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『思考のレッスン』を読んだ

2021/4/17、Trattoria LEMONというイタリア料理店にて読了。近くに大正時代から続く「レモン画翠」という画材屋さんがあるのは知っていたが、まさかここがイタリアンを経営しているとは思わなんだ。名物のレモンパイを食べてみたいところだったが、あいにく売り切れていたので今回はバナナパイを頂く。バナナがふんだんに使われているものの、上品にその甘みが抑えられており美味であった。これはレモンパイへの期待も高まる。信頼のおける友人からも「レモンパイ美味しいよ」と教えてもらったことだし。

パイを食べつつ丸谷先生の文章を読むこと以上に幸せなことなんて、ぼくにはちょっと見つけにくい。博覧強記でありながらユーモアに溢れた丸谷才一の思考プロセスを、先生自身が語る様々な知識やエピソードを織り交ぜつつ、インタビュー形式でたどっていく。垂涎の一冊だ。まあ、パイを前にしているからかもしれないけど。

良い問いを発し比較と分析によって大胆な仮説を立てるというやり方は、帯に書いてある通りレポートや論文を執筆する時に役立ちそうだ。訓練が要るとは思うが、何をすればよいのか見通しが立たないままでいることはなくなる。

個人的にいつも「である」「だ」を同じ文章の中に登場させて文のリズムを整えようと試みているので、この本の中で丸谷先生がそれを肯定していたことはとても嬉しかった。「である」調か「だ」調に揃えるべきだという言説を時折耳にするが、ぼくはそれにずっと違和感を覚えていたのだ。だってそんな文章、読みにくいじゃないか。文末の処理は必要だ。

鹿島茂先生の解説は、本書の内容をとても上手く要約している。わざわざ対談の形にしたのは、たびたび触れられていたバフチンのポリフォニー理論を意識してのことであろう。

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