少し前の話です。

私の勤務先の館は、陶芸の体験コースもあるため、学校団体の受け入れが多いほうだと思っています。あいにく昨今の情勢として、例年なら遠足や、社会見学の生徒さんでにぎわう所が、第×波等の制限でキャンセルが相次ぎましたが、利用されるときは大抵『作陶』→『食事休憩』→『観覧』というルートを辿ります。作陶に関しては当館には優秀な指導員さん(プロの陶芸作家でもあるのです)にお任せできますので、生徒さんの持ち味を活かした体験が楽しめるのですが、そのあとの『観覧』が、なかなか難しい問題を孕んでいると感じます。まずは、観覧のための学校側の時間設定。

当館所蔵品だけでも八千点以上を誇る(誇らせて下さい(笑))作品数と、広大な敷地が特徴です。常設展示だけの観覧でも、世界中の各地の陶磁器をほぼ網羅していますので、『観る』ならば一時間以上(好きなかたはもっと)必要です。学習として来館されるならば、せっかくですから学芸員さんに解説もお願いして、体験をより深めて帰って頂きたい所です。が、しかしながら、現実にはなかなかそこまで当館を上手に利用してくださる学校もいらっしゃらないのが実状です。時間設定が30分あれば良いほうで、下手をすれば『昼食兼観覧』で一時間なんてこともよくあります。せっかく作品を作るのですから、前後どちからかで『陶芸』という文化的側面、歴史的側面という『学習』をして帰って下されば良いのになぁ〰️……と、残念に思うことがほとんどです。

短い時間設定で観覧するためにはどうしても、先生を先頭に一列にならんで館内を『ぞろぞろ歩く』という状態で作品の前を『通過』していく他はありません。たとえ生徒さんが気になる作品があったとしても、立ち止まることも出来ずに『流れ作業』のように通りすぎる。勿体ないんですよ。

中にはさらに乱暴な(?)やりかたとして、『自由観覧』という方針を採られる学校さんもいらっしゃいます。これは、子供さんにしてみれば、興味の持ちようもない、言葉は悪いですが『放牧』と言ってもいいような状況を作り出します。せめて先生サイドから生徒さんに『課題』が与えられていれば、自由観覧でもそれなりの『秩序』が保たれるのですが。当館にもワークシートなどの用意がありますので、事前にご依頼がありさえすれば学年にふさわしいテーマをご用意することも出来ますからね。『事前にご依頼がありさえすれば』です。

そこに学校側の『校外学習』に対する姿勢が現れるんです。与えられた機会を、貪欲に『生徒の学習機会』として最大限の効果を得ようとする先生がいるか居ないかです。そういう意欲のある先生がいる学校は、先生が下見に来たついでに事前学習するべき内容まで踏み込んで学芸員さんと打ち合わせをして、当日の学芸員解説に繋げていくように、方針まで決定されています。連れて来た生徒さん達も、『学習内容』からの『実体験』で更に解説が深く理解出来ます。本来的な博物館美術館の正しい使い方はこういうものだとしみじみ思います。

当館サイドからも勿論ご予約の時に、そうした利用案内はさせて頂いてますからね。やはり将来的な観覧者数の維持を考えて行くならば、『若い世代』に『博物館美術館の楽しみかた』を知らしめていくのが、地道ではありますが、『ブロックバスター』な展覧会をするよりも長期的には効果があるのではないかと、考えています。

予算も、さほど必要ないですし。……ねぇ?



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