美術館博物館という所

先日のこと。いつものように平日の平和な美術館で、入り口のチケット販売担当をしていました。当館受付ブースは、建物デザインの関係上少し目につきにくい位置関係にあり、入り口から入ってきたお客様が気付かずに通過されてしまうので、必ずお声をお掛けするようにしています。そうしないと展示室入り口まで行って、チケット販売を探して戻らせてしまいますので。
その時も同じように入館してきたお客様に「こんにちは。ご観覧ですか?」←(この聞きかたには理由が、あります。後ほど説明しますが。)とお声掛けしました。
「え。観たいですけど、ここってお金要りますか?」というお答え。そう。たまにこういうお客様がいらっしゃいます。この問い、一体どういうふうに捉えたら良いのでしょうか?ご存知のかたも多いかとは思いますが、当館は、『公立美術館』です。県による運営の施設です。この場合、博物館法では、常設展示を原則無料、ただし作品管理必要上認められれば入館料をとっても良いというなかなかグレーな決まりがあることは、よほどのマニアックな方や、博物館美術館関係者でなくては知らない話だろうと思っています。
この場合、ふらっと立ち寄った感じの一見さんがそんなことを知っているとは考えにくいですから、つまりはこちらのお客様は、『無料で美術館が観られる』という考え方をされているという事になります。

確かに当館は周囲にほとんど人家のない、山の中にありますし、お散歩にはもってこいの遊歩道もありますが、公園の付属施設にしては、建物が立派過ぎませんか?先日所用で都内に出た際に、ついでとばかりに都内の美術館をいくつか廻りましたが、さすがに無料かと尋ねてそのまま帰るお客様には遭遇したことがありませんでした。………この現象、当館だけなんでしょうかね?

美術館博物館というモノには、収集と、保存と研究、公開という業務がありますから、当然それをするには先立つモノがそれなりに必要になる訳ですし、もちろん建物の維持管理、来館対応スタッフなどの人件費も含めて、必要経費は出て行きますからね。よほど懐具合のいい自治体でもない限り、『美術館』『博物館』という経費のかかる施設を『無料』にすることは無いのでは。多分、きっと。不勉強のために、もし万が一観覧無料の美術館が存在するならば、お知らせ頂けたらと思う程に、当館一見さんにそういう反応されています。

所蔵品の質も量も、この分野に関しては国内トップクラス(自画自賛)だと、思うんですけどね…………。そうそう、後程にと言いましたがわざわざ『御観覧ですか?』と聞くのには、三つ程理由が、あるのです。まず一つ目は、当館にある作陶体験施設のご利用者が、受付場所がわからないために本館受付に来ている場合(陶芸体験は建物が別棟のため受付も別ですので。)二つ目は、今はクローズしていますがレストランのみのご利用も可能だったため。そして、三つ目の理由が、『お散歩』もしくは『ランニング』『ウォーキング』のみのご利用者様が、『トイレ』として当館を利用するため。なんだか情けないようにも思えますが、谷口吉郎建築、オークラランタンの下がった立派な吹き抜けのある『トイレ』

…………なんですかね。美術館、なんですけどね。

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