ライプニッツ「モナドロジー」まとめ

結論

この世界はGodに可能な最善の世界であり
宇宙はモナドに表出されている

スピノザ哲学の問題点:世界の多様性を説明できない

矛盾律と充足理由律

人間の知識にとって本質的なもの
・矛盾律
・充足理由律

矛盾律
…「Aと非Aの両方が真であることは不可能である」こと
充足理由律
…「結果にはそれがそれ以外ではあり得ないことを説明する十分な理由がなければならない」こと

充足理由律を突き詰めることはGodに結びつく
大工ではなく小説家であるこの私の存在を理解するためには
「なぜ小説家になったのか」のような
「なぜ」の無限の連鎖が必要

それは「なぜこの世界=宇宙はこうであって
他ではありえないのか」という
世界創世とGodについての問題に帰着

よって存在するいかなる事物であれ
それを完全に理解するためには
全宇宙を理解することが必要

全宇宙は私自身の存在に関わっているため
他の誰かではなく私を創造するという神の選択は
同時にこの全世界を創造するという選択でもある
そして逆もまた真である

真理には必然的真理と偶然的真理がある

・必然的真理
 矛盾率に対応。その反対が不可能であるような真理
・偶然的真理
 充足理由律に対応。その反対が可能であるような真理のこと

小説家としての私の存在は偶然的真理
大工としての私の存在も
歯医者としても私の存在も可能であったため

偶然的なものは、いくつかの可能な選択肢の一つにすぎない
→充足理由律の支配する領域に属する
必然的なものは、可能な選択肢がひとつしかない
→矛盾律の支配する領域に属する

可能世界について

この世界の存在は必然的か、偶然的か
即ち他の世界は可能だろうか
ライプニッツ:他の可能な世界がある

例)小説などの物語
この世界の秩序では不可能だったろうが、物語の世界自体に矛盾はなさそうであり、可能に思える

この世界の存在は偶然
→なぜ他の世界ではなくこの世界が存在するのか

この世界が存在し、他の世界ではないということの充足理由は
この世界の外部の必然性に求められる
ライプニッツはこの必然性をもたらす存在をGodと呼ぶ

Godは知性、意志、力能を持ち
知性によって全ての可能世界を比較し
意志によって一つの世界を選択
力能によってその世界を現実化する

また、それ自体としては可能である事物の多くが
相互に両立することが可能ではないという事実がある
相互に両立することが可能であること
→「共可能性」

例)
専業小説家としての私の存在をもたらす事物の秩序と
専業大工としての私の存在をもたらす事物の秩序は共可能ではない

先に「いかなる事物であれ、その存在のための十分な理由は、究極的には宇宙の全秩序を含んでいるはずである」ことを考えた

そのため、様々な可能世界は、その世界の存在に含まれる
諸々の実体の総体として考えることができるし
あるいはそうした実体のうちどれか一つを通して考えることもできる

それゆえ、何か一つの実体を創造するという選択は
一つの世界を創造するという選択でもある

善について

Godが善であるならば、Godがこの世界をあらゆる可能性の中から
選び創造したのだから、この世界は最善のものであるはず

悪の存在を許し、創造したのはなぜか

Godはどんな世界でも創造できるわけではなく
矛盾を含む不可能な世界は創造できない

Godの善は人間の善と一致せず
宇宙全体の秩序とその中のあらゆる事物に向けられている

この世界はあらゆる可能世界のうち最善のものであるが
人間にとっての悪を含む

ライプニッツにとって悪は善の欠如であり無
善は完全性であり同時に存在者

最善であるとは、善=存在者の最大化であり
それは存在者の多様性の最大化

存在者の多様性の最大化は、可能性の限界の中で作動
そのためそれは、事物と事物が調和するような秩序の最大化として現れる

モナド

【モナド】…単純な実体。世界の基本的構成要素
古代ギリシア・アナクサゴラスの
【スペルマタ】の概念に類似

モナドを基礎づけるのは
単一性、独立性、同一性

単一性…物の集まりではなく一個の物であること
独立性…他の実体から分離して存在できること
同一性…変化の中で変わらない永続性があること

モナドは直線や空間のような連続体の一点を指す非物質的な原子
空間にも実在性をもたらす仮想的な原子

虹が光の運動を表出しているように
非物質的なモナドの世界が物質的(物理的)な世界を表出
そのため、物理的な世界は非物質的な世界から説明される

物質…モナドに内在する力の表出のこと

実体には単純実体であるモナドと
モナドの集合体である複合的実体がある

「モナドには窓がない」
単純実体であるモナドは分割できる部分がなく、
部分を出し入れ(相互作用)するような窓を持たない

ただし複合的実体は部分があるので相互作用することができる

「不可識別者同一の原理」
識別できないものは同一であるということ
逆に言えば、差異を見出しうるものは同一のものではないし、
自然の中には完全に同じであるようなものはない

モナドはそれぞれ宇宙全体を含み、それを表出
事物を完全に理解するには、その原因あるいは十分な理由を理解する必要があり
その十分な理由は全宇宙を包含することになるため
故にモナドの多様性は宇宙全体の多様性の反映ともなる

モナドは多様な属性を持つ
モナドが諸々の瞬間に持つ多様性は
モナドの表象や欲求と呼ばれる

予定調和

勝手に存在しているモナド同士が調和をしているのか
『Godがあらかじめそのように定めているから』
…【予定調和】

独立に存在する各時計
相互作用はしないが、製作者が限りなく優秀であれば
2つの時計が寸分違わず完璧な設計をされているならば
各時計は同じ時間という同じ秩序を刻む

無限の存在であるGodによる設計なら
全てのものが関係していないにも関わらず
全てのものが調和しているように見える秩序に

両方の時計を身体と精神に置き換えると
スピノザの心身並行論の説明に
身体と精神は全く別々に動いているが
それが同時に起きているために我々は関係があると認識している
そこから自由意志があるようにも思ってしまっている
と捉えることができる

ライプニッツのモナド論と予定調和により、
それまでGodへの信仰において課題とされてきた
【自然科学とスコラ学の折り合い】【自由意志について】
【神の恩寵について】などを芋づる式に解決することが
できるように

ライプニッツが、かつて古代ギリシアの哲学を一度にまとめあげ
体系化した大哲学者の名を取って
【近世のアリストテレス】と呼ばれた所以はここにある

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