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砂糖の甘くない話(仮タイトル)4

砂糖の甘くない話(仮タイトル)4

砂糖の話の続き

今回は砂糖(糖質)に替わるエネルギーのお話です

1〜3のお話はこちらからどうぞ↓

4.ブドウ糖以外のエネルギー源

前章で、「糖質は栄養・エネルギー源ではないから、食べなくても生きていける」と書きましたが、それはどういうことなのかご説明したいと思います。

今までの常識で考えれば、炭水化物は「主食」であり、ブドウ糖が無ければ生命維持ができないはず、ですよね。特に脳はブドウ糖しか利用できないから、朝からしっかりブドウ糖を摂らないと活動できなくなってしまうと思い込まされています。
ですが、ブドウ糖を体外から摂取しなくても、生きていけるのです。

ふつうに朝食を摂っていると、脳はブドウ糖をエネルギー源として使います。だから、朝食をしっかり摂って脳にブドウ糖を補給しなければ、低血糖になって頭がボーっとして動けない、と考えるかもしれませんが、実際は食事を抜くと、脳は別の物質をエネルギー源として使うことができます。それがケトン体です。

カナダのオーエンス博士は「断食中に脳が何をエネルギー源として使うのか」という研究を行い、β-ヒドロキシ酪酸が50%、α-アミノ窒素とアセト酢酸がそれぞれ10%ずつで、ブドウ糖は全体の30%程度だったことがわかりました。

つまり、脳はブドウ糖がなくても別の物質をエネルギー源として使うことができるので、朝食を食べなくても脳へのエネルギーは不足しないし、頭がボーっとしたり、動けなくなることもありません。逆に頭は冴え、身体は軽く、午前中の時間を思い切り活用することができるのです。

β-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸はケトン体という物質で、肝臓でアセチルCoA(アセチルコエンザイムA、アセチル補酵素A)から作られ、血中グルコース濃度が少ない時に、脳のエネルギー源として使われます。肝臓内で消費されなかったアセチルCoAは脂肪酸生合成の原料となり、中性脂肪になります。

糖質を抜いて血中グルコース濃度を下げて、脳のエネルギーをブドウ糖ではなく、ケトン体を使うようになると、肝臓内のアセチルCoAが消費されるので、中性脂肪が生成されず、動脈硬化や高脂血症を防ぐことにもつながるのです。

では、ケトン体とは何でしょう?


〈ケトン体とは〉


先ほど説明したように、ブドウ糖がなくなると脂肪を燃やして作られ、体内で使えるエネルギーになる物質で、アセトン・アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸の3つの物質の総称です。

宗田マタニティクリニックの院長である宗田哲男氏の著書『ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか』(光文社新書)で話題になり、今までは人体を酸化させる、代謝における危険な産物として扱われていたものが、実は糖尿病治療にも使える有効な物質だとわかりました。

人が使えるエネルギー源には2通りあり、ブドウ糖を使うエンジンと、ケトン体を使うエンジンのハイブリッドになっています。

糖質の場合、ブドウ糖の集合体であるグリコーゲンとして体内に蓄えられますが、グリコーゲンのままでは長時間貯蔵できないため、インスリンの作用で脂肪に変えてから体内に蓄えておきます。

一方ケトン体は、体内の脂肪を燃やして作り出すエネルギーです。もちろん、グリコーゲンから作られた脂肪もケトン体生成に使われます。

ブドウ糖代謝の場合は、食事で糖質を摂った時にしか使えません。(血糖値を維持するためのブドウ糖は肝臓内で作ることができます。)これまでは、人の主なエネルギー源はブドウ糖だと考えられていたために、1日に何度も食事をして、こまめに必要なエネルギーを補充しなければならないと考えられてきました。ケトン体は、そのブドウ糖が枯渇したときに働くサブのエネルギーで、非常時にだけ発動するものだと捉えられていましたが、宗田医師は両者の働きはまるっきり逆だと指摘しています。


〈砂糖が貴重でなくなってからまだ数十年〉


人類700万年の歴史の中で、現在のようにいつでも好きなだけ糖質が摂れるようになったのは、まだほんの数百年前のことで、それも一部の上流階級の人たちだけ、一般庶民はもっと最近になってからのことです。
農耕が始まった1万年前でも、糖質はまだまだ貴重で今のように1日3食お腹いっぱい食べるなんてことはできなかったことでしょう。

本来、人の体は糖をたくさん摂ることには慣れていないため、糖のまま体内に蓄えるということができないのです。農耕を始める前の何百万年もの間は狩猟・採取が中心で、食べ物も低糖質・高たんぱくの食事だったので、脂肪やたんぱく質(アミノ酸)の形では蓄えることができます。

狩猟や採取での食事であれば、毎日同じ時間に確実に3食食べることも難しいので、身体は飢餓には強くできているのです。もしも、お腹がすいていると頭が回らない、身体が動かない、となれば木に登って木の実や果実を採ることもできないし、川で魚を捕ることも、動物を追いかけて獲ることもできず、そのまま飢え死にしてしまいます。

人体の組織や細胞の中でブドウ糖を主なエネルギー源として使っているのは、脳・目の網膜・赤血球などで、筋肉(手足や内臓を動かすためのもの)は脂肪酸をエネルギー源としています。安静時や軽度の運動時にも脂肪酸が使われていて、激しい運動の時に限ってブドウ糖が使われています。

そして、人体中で一番エネルギーを消費する脳ではブドウ糖だけでなくケトン体も利用できるので、毎回の食事からブドウ糖を摂り続ける必要はなく、間食等で甘いものを食べる必要もないのです。


つづく


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