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自分比一番の手の供養と二次予選の振り返りメモ

(かさじぞうさんの写真を使わせてもらいました)

名人戦二次予選は敗退となったがこれまでの中で自分比で一番いい手、楽しかった手が打てたので供養のため残しておこうと思う。

最序盤である。5を選んだのは、経験がなかったから。最近は想定していた展開か、さほど準備してなかった戦型なら全く初見の序盤を選ぶようにしている。そのほうが中途半端な知識に左右されることなく純粋に局面に集中できるからだ。これも、特段咎めようという意識はなく、どうしたらいいか必死で考えてみようと思って選んだ。

これまでの自分はこんな風に単に連を止める手しか浮かばなったと思う。そうすると黒から9ともっと速度の早い手を打たれてしばらく黒の手番が続く。白の6や8の価値が低く主導権を握れない。何とかして黒より価値の高い手を積み重ねられないだろうか。

そこで急所のI10に先着する手を考えた。三を引いてみろ、と相手の攻めたい方向とは逆に消費する手を強要させる受けの手筋だ。9となってくれたら6-10、8-6の二つの価値ある連が残り、一番最初に作った4-6の連との連携も良くなる。

しかし読み進めてみると13,14,15とお互いに先手を取り合って、最後は黒に手番を握られてしまう。以下はかんたんな詰み。
自分の読みに自信がないので白からの四追いの順がないか何度も頭で読んだ。無い。諦めきれなくて他の良い手がないか探しては何度もこの図面に戻ってきた。その時盲点となっていた4-6の三を先に使うことを思いついた。

これが本譜の順。三を引いたとき、小野さんは怪訝そうな顔をしていた。もっと穏やかな進行になると思っていたのだろう。私も、こんな手は初めてやるから、本当に読みが間違ってないか少し不安だった。でもやりたい。というかこれしか価値のある白の手が見つけられないから心中しようと思った。

以下さっきと同じ順で黒から攻められたときに、8の石が一個入っているから、今度は19の三を無視して四追いに討ち取れるという仕組みだ。

小野さんは長考して11と妥協した。これで、白は手番を握って攻めの権利を得られた。読みが間違ってなかったと安堵した。

自分がこれまで考えなかった場面で足を止められたこと、これまでの自分ができなかったことを考えられた時間は充実そのもので、連珠をやっていて本当に楽しいと感じた瞬間だった。
こんな手が打てるようになったんだ〜とふわふわしてたら、その後簡単な1手必死を逃すわ、簡単な詰みを逃すわ、逆王手の筋を食らうわで必勝から大転落したのは既報の通り。結果的にこの勝敗が響いてA級の切符を逃した。

以前の私なら死にたくなってただろうが、意外にも局後はサバサバしていて(もう枯れたかな〜)とも思ってしまった。3Rの丸田戦に響かず、フラットなメンタルで盤に向かえたので枯れるのも悪くないのかも。そもそも一喜一憂しないようにメンタルトレーニング中だし。しかし勝利への執念は欠けてたのかもしれない。

最後に二次予選全体のことを話しておこう。この手が打てたのは牧野さんとの練習によるところが大きい。そして結果にこだわらなくなったのも牧野さんのせいだと思う。牧野さんとの練習対局は直前毎日行っていたが、局面の速度においても大局観においても常に主導権を握られていてこちらはついていくのに精一杯だった。連珠の理解が追いついてないのが明らかだった。自分はこんなに連珠のことがわかってないんだなと思ったし、二次予選勝ちたい、よりも連珠のことわかってないという焦りのほうが高まってしまった。こんなに連珠のことがわかってないのに、上がってもしょうがないとも。

ただ二次予選では今の力一杯出せたという満足感もあった。個人的に払拭したかったのは、一昨年の二次予選で起こったこと。特に二日目は全く眠れずめちゃくちゃな内容だった。今回はしっかりコンディションを整えられたし、相手の作戦に対して逃げずにちゃんと予習して取り組めた。二年前の丸田戦はかなりひどい内容だったので、そのリベンジという意味で同じ形を挑めた。二日間通して精神的にも内容的にも安定していて、5Rの横山戦も熱戦で終えられた。唯一心残りなのはA級で高校生棋士の河本くんとできなかったこと。あと一歩でのがしたと思うとそれだけは残念。

充実した二ヶ月間を過ごせたと思う。同じことの繰り返し、にならずに成長できてるという実感をもてたのが良かった。この緊張感を忘れずに、次の大会に向けてまた取り組んでいきたい。

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