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『共産党宣言』を読んだ

2021/4/6、梟書茶房にてフルーツティーを飲みつつ読了。かなり甘めで驚いたが、必死で文章を追って疲弊した頭にはこのくらいがちょうどいいのかもしれない。

歴史的文書であるわりにかなり薄い本なので手が伸びたが、その内容を理解しようとするとけっこう骨が折れる。どのような構成かを先に書き留めておくと、共産党宣言は各国で版を重ねているため、本書の冒頭にそれらの版のそれぞれの序文が掲載される。エンゲルスは序文の表現を少しずつ変えているので、複数の序文が存在するのだ。その後に本論、注釈、解説が続く。本論前半の1章・2賞は読みやすいが、後半から難解になってくる。

「今日までのあらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である」。あまりにも有名な句ではあるが、言い得て妙である。プロレタリアートの労働によって生じた過剰生産による富を、ブルジョアジーが独占する。プロレタリアートがいくら働いてもその富はみなブルジョアジーが持ってゆくので、いつまでたってもプロレタリアートは裕福にならないということに、マルクス・エンゲルスは目をつけた。この着眼点自体はさほど変なものとは思われない。むしろ、これは近年世界を席巻したピケティの『21世紀の資本』に通ずるところがある。ただマルクス・エンゲルスの場合、それを解決する方法がまずかったのだ。

現代に生きる我々は、計画経済が人々のニーズの増加に耐えきれず、また人々の労働に対するモチベーションを上げることもなかった結果、破綻したことを知っている。しかし計画経済が失敗したとはいえ、サン=シモンやフーリエらが提唱した「空想的社会主義」を、「科学的社会主義」の立場から具体的な方策を挙げることで批判したマルクス・エンゲルスの業績は、軽視されるべきものではない。マルクス・エンゲルスは、ブルジョアジーの富を共有財産とすることで、ブルジョアジーの特権的性質を剥奪しようとした。そしてひいては、階級闘争をなくそうとしたのだ。

激動の時代の中で「万国の労働者よ、団結せよ!」という最後の一文は、どれだけの熱狂をもって迎え入れられたのであろうか。難解なため、噛み砕こうとすると後半は再考の余地があるが、この歴史上最も重要なテキストに触れておくだけでも、十分価値があるものだと信じてもいいだろう。

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