見出し画像

TMR編集室月報23.08|音に導かれてゆく旅路

Podcast「Temple Morning Radio(略称TMR)」編集・配信を担当する遠藤卓也の、お寺や音に関する活動月報

TMR/音の巡礼のこと

SoundCloud を始めた。遠藤が各地のお寺でフィールド録音した音源をアップしていく予定。
まずは佐賀の素晴らしい見晴らしのお寺で気持ちよく鳴り響いた「般若心経」と、7/30に秩父の札所寺院で行われたイベントでのギター(笹久保伸さん!)とサンポーニャと3人のお坊さんによるセッション。
どちらの音源もユニーク。ぜひフォローしてお楽しみください!!


The Man Who Loved Beer

8/18に、文京シビックホールで「岡田さんと旅した世界の音を楽しむ夜」に参加した。岡田晴夫さんは昨年12月に事故で惜しくも急逝された、パイオニアに長年勤められていたサウンドエンジニア。
僕は一年前にとあるイベントで声をかけていただき、一緒に身延山に録音に行ったり、これから各本山へフィールドレコーディング巡礼をしようと約束していた。
年齢的にも技術的にも大先輩で、こちらから一方的に師匠と仰いでいたが、偉ぶるようなところが全くない温厚な人格者。いつもニコニコで好奇心旺盛。こんな大人になりたいと思った。

(岡田さんとのことは、この記事で少し長く綴っている。)

この日は四十名の人たちが岡田さんの音を聴きに集まった。「サウンドバム」というフィールド録音のプロジェクトにて、岡田さんと海外に録音の旅に出かけたという方が中心で、知り合ってまだ1年も経ってない僕はきっと一番新しい縁者だ。

約四十名全員チェックイン(!)では、それぞれが岡田さんとの思い出を語る。みなさんが口々にいう岡田さんの印象は同様に「いつもニコニコ」そして「ビールが大好き。だけど痛風で控えている時期があった」という語りが多かった笑
僕も身延の玉川屋さんで唐揚げをつまみに楽しく飲んだことを思い出す。

岡田さんが録音した音には、楽しさが溢れていた。一番印象的なのは人の声。人の声とはなんと好ましい響きなのだろう。そう思えるような声しか録音されていなかった。
瑞々しい鳥の声、輪郭までわかる波の音、街のざわめきや祭の音・機械の音までも楽しげだ。
参加者が口々にいう「素晴らしい音を残してくれてありがとう」。
音楽が当たり前にある世界で育った僕らには気づきにくいが、自然界の音や人の生活の音は意外にポピュラリティに満ちている。そんなことを感じさせてもらえる録音だった。

最後の録音、というのも聴かせてもらえた。そこに録音に行くことを楽しそうに話してくれた岡田さんの顔を思い出して、涙がでた。
ああ、岡田さんは本当にそこで録音してたんだな。友人たちとの楽しい宴の翌朝の、少し重たげな声も入ってた。打ち寄せる波の、コロコロと幸せそうな音に、また泣いた。

岡田晴夫さんという人物に出会えてよかった。この世ではたった数ヶ月しか、ご一緒できなかったけど、それ以前の数十年のことを、たったの数時間で感じさせてもらった。その中で受け取るものがたくさんあったと思う。
いつまでもご機嫌でニコニコと、自分の好きな音について遊ぶように探求し続ける。
自分もそうあれたら幸せなことだろうな。

今日の場を設けてくださった皆さん、本当にありがとうございました。
帰り道にサッポロビールのメガジョッキで岡田さんに献杯。


護摩法要のサウンドスケープ

縁あって、神奈川県足柄上郡大井町にある東寺真言宗 最明寺さんの年に一度の護摩祈願祭を録音させてもらった。
最明寺さんには善光寺堂があり、秘仏の善光寺如来(御前立)がいらっしゃる。お坊さんもたくさん来ておられて、大人数で大迫力の法要に圧倒された。かっこいい!!
お経に呼応しているかのような蝉の大音響や、横を流れる水のせせらぎも気持ちいい。
祈願祭としては過渡期の段階で、今年はお寺の関係者の皆さんを中心にお参りいただく形をとったそうだが、来年はぜひもっと多くの方にご参拝いただけたらいいな!と思った。
録音させていただいた音源は鋭意編集中〜。太鼓の音が大きくて、なかなか難しい…。

(最明寺住職の加藤宥教さんは少し前にTMRご出演いただいている)


「ぎきょくがよまさる」一周目完走!

"音" にまつわる活動としてこちらでも紹介したいが、昨年12月より月に2回くらいオンラインで集まってサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を素読みしてきた。

素読みとは、書物に書かれた意味・内容を考えずに音読すること。発語に感情も込めない。(映画「ドライブ・マイ・カー」を見たことのある方は、そんなシーンが思い浮かべられるかと。)

青森・五所川原 法永寺の小山田和正さんの呼びかけで、興味をもった有志が集い4名でそれぞれの役のところを素読みし続けてきた。会の名前は「ぎきょくがよまさる」。

8月1日に1巡目を読み終えた後の感想シェア会を、小山田さんが早速文字起こししてかわいい表紙のZINEに仕立ててくれた。

右がZINE

はじめて素読みで一冊を通読したばかりのフレッシュな実感が、瞬間冷凍のようにパッキングされてて自分としてはすごく面白い。

この「記録」に何か意味があるかはわからないが「ぎきょくがよまさる」というプロジェクト自体は、このZINEがあってこその活動であると感じた。(小山田さん、ありがとうございます。)

参加者への参加特典(ごほうび)のようなZINEだが、鳥取の汽水空港さんには置いていただいているとか。こういうものを小規模書店で買えるような時代の空気感を僕は好ましく思っている。

個人でも「WORKSHOP VO!!」のwebページから、300円以上の寄付で送ってもらえるようです。
読むということ待つということに興味のある方。素読みの会を開いてみたいという方はぜひ取り寄せてみてください。


新Podcast「ゆるやか死生学」はじまりました

もう一つ "音" にまつわる活動について。
TMRをきっかけに、いくつかのポッドキャスト番組の制作を担当しているが、この度はグリーフサポートが当たり前にある社会をつくることを目指して活動する一般社団法人リヴオンの代表、てるみんこと尾角光美さんに声をかけてもらって、新しいポッドキャスト番組を立ち上げることに。

その名も「ゆるやか死生学」。

この番組は「死の学びを全ての人の手に」という願いをこめて、死生学を共に学ぶ時間です。
今、自らの死や身近な人の死に直面している人や、また、今はまだ死が身近にないけれど、このテーマについて考えてみたいと思っているみなさんに、この番組をお届けできればと願っています。
番組の内容は、死に関する身近な疑問をテーマごとに考える回、これまでの死に関する研究の知見なども踏まえながら学んだり、そもそも「死生学」とは何かを探求したり、ゲストを招いて、人の物語から死を学ぶ回などを予定しています。

番組説明より

悲しみや苦しみのただ中にある人のために、やさしい学びを届けたい」という、てるみんの思いをもとに『ラジオ深夜便』のような、眠れぬ夜に枕元で灯る声のあかりを目指した。

世の中に必要な大切な活動に、自分の力をつかえることを嬉しく思う。(そのうち、自分も少し喋らせていただく機会があるかも)

既に #1 を配信中。Apple PodcastやSpotifyにて「ゆるやか死生学」で検索して、ぜひフォローをお願いします!

番組トレーラー

フォローはこちらから!(お好きなアプリでお聴きください)


取材記事|五十川幸導さん(兵庫県明石市 曹洞宗 雲晴寺)

月刊住職8月号は、兵庫県明石市 曹洞宗 雲晴寺 五十川幸導さんにインタビュー。地方寺院での坐禅会成功事例として、とても参考になるお話しが聞けた。
多くの方に来ていただけるような工夫も大事だけど、通ってこられる方とのコミュニケーションに成功の秘訣があるように感じる。


取材記事|雪山俊隆さん(富山県黒部市 浄土真宗本願寺派 善巧寺)

『地域寺院 8月号』は富山県黒部市 浄土真宗本願寺派 善巧寺 雪山俊隆さんを取材。
富山に伝わる「お講」の風習を、今どのような形で継いでいくのか。雪山さんの取り組みへの思いやこれまでの経緯をしっかりお聴きできて良かった。

これまで続いてきたことの良さを見定め、現代的な形として光を当てなおすこと。これからの時代にお寺を継続していくための、重要なお仕事だと思う。そのために雪山さんも試行錯誤なさっていて、諦めずに「でもやるんだよ」の精神が素晴らしく、多くのお寺の参考になる事例記事にできた。

雪山さん、ありがとうございました!


味の巡礼

サイゴン(西池袋)

カレーの店 ガン爺(西新橋)

マレーチャン(西池袋)


音のこと

ずっと欲しかったカレン・ダルトンの「In My Own Time」LP、50周年記念盤で買えた。嬉しい。
このレコードに針を置くと、秋風が吹いてきそうな気がする。夏の終わりのさみしさと、少しの期待と。


#TalkingHeads 1984年のコンサート映画『Stop Making Sense』が、公開40周年を記念して4Kレストア化され、A24配給で劇場公開されることに。

サントラは今まで未収録だった曲が追加された完全版LPがリリース。最新マスタリング音源をアナログで聴ける喜びもさることながら、当時のパンフレットにメンバーたちのライナーノートが追記されたものが封入されており、それがとてもいい。

パンフレット裏面の質問は「ジャーナリストやインタビュアーがこの質問をしないように」載せたとバーンが語っており、彼ららしいなと思った。「それがうまくいったかどうかはわからないが」とも笑
早く劇場で観たいな〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?