『ミロ展』からの関連展示

先日ニコニコ美術館の生放送をまた拝見していました。いつも展示担当者の学芸員さんがゲストの皆様と熱いトークを展開する、こちらの番組が大好きで、気がつくと4時間なんてことも(笑)。今回は地元で古巣の愛知県立美術館ですので、尚更に懐かしい気持ちも込めて視聴していました。それらのトークのなかで、今回は当館にも関連している作品の展示があることに気付いたので、呟いておこうと思います。
ミロの来日時の日程、行程表のパネルの中に出てきた、当館にゆかりのある人物は主に二人。他にも『民藝』とのつながりから濱田庄司などの名前も上がりましたが、とりあえず現在展示室にあるものからご紹介をしていきたいと思います。
一人目は、加藤唐九郎氏。知る人ぞ知る愛知県の陶芸界を牽引してきた重鎮、ビッグネームです。
ふたりめは、八木一夫氏。こちらも京都の陶芸界では著名なお方です。
参考までに、お二人のデータを載せておきますね。
加藤唐九郎(1897-1985)
愛知県瀬戸市に生まれる。小学校時代より窯場や西洋絵画等に親しみ、1914年より丸窯にて作陶生活に入る。瀬戸、美濃、唐津、中国地方等の古窯の発掘調査を行い、桃山時代の茶陶の再現に尽力。1952年には、『織部焼』で人間国宝に認定。

八木一夫(1918-1979)
陶芸家八木一艸の長男として京都に生まれる。1937年京都市立美術工芸学校彫刻科卒。卒業後伝習生として、沼田一雅に師事。1948年ごろ、山田光、鈴木治らと共に『走泥社』という前衛陶芸の団体を結成。新たな視点からやきものを問い直し、『用に囚われない』オブジェを発表して注目された。

こちらの二人、現在当館常設第七展示室内に、偶然共に展示がなされています。
(タイミング的に本当に偶然なのか、それともお互い学芸員さん同士旧知の仲ですから“狙って”展示に入れ込んだ可能性も無いとはいいきれませんが。)
あいにくと、現在の第七展示室は、作品撮影不可のフロアとなっていますので、作品の映像はお見せ出来ませんが、私の拙いレビューにて、想像を膨らませて頂きたいと思います。

まずは、八木一夫氏作品『獅子』
当館の地下にある、サンクガーデンの青もみじを背景としてケースの中にこじんまりと佇む小型の作品です。今回の展示テーマが、『いきもの×やきもの』ですので、それに沿って同じケース内には、スウェーデンの陶芸家、デザイナーであるリサ-ラーソン氏の作品、『小さな動物園シリーズ“猫”』(1956~1978年作)と、『陶製置物“ライオン”』(1960年代)も展示されています。その二点もとても可愛らしいのですが、八木一夫氏の作品、『獅子』(1964年作)、よくよくキャプションを眺めると、英語の作品名表記が、“Ash  Tray”=灰皿となっているのです。確かに顔に相当する部分が、通常ならば凸となる筈が凹となっていて、周りに巡らせたたてがみに対して見ると、まぁ、灰皿のようにも見えないこともないですが。凹面をよくよく目を凝らして観察すると、線彫りと、貼り付けた粘土で目鼻が、つけられているのがわかります。まるで、熊谷守一の猫のような単純化された線で、ライオンの特徴的な太いマズルを表現しています。こちらの作品のチャームポイントは、何と言っても『足』の造形でしょう。まるでやんちゃな仔猫のような、元気いっぱいに指先を開いた前足が、いきおいよく前方に突き出されて、後ろ足も同じく四方へと広げて造形されています。コロンとした丸いフォルムのたてがみと顔によく合った、非常に愛らしい造形で、確かにミロの作品の中に登場しそうな面白さです。

そしてもう1つ、加藤唐九郎氏の作品、『絵志野茶碗“鯨帯”(1969年作)です。銘の“鯨帯”の名前の由来ははっきりとはキャプションがありませんが、白い志野の釉薬の掛けられた、いびつな(沓形とまではいきませんが)型の抹茶茶碗です。志野釉独特の表面のテクスチャーは、ぽってりとした厚みのある滑らかな凹凸と、柔らかい風合いの白に所々覗く地肌の赤みにより、温もりを感じさせます。そこに刷毛で掃いたようにして、黒の釉薬で墨色の筋が絵付けされて、その色味がまるで鯨の背中が波間に現れたようにもみえる作品です。

どちらの作品も、素敵で、じっくり眺める程に味わい深いものです。ぜひともミロ展と合わせて実物をゆっくりとご覧頂きたいものですね。

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