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一番好きで、一番わからない局面〜PlayFiveトーナメント参戦記〜

2020年5月3日、playfive.netというチェコのサイトのオンライン連珠トーナメントに参加した。連珠界もすっかりcovid-19のせいで内外の大会が中止になり(本来ならこの日はスウェーデンに行ってチーム世界戦に出るはずだったのに!)、オンラインの動きが活発になっている。このトーナメントは気楽に参加でき、初心者からトップクラス(汪清清やエピファノフ、アイボなど去年の世界選手権で活躍した人たち)まで参加していて、対局の合間に観戦したり、運良く当たれたら嬉しいというお得なトーナメントだ。

(↑一部汪清清vs岡部九段の対局を実況しました)

強豪相手に熱戦になれたのもあったもが、クリックミスしたり、時間切れしたりで大した成績は残せなかった(途中からお酒も飲みながらやってた)。他の人もシステムがよくわからずに不戦勝になったり不戦敗になったりしたみたい。全体的にドタバタしながらの大会だった。こういうことはネット上にはつきもので、だからどうしたって本気の大会じゃないよね、あくまで楽しみだよね、なんて思ってしまう。

「これからはオンラインの大会が主流になるのかもしれない」そんな話をする人もいる。そうなったら私の連珠に対するモチベーションはきっと下がるだろう。私は対局室のあの緊迫した空気、姿勢良く向かう連珠棋士の美しい所作を愛している。そういったものがどれほど大切だったかを思い知らされる毎日だ。

しかし反面、オンラインで良いこともある。この日は終了後にdiscordのチャット部屋で通話とチャットしながら、終わった対局を仲間たちと振り返った。始まる前や対局の合間も皆が感想をTLに載せてくれたから臨場感があった。その距離感の近さはやっぱりオンラインならではだ。すぐに集まれて、何をしても自由で。仲間と語り合えることもまた、私にとって連珠を続ける上で大切なモチベーションになっている。それはむしろ、リアルで会う以外で満たされることが多い。

今まで大切にしていたものは少なくなったけど、オンラインでは今までとは違う価値あることを作り出せていけるんだろうなと感じた。

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2Rでエストニアのvillem君と当たることができた。去年の世界選手権のQT予選で中山を追い詰めた若き強豪で、打ち上げでも目の前に座っていた可愛い青年。私はチャットで「あなたに会ったことあるよ!」と送った。初めて対局できて嬉しかった。
局面は黒の攻め筋を消費しておさめつつ、第2ラウンドに備えて空間と手番を取られないようにしなきゃいけない。右下が白に楽しみが多くて怖い。でもそっちを受ける手は黒に攻め筋がなく、単なる利かされで今度は広い上辺に白に先着されてしまう。

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というわけで上辺を受けつつ、下辺との石の連携を多少なりとも牽制する意味で図のように打った。この手がいいのか悪いのかわからないけど一番印象に残った。私はこういう局面が好きだ。

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その後猛攻されたけれどもなんとか凌いで満局模様となった。とても嬉しかった!

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3Rは中山珠王と当たった。これもまた、逼迫しそうな序盤を自分の攻め筋を消費して一旦納める方針で打っていた。直前のk10で急所を止められたので、やれやれ第2ラウンドが始まるぞと思ったら、中山が打ってきたのは図のh6。こういうポジションにすっと手が伸びるのが凄い。意味がわからないが、なんだかすごく迫力がある。そしてこの手は次に厳しい手があるが、現状は詰めろでない、所謂「大呼珠」と呼ばれる手だ。連珠において大呼珠戦は独特で、私は苦手としている。でも一番楽しい。ここで何を考えるかが、とてもふわっとしていて、とてもわからなくて、だからこそとても興味深いからだ。

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私は直感でAと打った。次に打たれたら嫌なところに打って張り付いておけば、すぐには悪くならないと考えたからだ。中山はBやCなど攻め合われてどうなっているか読み切れてなかったからホッとしたと言っていた。恐らくその方が良かったんだろう。でも連珠って、ほとんどが今やるべきことが決まっていることが多い(攻めなきゃいけない、受けなきゃいけない、という具合に)のに、攻めても受けても一理ある、そんな局面が発生するのってすごく面白くない?と思うのだ。そういう場面での考え方をこれから深く学んでいきたいと思っている。

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続く18も私には全く思いつかない手だった。19で安心したら、20もそうやるんだ、と思った。こうしてふわふわと急所に手が行くのが実に憎たらしい。21ではっきり疑問手を出してしまった。

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大したことなさそうなので、攻めてもよかったんだけどな…なんて思って付き合ってるうちに、いつの間にか収拾がつかなくなっていた。不思議だ。なんて美しく、強く、憎たらしいんだろう!

ともあれ、中山とこういう好きな局面を迎えられたのは嬉しかった。

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