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やさしさとは他者を思いやる想像力である #PIECESの本棚

PIECESはもちろん、ソーシャルセクターに関わる人はとてもやさしい人が多いな、と思う。ここでの「やさしさ」とは「他者を思いやる想像力があること」ではないかと考えている。

これは本当に素晴らしいことだし、自分自身もそうありたいと心から願うのだが・・・自分自身の学生時代などを振り返ると、まるっきり正反対なところにいた気がして、少し恥ずかしいような気持ちになったりもする。

久しぶりにこの「ロッキン・ホース・バレリーナ」という小説を読んで、そんなことを思い出した。

ロッキン・ホース・バレリーナ

十八歳で夏でバカだった! バイト暮らしの耕助は、仲間のザジ、バンとパンクバンド「野原」を組み、生まれて初めてのライブツアーへ出かけた。行く先々でグルーピーを引っかける予定が、謎のゴスロリ娘のヒッチハイクで旅は思わぬ方向へ。彼女、七曲町子の正体は? ツアーファイナルは成功するのか? 耕助と町子の恋の行方は? 爆笑と感動、大槻ケンヂの青春ロック長編小説。忘れることなんて絶対にできない最高に熱かったあの季節。

※こちらの小説、これまでの「PIECESの本棚」の流れには全く似つかわしくない、アレな話やコレな話がこれでもかというほど押し寄せるため、読まれる方は念のためご注意を・・・笑

ありがちな若手バンドマンの成功と挫折をいい感じに書いた物語かな~と思い読み始めると、実は若者達が抱える大きな苦しみや葛藤が秀逸に描かれた作品であることがわかり、心を大きく動かされることになった。

読み進めて行くうちに、主人公達が抱える苦しみについて、生きるために必要に迫られて選んだものであることを知ることになる。

耕助の高校時代の恋人だった海美は、実は妻子ある男と不倫関係にあり、そんな自分に耐え切れず、この世を去った。それ以来耕助は、女性とプラトニックな関係を持つことが怖くなった。
町子は借金を抱え自暴自棄になった父親に毎晩のように乱暴され続けていた。七曲町子という名前は、憧れのミュージシャンの歌のタイトル「MN」から取ったもの。その歌のヒロインであるMNは、憧れの男に会い抱かれることで、華麗に変身を遂げる。この歌のMNのように憧れの男に抱かれることで、自分が浄化されると信じている。

全国ツアーで気付いたこと

アマチュアバンドマンの端くれである私は、今から5年ほど前、彼らと同じようにライブツアーに出ていたことがある。しかも47都道府県を1年間で回るという最高におバカな企画な上、サラリーマンと二足のワラジだったこともあり、よりタチが悪かった。金曜夜に家に帰るとバンド機材車が止まっていて、「40秒で支度しな」と言われんばかりの勢いで乗り込む。そのまま深夜に移動し、土日は地方でライブ、日曜の朝に着いて即仕事へ・・・というブラック企業もビックリの生活であった(お金もめちゃくちゃ使ったし、結局42か所回ったところで力尽きてしまった・・・笑)。

だがその過酷(?)なツアーのおかげで、短い期間に全国各地の様々な価値観を持つ若者たちに出会うことができた。狭い日本の中でもそこには多くの価値観があることを知った。なかには耕助や町子のような、一見すると社会からは煙たがられるような存在である彼ら彼女らの価値観に、音楽を通して触れ合うことができたのだ。

当時は「やさしさとは?」なんてことは意識すらしなかったが、相手の考え方や大切にしている価値観をリスペクトしながらも想像し、受容的に関わることが重要で、それこそが最も興味深いことだと考えるようになったのは、このようなキッカケがあったからかもしれない。

あとがき

そういえば、全国ツアーの中でバンド名が「ロッキン・ホース・バレリーナ」というガールズ3ピースバンドと一緒に何か所かツアーを回ったことがある。彼女らもまた、非常に多様な価値観を持つ若者たちだった。
(バンドは演奏力より何より「魂」だといつも気づかせてくれる存在である。)

今ではメンバーみんな家庭を持ち、それぞれ人生の次のステージを幸せに過ごしているようで、時の流れの早さを感じるとともに、今だに交流ができていることはとても幸せなことだと思う。

おじさんはまだ次のステージに行けそうにないので、もうしばらくはPIECESに関わりながら青春時代を過ごしてみようかなぁなどと考えているのである。

※写真は記念すべきツアー1箇所目の島根にて。パンクオヤジにしかモテなかった・・・!

今日の担当:高島慎也(たかしましんや)
twitter:https://twitter.com/TCR0124
note:https://note.mu/tcr69(バンドアカウント)

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