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ギャモン名人戦リーグに初参加してみた

ひょんなことからバックギャモンの名人戦の予選リーグに参加した。ほんとに軽いノリで、3部リーグ初参加は大幅割引三千円!という文句に惹かれたのと、ロングポイントマッチというものに興味があって申し込んだ。我が店で対局やったら楽しかろうという気持ちもあった。名人戦ってなんなのか、どんな仕組みなのかすら知らなかった。

後で知ったのだが、リーグ戦は東京は一部から三部まであり日本バックギャモン協会のレーティング順に振り分けられる。JBLレーティングは日頃からフリーや公式戦で打たれたものでランキングされていて、いっぷくギャモン部でもレーティング戦ができ、入会すると1000からスタート。よくある事だが、丁度真ん中ぐらいから始まるので、入会したばかりでお店でゆるゆる対局してただけの私は勝ち越して少し浮いていた。勿論実力ではない。

そんな運命の悪戯?もあって、何故か私は二部リーグに入ってしまった。割引適用もなくなり、いきなり9000円を支払い出てきた対戦相手がこの方々である。

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元バックギャモン協会会長でシモキタ名人戦を運営されてる下平さんはじめ、森内十八世名人、リコーの将棋棋譜自動採譜システム開発の木曽野さんなど錚々たるメンバーだ。私は19ポイントマッチすらやったことなく(いつも5とか7とかなのだ)、場違い感半端なかった。

ただそこで怖い!とはならず、え…いいんですか?こんな人たちと真剣勝負できるなんて役得ですけど…?と持ち前の図々しさでこっそり喜びながらエントリーした。初心者なので失うものはない上に、憧れの人と指導対局ではなくガチでぶつかり合えるなんて幸運じゃないですか。

特に勝手に心の師匠と思っていた田中健慈さんと同じリーグに入れたのは感慨深かった。私は将棋で育ったので当初ダブリングキューブのシステムが馴染めなかった。たまたま代官山例会で、健慈さんと登坂さんという方が対局をされていて、その時のお二人の真剣かつどんな出目でも顔色ひとつ変えずに集中する姿に感銘を受け、ポイントマッチをこんな風に戦ってみたい!と思ったのだった。健慈さんはキューブへの苦手意識を変えてくれた恩人だった。

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初戦の下平戦や木曽野戦は訳もわからないうちに終わってしまった。森内戦は自分なりに集中して片目がやっとあいた。中須賀戦でまた何もできねぇとなり、健慈戦は自分史上最もタフなゲームで終わった後もずっとドキドキしていた。でも技術的にはどうだか分からないけど自分は一番良かったのは最後の久保田戦だった。

大して見所も作れず、良いプレイでもなかったと思う。でもこの日はギャモンをやる上で自分なりに発見しかかっていること、掴みたいことがあり、それを意識してみようと思いながら対局出来てたのだ。それ以前は今持ってる財産で必死に返済するだけで精一杯だった。久保田戦は初めて連珠のように何かしらのテーマをもって対局に向かえた。だから最初と最後で見た目は違わないかもしれないが、自分の意識としては全然違う自分になれていた。参加してよかったと思う。

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久保田戦終了後に、一番悩んだポイントの部分を問いかけてみた。久保田さんはちゃんと向き合って考えてくれて、気がつくと周囲に人が集まっていた。森内先生や木曽野さんという同じリーグのメンバーや、いつも練習してくれてる仲間たちだ。彼らも真面目な目でちゃんと局面を考えてくれて、それぞれ感想を述べてくれた。

わたしはそれを見てとてもジーンとなった。憧れて見上げてた人たちが、リーグ対局を戦った同じ仲間のようなものに少し変わったのを感じた。考えてみたら、私は女流棋士時代一度もリーグ戦を戦ったことがなかった。女流名人戦も昔は順位戦のようにB級、C級まであるリーグ戦だったのだ。私がプロ入りした頃にちょうどC級がなくなりトーナメント予選となった。今はB級もない。一緒に戦った相手に、このような独特の親近感を(勝手に)持つのは初めての経験だった。

皆んなの感想を聞きながら、わたしはこの為にギャモンをやるのかもしれないな、と思った。連珠と違ってギャモンは具体的な目標がなかった。強いて言えば健慈さんのようになりたかったぐらいだ。ただこの日、このような素敵な人達の遊び相手になりたい、と心から思った。それぞれの立場も超えて仲間として対等に会話ができる、ギャモンの技術で対話ができる、そんな存在になりたいという新しい目標が加わった気がする。

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