美術館博物館観覧のマナーについて。

こんにちは。ゴールデンウィークも無事に終了、さすがに多少賑わいをみせた当館も、いつもの静けさを取り戻しました。ギャラリートークや、ワークショップなどのイベントや、ゴールデンウィークの旅行の一環で、普段美術館博物館を観覧されない層の来館が増えると、やはり話題になるのが観覧のマナーですね。今回の企画展は、基本的にすべてケースに入っていますので、問題になるのはガラスの手形やオデコの跡、あとは展示室内でのおしゃべりでしょうか。ガラスの跡に関しては、昨今の事情としてアルコールでの拭き取りが基本ですので、気にされるほどの案件ではありません。問題はおしゃべりです。当館ギャラリートークも展示室内で行いますし、お客様の作品にたいする感想や質問に関してはむしろウェルカムです。キャプションを読んで話し合うのも、看視員さん聞き耳立てて担当学芸員に引き継ぎます。
『お客様こんな事言ってますよ』というのは担当者にすれば気になるポイントですからね。学芸員さん忙しく飛び回ってますから、観覧者のリアルな反応を知るいい機会です。

この場合にマナーとして問題になるのは、『話し声』ではなく、『内容』と『音量』なんですよね〰️。先日某スペースでのお話を聞き耳立てて気になったのは、『美術館博物館は沈黙を強いる場所ではない』というお話。同行者と、作品について周囲に配慮しながら話し合うのは、先ほど言ったようにウェルカムです。稀にあるのが『詳しい人(学芸員等ではなく一般の)』が、知人を引き連れて来館して、展示室内でレクチャー的なモノを始める場合。これは賛否両論で、『詳しい説明が聞けた』と喜ぶ方と、『ゆっくり観たいのに煩くて邪魔』と嫌がる方がいます。そしてもうひとつ、よくある上に皆様から不評を買うのが、『全く作品と無関係な世間話』を展示ケースの前を占拠しながら延々する。というパターンです。当事者以外何のメリットもない、面識もない個人の消息や四方山話、『今ここでする必要性』が微塵も理解できない話題を、わざわざ美術館博物館の展示室内でする。『……いや、あなたの近所の息子さんの就職先とか、どうでもいい』って心底思ってしまいます。『それよりせっかくチケットあるんだから、展示を観ていただきたい』んですよね。つまり美術館博物館のマナーは、図書館でのマナーと同じ位。という風にご理解頂けると幸いです。

もうひとつ、同じく某スペースで出た、私達『看視員』という存在の配置理由です。今回の企画展は作品が基本的に展示ケースに入っていますので、私達の仕事は上記のように『周辺に配慮をお願いする』役割がメインになりますが、展示の内容によっては、非常に重要な業務を受け負うこともあるのです。

それは、『作品を守る』という業務です。

美術館博物館の展示室内には、『ケースに入れない』で展示する作品があります。いわゆるオープン展示と呼ばれている展示手法のひとつで、それを選択するメリットは、『作品の質感や、テクスチャーなどを間近に感じる』ことが出来る。というものだったり、大きさや、展示手法の問題でケースに入れるのが物理的に難しいもの等もあります。特に現代アートの範疇にあるオブジェ等と呼ばれている作品に関しては、オープン展示を行う率が高いと思っています。それらのオープン展示作品の抱えるデメリットの筆頭が、『接触による作品破損』というモノです。極端な実例を挙げると、作品を観覧者が持ち上げてしまい、落下事故などで破損する。所持品(カバン等)の接触で作品倒壊等。他にも他館での展示作品で椅子があった時には『撫でる』という接触や、『座る』という暴挙(200年前のアンティーク一点モノ)等もありました。そして、このような『接触事故』を防ぐという役割が、私達看視員に任せられているのです。どれだけのお客様が、私達の仕事を理解しているかは知りませんが、『展示室内でぼーっと座ってる人達』や、『あの人達要らなくない?』と言われる度に、オープン展示で胃をキリキリ痛めながら神経を張り詰めて看視をしている全国の看視員さんを応援したい気持ちになります。

『展示室内では、置いてあるもの全てを触らない』というルールがあることを、周知の事として何とか定着していくことを願っています。



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