保持力について

今回は「保持力」について考えてみたいと思います。


クライミングの話をする時頻繁に出てくるワード「保持力」。

ところがしょっちゅう話題に上がる割にはふわっとしているワードでもあります。

ネット上で議論が始まると以下の二つの派閥争いが起こりがち。

保持力原理主義「持てたら登れるんや」
ムーヴ原理主義「いやいやムーヴが出来たら持てなくても大丈夫」


このように両極端な意見が生まれるのは両極端な課題が存在するから。

課題A.激悪なハンドホールドだがインカットクリンプで握れたり、ピンチすることが出来るため足が切れてもホールドを離さなければぶら下がる事が出来て落ちる事は無い。

課題B.ハンドホールドはスローパーや外頃したエッジなど、さらに下引きできたり左右で挟んだりすることができない向きになっておりヒールやトウフックなども絡めて全身で壁の中に居続けなければいけない。

ほとんどの課題はAとBの中間に位置していてトライしているクライマーの能力値によっても捉え方が変わります。

Aさんにとってはホールドaはぶら下がって保持はギリギリ出来ないが足を残せればなんとか落ちない。
Bさんにとってはホールドaは足が切れてもギリギリ保持し続けられるので思い切った足切りムーヴも選択肢に残る。

この時、Aさんには二つの選択肢があります。


①足を残すムーヴを構築してトライ。

②足を残す事は不可能と判断して一旦トライを保留、保持トレで保持力をアップさせてから再トライ。


どちらを選んでも構わないのですがこの選択を難しくする要因が「思い込み」と「分析力の甘さ」です。


「思い込み」は例えば、一緒にトライしているクライマーが出来ていないから自分にも出来ない(またはその逆も)と考えてしまう事だったり。

「分析力甘さ」は、少しの関節の角度の違いで残せる足なのだけどその少しの違いを認識していない為に出来ないと判断してしまう事だったり。


「思い込み」はまず前提としてクライマーは皆、骨格や筋力などの身体特性や運動学習の経験の違いによるムーヴの得意不得意などが異なっているということを認める事で防げるでしょう。

「分析力」を高めるのは経験と知識、自分を知る事これに限ります。


要素が多く複雑になるとつい単純化したくなってしまい極端な結論に逃げたくなりますが、常にクライミングの複雑性を認識しそれから逃げずに考えつづけることが上達の早道になるでしょう。


とりあえずこのnote内の記事では以下のように定義して進める事とします。


「保持力」とは、肘より先の身体能力で、各保持形(クリンプ/ポケット/ピンチ/スローパー)時の指〜手首の関節固定力及び筋腱靭帯組織の耐久力。

「保持力」と「ムーヴ」は相互に補完し合うものである。


次回は上記の定義に基づいて保持力を鍛える方法について考えてみたいと思います。


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