NPOに関わる人は天使、なのだろうか #わたしとPIECES

久しぶりに、感情が揺さぶられた文章に出会った。
それはこんな書き出しから始まっていた。

あの時おっちゃんに手渡した500円が、生涯でいちばん重みのあるお金だったと思う。罪滅ぼしみたいな気持ちが半分と、いたたまれなさみたいな気持ちが半分、なんて最悪だけど

みこりんは私が関わっているNPO法人PIECESの広報をしている子だ。
文章は、彼女が山手線に乗っていた時に、お世辞にも身なりが良いとは言えない男性が乗車してきたところから始まる。彼は「お金をください」と書いた箱を持っていた。車内に流れる冷たい空気、勇気が出ない、臆病のドキドキ。彼女はその葛藤を、文章にした。

第三者からパッと見たときは、困った人に手を差し伸べたという「良いエピソード」だ。だが、本人の目線から書かれたこの文章には、「迷い」や「罪悪感」が読み取れる。その気持ちの「ゆらぎ」を、私はとても人間くさくて好きだと思った。

NPOで働くなんて、天使ですね!

「NPOで働くなんて、天使ですね!」
数年前、私が卒業したゼミに入ってきた子が言った言葉だ。
その日のゼミでは、卒業生として私の他に、当時NPOで働いていた先輩がきていた。その先輩がNPOで働いていると知り、ゼミに入ったばかりのその子はこの言葉を言ったのだ。

その言葉に、とても違和感を感じたことを覚えている。
私の周りにはNPOで働く人もいるし、自分自身も関わることが多かったため、そこまで珍しくなかった。だからこそ、NPOで働いているからといって、欲だってあるし、イライラすることだってあるし、タバコを吸う人もいれば、お酒だって飲む。会社で働く人となんらかわりない人間だと私は思っている。

だが、その子にとっては違ったのだ。
NPOで働くなんて、献身的で、清く正しい行動をとる人、というふうに思っていたのかもしれない。自分とは違う、と。もちろん、その子はそこまで考えていなかったとは思うが、その言葉に私はとてもショックを受けた。

それはきっと、みこりんが文章に書いたような気持ちの「ゆらぎ」が、NPOで働く人にはない、というふうに思われてるのかもしれないというショックだった。そして、自分はNPOで働く人と違って「他者に対して行動はできない」と線引きされていると感じたショックだった。

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助けを求めるのは主体的、では手を差し伸べるのは?

「助けを求めるのは、とても主体的な行為」
PIECESのある資料に書いてあることだ。
自分が困っているときに、人に助けを求めるのは確かにとても難しい。
迷惑をかけてしまう、こんなこと言っても何にもならないかもしれない、甘えだと言われてしまうかもしれない。そんなことを思ってしまう。

では、手を差し伸べるのは?
困っている人がいたときに行動を起こすというのも、私はとても主体的だと思う。行動したのに断られたらいやだ、知らない人だし話しかけるのに勇気がいる、その人のために行動しようとしたらむしろ被害を受けた。頭の中では行動をした方が良いと思いつつも、そんなモヤモヤが支配してしまう。

関わらなければ、自分には何も起こらない。
誰かのためのプラスになる可能性よりも、自分にマイナスになるかもしれない可能性を避けたい。私だって、そう思う。だから、自分に言い聞かせるのだ。「はい、今から良い人キャンペーンやります!」と。「今週は○回、良いことをするぞ!」と。そうやって意気込まないと行動を起こせないくらいには、私は臆病だし、そういう葛藤はきっとみんな持ってる。

白杖を持っている人に声をかけたが、断られたことがある。
ホームレスと思われる人たちについて、見て見ぬ振りをしてしまうことがある。
疲れた日には、電車に乗ってきた年配の人に「ごめんなさい」と心の中で思いながら、席を譲らないことがある。
誰かのための行動を取れる日もあれば、できなかった日、行動を取ったけどうまくいかなかった日もある。それが続くと、自分でも自分が嫌になることがある。

*SNSで投稿したら「恥ずかしい」、「白杖の練習中なのでは?」、「そっと見守って頂くだけでもありがたい」、「大丈夫ですか?」と聞かれると「大丈夫です」と反射的に答えてしまう人が多いので、できれば「お手伝いできる事はありませんか?」と聞いて頂ければと思います、などいろんな意見をいただきました。

それでも、その葛藤はすぐになくなることはないし、行動すればするほど、さらに迷うことだってある。それでも、その葛藤を持ちながらも、1000回に1回でも、自分のできる範囲の何かをしようっていうこと。そういうことが、大切なのではないだろうか。

たった1人のスーパーマンよりも、たくさんの市民が誰かのために行動を起こす。そういう葛藤を抱えながらも、1000回に1回でも行動を起こすような「市民性」が広がったらいいなと思う。


くりのさやか
認定NPO法人PIECES事務局
法政大学経営学部長岡ゼミチューター
綺麗事が、“キレイゴト”じゃない世界に。をモットーに、いろんな人や団体をゆるっとお手伝い中。
note:https://note.com/kurichandaze
twitter:@8989manpuku

#ひろがれPIECES #PIECES_Magazine #わたしとPIECES

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