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さくらんぼ

私はさくらんぼが苦手だった。昔食べ過ぎたからもういらないとなり、苦手だった。君がさくらんぼが美味しそうと買って来るまでは。

さくらんぼを嫌いになったのは小学生の頃だった。家の裏にさくらんぼがなる木が生えていた。よくさくらんぼが採れて、食べる機会が人より多かった。そうやっているうちに飽きてしまった。何事もほどほどがいい。見るのも嫌になるほど、さくらんぼが嫌いになってしまった。

それからずっとさくらんぼを食べないで大人になった。最後に食べたのはいつだろう。多分小学生の頃なんじゃないだろうか。10年は確実に食べてない。きっともっと食べていないと思う。パフェにのった赤いさくらんぼは別として、好んで手に取り食べるということをしなくなった。出て来たものはしょうがないとして。

産直で旬のさくらんぼに心を奪われた君は、私が果物が好きなことを知っているからなのか、さくらんぼが美味しそう。一緒に食べようと、さくらんぼを買って来た。正直、あんまり好きじゃないんだよなと思いながら、でも食べないのは君の優しさを無下にすることになるし、君は私がさくらんぼが嫌いなことを知らないし、などといろいろ考えて1つ食べた。

美味しかった。びっくりしてしまった。さくらんぼってこんなに美味しかったっけ?あ、種がある。そういえば、種がある果物だったな。ぷりっとジューシーで、爽やかな甘さと酸味、果汁もあって美味しかった。そのまま勢いで何個か食べた。君は美味しいねと喜んでいた。私の顔を見てより喜んでいた。

さくらんぼの美味しさを思い出させてくれてありがとう。君は私にいろいろなことを教えてくれる。私も君にとってそんな存在でありたいと思った、そんな日だった。

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