見出し画像

展覧会レクチャーより。その2

さてさて、展覧会のレクチャーはまだまだ続きます。第2章の後半展示のテーマは、『大量生産のための技法』からの作品制作の変遷、でしょうか。まずは鋳込みによる型成形から一点モノの作品を造る作家二人。

『長江 重和』…圧力鋳込みによる作品を“吊るして”焼成することによって起きる変形を作品に活かす作風で知られている作家です。展示室内のケースの中には、白一色の、様々な形状を見せる作品が並べて展示されています。焼き物というからには硬いモノであるはずにも関わらず、展示ケースの中でまるで風に吹かれて舞い踊る蝶の折り紙細工のようにもみえる軽やかさ。思わず触れて、陶磁器であることを確かめたくなるような作品。

『山浦 陽介』…こちらも鋳込み技法による一点モノの作品制作ですが、型として使用するのは長方形の積み木のようなパーツです。積み木のように積み重ねて造り出した隙間に磁土を注ぎ入れて焼成した作品には、型の隙間から染みだした“バリ”があちこちに伸び、無機物の構造体であるにも関わらず、何故か巻き貝の殻のような有機的な印象を観るものに与えてくれます。

『松永 圭太』…多治見の地場産業として幼少より陶芸に馴染んできた彼が造り出すのは、あえて粒子を揃えずに撹拌した陶土をゆっくりと型に流し込んで造り出した年輪のような地層のような縞模様。不揃いの粒子が産み出す剥がれやひび割れ、凹凸の美しさと、歪みの上から貼り付ける転写シートの素材感。型を使用した技法にありがちな無機物的な印象とは正反対のまるで木材のような見た目の作品です。
この先は第2展示室、吹き抜けの回廊のような明るい日差しの入る展示ケースに並ぶのは、個人として窯業技術とどのような関わり方をしていくのかを、模索している作家達。

『井戸 真伸』…3Dモデリング等を使用した型制作による作品作りや、プロダクトデザインなどの活動をしている作家。3Dモデリングによる八角形をベルヌーイ曲線の公式に従って極小化していくデザインの皿は、思わず目を見張るような精緻極まりない造形です。

『田上 知之介』…デザイナーで、産地再生のためにプロダクトデザインや、リサイクル陶土を使用した作品制作などを行っている。シンプルで、かつ柔らかな印象をあたえる食器などで、衰退しつつある陶磁器産業技術との関わりかた等を様々な切り口でアプローチする活動をしています。

ここまでが本館一階第2章です。『技術』という側面からの各作品への様々なアプローチで、この地域の代表的な技法とともに、内包している問題にも思いを馳せることができりかと思います。……展示はまだまだ続きます。今日はここまで。続いて第3章に向かいます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?