの5大巨大ハイテク企業、アルファベット、アマゾン、アップル、マイクロソフト、そしてメタは、その頭文字をとって「MAAMA」と呼ばれているとか。

企業がここまで巨大になると、独占禁止法などで取り締まった方がいいのでは? という気もしてきますね。

「これらの企業は巨大な顧客基盤を持ち、人工知能(AI)に学習させるための蓄積データを支配していることで、圧倒的に優位な立場に立っているというひとつの見方がある。巨大企業はこれを利用して競合他社をつぶしてしまうのではないだろうか。」
"One view is that the companies' large customer bases, and control of pools of data with which to train artificial intelligence (AI), give them an insurmountable advantage. Won't the giants use that to squash rivals?"(英エコノミスト2022年1月29日号 "Supersized ambitions"より。以下引用同じ)

しかし今後は、5大企業がずっと安泰、というわけにもいかないようです。

なんといってもハイテクの世界は移り変わりが速い。たとえばIBMとノキアは、それぞれパソコンとスマートフォンという次の新しい波に乗り遅れてコケてしまいました。そのような例はいくつもあります。そうなるのを恐れて、MAAMA各社はメタバースや自動運転車、量子コンピューターなどの新分野へ、当面の利益を度外視した巨額の投資をしています。

また、メタバースの分野では「フォートナイト」のエピック・ゲームなどの企業も健闘していますし、最近は「Web3」というユーザー主体の分散管理型サービスが出現するなど、ハイテクの世界では、巨大企業が中央集権的にユーザーを支配する形そのものが終わりを告げるかもしれません。

「それでも規制当局には、先手を打っておきたいという思いがある。2020年、現在はアメリカの連邦取引委員会の委員長であり反トラスト法の第一人者であるリナ・カーンは、巨大ハイテク企業が近隣分野へ進出するのを禁止することを提言した。また、2023年までにいくつかの大きな反トラスト訴訟がアメリカの法廷にのぼることになるだろう。欧州では、大手ハイテク企業を「事前に」、つまり、事後に反トラスト訴訟で処罰するのではなく、このような企業の動きを前もって制することを狙った広範囲にわたる「デジタル市場法」をまもなく通過させる構えだ。(これについてはEUの競争政策担当委の委員長であるマルグレーテ・ベステアーが、「Money Talks」というタイトルのポッドキャストで、そのすべてを説明している)。」
"Nonetheless, the temptation is for regulators to clamp down pre-emptively. In 2020 Lina Khan, who is now America's top antitrust official, recommended that big tech firms be banned from expanding into adjacent areas. Some big antitrust cases may reach America's courts by 2023. And Europe may soon pass a sweeping Digital Markets Act, aimed at regulating big technology companies "ex-ante" -- that is, constraining such firm's behaviour upfront, rather than punishing them later with antitrust cases (Margrethe Vestager, the EU's competition tsar, explains all on our "Money Talks" podcast.)

しかしエコノミスト誌は、このような規制は無用であり、自由競争に任せるべきという意見のようです。

「だが、最良の政策は企業を締めつけないことだ。ハイテクへの投資は生産性の向上につながるうえ、巨大ハイテク企業が再投資しているキャッシュフローの割合は、10年前に比べてほぼ倍増している。(中略)実際、ハイテク大企業が新興技術の波に乗りそこなってひっくり返る事態が珍しくないことは歴史が示している。現在のハイテク巨大企業が、そうなる運命を避けるべく新分野に数十億ドル規模の投資をしたいのであれば、さしあたって止める理由はないだろう。」
"Yet a lighter touch is the best policy. Investment in tech is linked to rising productivity, and the share of cashflows the tech giants are reinvesting has almost doubled since a decade ago. (中略)Indeed, history suggests that tech giants are most often brought down by failing to master emerging technologies. If today’s giants want to spend billions trying to move into new areas to avoid that fate, so far there is no reason to stop them. "

うーん、「Money Talks」な世界ですね。さて、今後のハイテク業界はどうなっていくでしょうか。

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