【趣味・映画の話】くもりときどきミートボール

みなさん映画好きですか。僕はわりと好きです。

そんなわけなので昔観た、最近観た映画の感想です。

・よく出来た子供向け映画
僕はニチアサを見るのが好きなおっさんです。クソっスね。
物語の結末は君が決める方のヒーローの話はしないよ。よく故障するロボットを売る会社の社長ヒーローの話もしないよ。

こういうものを観るときに僕は出来るだけ「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉は使わないようにしたいと思っております。
だって子供向けの番組やもん。子供が観るものを奇特な大人が観とるんやという異常構造自体は忘れたくないわけです。

それはそれとして、「子供向け」ってなんだろうって思うわけです。
とりあえず派手でかっこいい必殺技が出てくれば子供向けなのか?
スラップスティックな映像が楽しければ子供は満足するのか?
そんなことはない。子供だって子供なりにちゃんと物語を理解しようとしてるはずだ。

前置きが長くなったが、『くもりときどきミートボール』は本当にいい子供向け映画です。

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・成功の物語
物語の主人公・フリントは子供の頃から発明家を目指す天才科学者。
しかし頭のネジの締めどころが悪いのか、作るものは何かしら大きな欠陥を伴う。
スプレーひと吹きで履ける靴は二度と脱げないし、空飛ぶ車は海に突撃、
猿の翻訳機も作るがわかったところで猿は大したことを考えてないから役に立たないし、
ネズミと鳥のキメラなんかも作っちゃうが檻から逃げ出してしまって今も街中で迷惑を起こしてる。
そう、彼の人生は失敗ばかりなのだ。

しかしそんなフリントの発明・開発シーンはリズミカルで大袈裟で、とっても楽しそう。
これが自分のやりたいことだから!
やりたいことをやるのってすごく楽しい!
でもそろそろ結果が欲しい。誰かに認められたい。
特に、一緒に暮らしてる、釣具店を営むアナログな父さんに。

そんなフリントが暮らす島はイワシ漁の聖地……いや、イワシ以外なにもない土地だ。
イワシの缶詰が売れなくなってからは町ではイワシしか食べられず、みんな灰色一色。
そんなみんなにカラフルな食生活を提供したいという純粋な善意から、
フリントは『水から食べ物を生み出す機械』を発明するが、過剰な電力のせいで暴走、空に飛んでいってしまう。
また失敗かと落ち込む彼の頭上からべちゃり、と落ちてきたのは、機械に入力した《チーズバーガー》。
なんと彼の発明品は天高く昇り、街にチーズバーガーの雨を降らせたのだ!
こいつぁすげぇや!

・餓鬼界
世紀の発明に町中が大喜び。
金儲けと自分がビッグになることしか頭にない市長からのオファーを受けて、
毎日三食ごちそうを雨あられと降らせるフリント。
町中に自分の顔写真が入った広告も載るし、これで父さんも認めてくれる!
しかし、ステーキの雨の中、父はフリントに告げる
「これは本当にみんなのためになっているのか?」

町の人達は空からただで降ってくるステーキ肉に夢中でかぶりついている。
アイスクリームの山にのぼり、体ごとホットドッグに飛び込む。
市長もすっかり肥満体型となり、今ではスクーターがなければ動くこともままならない。

恥も外聞もなく食を貪る姿は観客から見ても醜い。餓鬼そのものである。

フリントも薄々気がついてはいたのだ、人々の欲望のままに食べ物を生み続けることがマシンの許容量を超えていることを。
そんなフリントと町の人達をミートボールスパゲッティのパーフェクト・ストームが襲う。

・失敗の物語
①認められなかった主人公が成功し、
②慢心からとんでもない事態を引き起こし、
③そしてそのけじめをつけにゆく。
『くもりときどきミートボール』はきれいな三幕構成で作られた映画である。

僕がこの映画を気に入っているのは、カタルシスというものがどういうものかをすごくよくわかっているからなのだ。
フリントは世界を救うために、自分の発明品を止めに行く。
そんな彼の道中を助けてくれるものは、まさに彼の人生の中で生み出してきた『失敗作』たちだったのだ。

特に、彼の人生の象徴のような『二度と脱げない靴』。
これが彼を真に助けてくれることになるという展開には素直に膝を打った。
「Lesson5『遠回りこそが最短の近道』」
スティール・ボール・ランのジャイロの台詞だが、これが本当にしっくりくる映画である。なんちゅう遠い回り道や。

人生は失敗だらけである。現在進行系で失敗の人生を送っている僕には耳が痛い。
しかし、そんな失敗の一つ一つがいつか自分を助けてくれる。
そんな人生讃歌を、子供達にとてもわかり易くかつエキサイティングに観せてくれる映画、それが『くもりときどきミートボール』だ。

・本気で殺しにかかってくる食べ物たち
なんだかガラにもなくウェットな話をしてしまったので、もっとバカな話をしよう。

この映画のもう一つの見どころは、『食べ物が殺意を持って襲いかかってくる映像』である。
この映画のスタッフは相当食いもんにこだわりがあったらしく、ハンバーガーやスパゲッティが落ちてくる様を正確に描写しているのだ。ペチャッ、パラパラ、ハラリ。
そんな、『正しく』描かれた正しく本物の食べ物が、終盤は人間を殺す装置として襲いかかってくる。
巨大なミートボールは街を破壊し、
パリのエッフェル塔はサンドイッチが突き刺さり、
ベーグルがマンハッタンを押しつぶす。

さらに、市長のバカが入力したラスベガス式食べ放題ディナーの注文によってシンギュラリティを起こしたフリントのマシンは、
意思を持ち自己防衛する食べ物を生み出した。
8ピースに分かれてファンネルのように飛行機を撃墜せんと近づいてくるピザ。
内壁にびっしりと張り付いている、二足歩行人食いターキー。
首を切断されても別の首をすげ替えることがができ、淡々と飛行機の翼を破壊していくグミベアーたち。
スペクタクルである、ホラーである。見どころ満載である。

内容てんこ盛りの90分。
ネトフリで観れるよ。
オチはここじゃ言わないよ。ファスト映画じゃないんだから。

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