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TMR編集室日誌22.7.5|Brian Eno - Ambient Kyoto

Podcast「Temple Morning Radio(略称TMR)」の編集・配信を担当する遠藤卓也がお届けする、仏教文化・お経のフィールド録音等に関するエッセイ

Brian Enoの作品展「Ambient Kyoto」へ。
日本列島に台風の接近する中、京都は雨。連日の猛烈な暑さが多少マシになった日のこと。

会場は東本願寺の南側にある築90年の建物、京都中央信用金庫 旧厚生センターだ。美術館のような場所ではなく、無機質ながら歴史の趣きを感じられる建物というのがなんだかいい。

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まずは3Fからと言われ、階段をのぼっていく。建物内がEnoの音楽に満たされている。トイレの中にまで。

世界初公開だという「Face to Face」という作品を体験したあとに「The Ships」へ。部屋の前で靴を脱ぎながら、中から大きめの音で聴こえてくるEnoの歌うVU「I'm Set Free」にかなりグッとくる。この懐かしい感じは、なんだろう。学生の頃、はじめてクラブに行った時のような。

暗い部屋に目が慣れてくると、スピーカーなどのオブジェクトが配置されていることがわかる。椅子に坐る人、地べたで足を投げ出している人、思い思いに音に身を浸している。「ああ、最高、、、」

「The Ships」の部屋にずっといられる気がした。

他にも、以前より体験してみたかった「77 Million Paintings」や「Light Boxes」といった作品があったが、通底する面白さはランダム性だろうか。そもそも館内で流れている「The Lighthouse」というオーディオ作品が、一日で流しきれない程の膨大な音源なのだそう。各部屋では、音・光・形がランダムに形を変えて常に更新され続けていく。訪れるタイミングによって、全く異なる体験があるということ。

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組み合わされ続ける光と音と形に浸っていると、まず時間の感覚を失う。右のオブジェクトを見ていて、ふと左に目をやるとさっきとは全く違う色や形に変化している。一瞬、日常の雑事に気をとられたりもする。なんか、坐禅や瞑想の時に似ているかもしれない。

そして現れ続ける音と色と形の組み合わせがたまに、何かの古い記憶と繋がる瞬間がある。ああ、自分は生きているんだなあと思う。不思議な体験だ。

本当に時間を忘れて居続けてしまいそうだったけど、現実に引き戻すのは物欲だった「図録買おうかな、、、」

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財布以外、荷物の一切を京都駅のロッカーに置いてきていた自分は、袋などがつかずこのままのお渡しとなると言われて、迷った、、、。傘があるとはいえ、わりとデリケートに扱いたい本を生で持ち歩くのか(泣)
するとshopの店員さんもちょっと迷って、品出し前のTシャツか何かが入っていたであろうビニールで丁寧にくるんでくれた。

店員さんの優しさをありがたく感じて、すっかり良い気分で京都中央信用金庫を出ると、雨はほぼあがっていた。(店員さん、ごめん!)

最後にエントランスに掲げられたEnoの言葉をもう一度反芻する。

ありきたりな日常を手放し、別の世界に身を委ねることで、自分の想像力を自由に発揮することができるのです。

まさに、そんな時間を過ごしたなあ。

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