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はじめて見る景色〜A級リーグ振り返り〜①事前の目標と準備

第58期A級リーグが終わりました。疲労で倒れることなく、3勝5敗1分の6位は、想定してた以上の結果を残せたとも言えますし、内容的に初心者のような棋譜を残してしまった残念さもありました。ただ終局まで打ち切れた局は思っていたより上位陣と競り合えてた手応えを感じ、自分がやってきたことが無駄では無かったと安堵しました。今は2ヶ月に渡る準備期間からの緊張が解け、大きな虚脱感の中でこれを書いています。これまでサポートしてくださった方々にまずは感謝したいと思います。

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A級に参加するにあたって、表向きのテーマは「憧れの棋士と盤上で対話すること」「次回の世界戦で汪清清や李小青と競り合えるように、同じくらい強い人との経験を積むこと」という初心者の頃から変わらないものがありましたが、今回のみの裏テーマも幾つかありました。

1.女流棋士時代の自分を超える

一つ目はこれです。昔の自分は対局前はとにかく怖さがまさって、目の前の一局にうまく向き合えませんでした。「対局準備」「メンタル」両方の面で、それを払拭して新しい自分に生まれ変わりたかった。仕事を最小限にして、毎日A級のことから目を背けないのを自分に課しました。思っていたより忙しく、また体調が悪いこともありなかなか集中できる時間を取れないこともありました。その場合は身体に負担の少ないギャモンで頭の体操したり、色んな方法をその都度考えて乗り切っていたので、連珠を直接やらなくても目を背けないというテーマはまっとうできた気がします。

実際の作戦準備は体感的には20%もできませんでした。網羅しなくてはならないことが多すぎて全然時間が足りない。また、相手のことを考え作戦を練るのは怖さがあり、思わず目を背けて地力強化練習に逃げることも多かったです。それも自分の傾向として貴重なサンプルになったので、良しとします。少なくとも以前よりはかなりやりました。ただ、研究するにしても技術が必要なことがわかりました。何をどう研究していいかわからないのです。後述しますが、実際の対局を経て、研究のやり方にヒントを得たので、今後は改善できそうでワクワクしています。

メンタルの部分は、誰に勝っても負けてもおかしくないという気持ちで対局に向かうことができました。女流棋士時代の自分はお世辞にもそうでは無かった。そうすると、棋戦全体の空気が淀むのです。今回上位陣に少なからずプレッシャーをかけられたのは、このような気概を全員が持っていたからだと思います。棋戦が活気づいたのは、一人一人の気概からだったと思います。

ただ、気概を持つためには、やり切った自負がないと薄っぺらなやる気でしかありません。準備は前述した通り足りてませんでしたが、自分なりにやれるだけやったという意味では堂々と開き直りの心境で盤の前に座れました。9月に入ってからは練習で上位の人に競り合えることも増え、元A級の長副三段に「勝機はある」と励ましてもらえたのも自信になりました。そんなわけで、及第点ではないものの、テーマは一応達成できました。

2.小山六段に棋譜を見てもらう

もう一つのテーマがこれでした。私はなぜか、小山六段の連珠観を昔からとても気にしていました。中山が闇雲に私を褒める棋風とすれば、小山先生は辛口でなかなか認めてくださらなかった。それは連珠に対する真摯な姿勢と愛情からくるのはわかりました。小山さんに直接「ぴえちゃんには高段者になって欲しい」と言われたこともありますし、辛口の裏には、もっとちゃんとした連珠が打てるようになって欲しいという思いがあるのを感じてました。

なので、小山さんが今どう見てるかというのはいつも気になるところでした。また関東の代表として自分より強い小山さんの代わりに出てしまう負い目もあり、小山さんが(まぁいいんじゃない)と無表情でハンコを押してくれるような棋譜を残すのが義務だと思っていました。

今回小山さんが棋譜解説で藤田麻牧野戦を取り上げてくださったり、受けてカウンターを狙う勝ち方ができるようになって、連珠が変わったと評価してもらえたのは一番嬉しい出来事でした。頑張って良かったです。

長副さんもそうですが、やるべきことをやっていたら、どこかでちゃんと見てくれる人がいるというのはとても嬉しいことですし、今後へのやる気と自信につながりました。 

(つづく・次回は対局当日の振り返り)

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