久しぶりの更新になりましたね。

梅雨明けとは名ばかりに不安定なお天気のなか、新しい特別展が開幕しました🎵🎵
前回までの展示と異なり、今回の展覧会では現代のアーティストによる作品をメインにすえた展覧会となります。まずはついつい敷居が高く思えて食指が動かない皆様のため(私も含む)に、学芸員さんからのレクチャーを簡単にまとめていきたいと思います🙏🙏
今回の展覧会は、大きく三章に別れて、当館の広大な敷地をフル活用して展示を行っています。『真夏にどんだけ歩かせるんだ』(学芸員さん談)……(笑)それはさておき。
まずは、タイトルの『ホモ-ファーベル』という言葉の意味合いについて。“人類というのは、『道具を使用する動物』であるという定義に基づいてさらに考察すると、我々人類の技術の進歩の歴史には、必ず『道具をさらに加工したり、作成するための道具』というモノを作成する、『工作人』という存在があると言える。これをフランスの哲学者アンリ=ルイ=ベルクソンが定義したものが『ホモ-ファーベル』である。愛知県という千年の歴史を誇る窯業地からの、現代陶芸と、地場産業への働きかけを展覧会を通して顕して行きたい。”……というのが学芸員さんからのメッセージです。😏😏😏大分ここまでで難解さを感じてしまいましたね。大きなテーマは簡単に言うならば『人の創造性』本展示はこれを切り口として構成されます。
第一章    (南館、芝生の庭園)

テーマは『素材』。素材、つまり陶芸における素材とはすなわち『粘土』。それぞれの作家さん達の『素材』に対する向き合いかたや、考えかた、『陶土(粘土)』というモノの扱いかたを作品を通して感じて貰おうという展示になっています。

『奥 直子』       作品のテーマは境界線とでもいいましょうか。妖怪のフォルムを借りて、陶芸作品に必ず存在する内部の空洞と内側外側の境界線を強く意識させる作品群。人と、妖怪の境界線も、考えさせられる作品です。

『田中 良和 』      リサイクルや、リユースといった視点からの作品制作をしている作家さんで、展示作品をじっくり眺めてみると表面に埋め込まれて見え隠れしている陶片に気付かされます。それぞれのその質感の違いなども感じる作品です。

『柴田 眞理子』   土のもろさ、繊細さ、軽さをテーマに造られた作品は、外見上は器のカタチをしているものの、隙間があって本来の用途として使う事が出来ないようになっています。   けれども器としてのフォルムの美しさや存在感は観る側に強く働きかけてくる。陶器という素材の器の脆さを感じる作品です。

『渡邉 太一郎』      作品を制作するにあたって、素材すべてを自然のモノから取り出して、作品焼成も農業の副産物の枯れ枝を使用して行い、着色にも農作物の皮等を煮出した汁を使用する作家さん。素材の持つ自然な質感を感じられる作品です。

『横田 典子』      真っ白な陶器を轆轤ではなく“輪積み”の技法で積み上げて型造られた作品は、『粘土本来の自重』によって歪み、不思議なカーブを描きます。二つと同じ型にはならない複雑なカーブ。作品の中の空洞も強く意識させる作品です。

『田中 陽子』    元々はガラス作家さんでスタートしたかたで、作品はガラスと陶土、磁土を併せて同じに焼成することによって起きる素材の『収縮率』の差から生まれるクラック(ヒビ)の質感や美しさを表現に利用した作品です。

『吉川 正道』   常滑のベテラン作家さんですが、いわゆる世間一般的なイメージである“常滑焼”と異なり、磁土を使用した作品に青白磁釉を掛けた独自性の高い作品群で知られています。しかし、制作方法としては常滑焼の伝統的技法である“ヒモ積み”を使用している。地域性と選択肢としての素材のコラボレーションを感じることができます。

(南館からの遊歩道沿いの芝生広場)

『植松 永次』     『素材』というテーマの中から選んだのは、『土』。彼の『作品』をそれと認識するには、芝生の丘の上にあるキャプションボードの前でしばし佇んで周りを見渡す必要性があります。なだらかな曲線を描く一面の芝生広場のあちこちに、自然に形成されたとは思えないような丸い地面の露出部分があるのに気がつくでしょうか。通常ならば一面芝生に覆われて、見える筈のない『土』。植松氏は芝生を剥がして裏返すことで、その下に隠された『土』の存在感をあらわしました。(すっかり芝生剥がすの上手くなっちゃいましたよ)←担当学芸員談(笑)

(本館ロビー正面中庭周辺)

『桑田  卓郎』    館内ロビーからも南館遊歩道からも異彩を放つ存在感なのは、いわゆる『梅花皮(かいらぎ)』といわれる技法を極限まで顕したカラフルなオブジェの群れ。陶器、特に志野焼に使用する“長石釉”を使用してあえて陶器表面にて『溶けて』『弾けて』『流れて』伸びるような釉薬の独特な質感を見せることで、陶磁器に使われる『釉薬』という素材の存在感を見せることに成功しています。昨年巡回展示でパナソニック汐留ミュージアムから全国巡った『和巧絶佳』展でもおなじみですね。

そして本館ロビー入ってすぐの展示室入り口にあるのは、ひときわ謎の存在感を放つ三体の作品。黒光りする表面に刻まれるのはまるで見方によっては古代遺跡の鳥瞰図のような複雑な凹凸。金属的な光沢の人間と同じくらいの大きさの壁のような作品群。

『加藤  清之』   館内地下展示室からの吹き抜けにある巨大な陶壁作品でもお馴染みの加藤清之作品は、それぞれ1作品1焼成。これだけの大きさの陶磁器をほとんど歪みなく焼成できるのは、良質な『瀬戸の陶土』があればこそ。素材の力を活かしきる造形の素晴らしさをじっくり味わって下さい。

ここまでで、ようやく第一章🎵🎵………作品の展示はまだまだ続きます。お付き合い下さいまして誠にありがとうございました🙏🙏🙇🙇

続きはまたの機会に。🎵🎵😸😸👍

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