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子ども・若者とのコミュニケーションツールとしての本~若者の生きづらさを小説から学ぶ~ #PIECESの本棚

前回の中原君よりバトンを受け取りました上野と申します。
僕はPIECESのコミュニティーユースワーカーの4期として育成プログラムを受け、現在は子どもと関わること以外にもPIECESのイベントやもろもろのお手伝いをしております。

今回のお題は「本」ということでおすすめの本を紹介したいと思います。私は読書が好きなので、紹介したい本がたくさんあるのですが、コミュニティーユースワーカーとして中高生と関わっているときに子どものとのコミュニケーションツールの一つとなり、思い出になった小説シリーズを紹介します。

今回選んだのは池袋ウェストゲートパーク。
もう20年以上書き続けられている小説なので、IWGPという略称でも知られ、テレビドラマにもなった作品です。

池袋の西一番街という繁華街の果物屋を営む実家で店番をしているフリーターの真島誠(20代前半)が池袋1のトラブルシューターとして様々な問題を解決していく1話完結型の小説です。

登場人物

主な登場人物は以下の人物で、社会の表や裏の様々な人物が協力して、多感な若者たちのトラブルを解決していきます。

真島誠(マコト)
池袋の工業高校を卒業後にフリーターとなり、実家の果物屋を手伝って小遣いを稼ぎながら、池袋西口公園で過ごしている。池袋の若者、金がない人に対して無償でトラブル解決を請け負う。クラッシック鑑賞が趣味。

安藤崇(タカシ・キング)
池袋の最大勢力のギャング団のGボーイズのヘッド。天才的な反射神経と運動神経による喧嘩の実力を持ち、自身のカリスマ性でストリートの不良少年少女たちをまとめ、一声で数百人の若者を動員できる。セキュリティのため、ボディガードと共に常にベンツのSUVで移動している。

誠の母(おふくろ)
誠の母。果物屋「真島フルーツ」を営み、女手ひとつで誠を育ててきた。誠にとっては目の上のタンコブであり、全く頭の上がらない強者で、誠曰く「最終兵器」。

斉藤富士夫(サル)
池袋を仕切る暴力団「羽沢組」の本部長代行・若頭。誠の中学の同級生で裏社会の様々な情報提供をしてくれる。

横山礼一郎
国家公務員の警視正で、池袋署署長。誠と近所に昔住んでおり、幼少期の誠のお兄さん的な存在。警察の手が必要なときなど誠に協力したり、誠から事件などの情報提供を受けている。

ゼロワン
池袋1のハッカー。ファミレスを根城にハッキングし続けている情報屋。

主な作品

この作品では、様々な少年少女たちを取り巻く問題をテーマにしています。一部をざっくりと紹介します。

「反自殺クラブ」では、謎の運営者が若者受けしそうなフランクな自殺サイトをつくり、多くの人を自殺へ導いている。自殺経験者から構成する自殺を防止する団体から依頼を受け、誠が運営者の正体を暴くべく自殺サイトのオフ会へと参加する。
日本での自殺者数は年々、減っているものの2018年では約2万人が1年間に亡くなっており、10代、20代の死因の1位になっています。


「非正規レジスタンス」、「西一番街ブラックバイト」では雇用、ワーキングプアの問題にスポットを当てています。若者の労働者を守るユニオンの関係者が襲撃され、その犯人とユニオンメンバーの護衛を誠は引き受け、悪質な人材派遣会社等と戦います。
大卒の新卒の有効求人倍率、就職状況は良い状況ですが、労働環境の問題、不本意非正規雇用の正規雇用へのスキルアップなど様々な問題が残っています。

「裏切りのホワイトカード」では、シングルマザーで女で一つで育てていこうとするGボーイズのメンバーを何とかしたいと、Gボーイズのメンバーが特殊詐欺に加担してお金を得ようとするのを誠がなんとか止めます。この作品でも10代妊娠、母子家庭という複合問題がいかに解決が難しいかというのが物語の始点となっています。

子ども・若者の生きづらさ

池袋ウェストゲートパークで描かれている様々な若者を取り巻く問題はけっしてフィクションではありません。すべて現実に起こっている社会問題であります。
実際に、中高生と関わっていると以外のこの本を読んでいる子が多く(居場所が池袋の隣の要町だったということもあるかもしれません)、この小説をきっかけに様々な話で盛り上がりました。

このシリーズでは、誠というワンストップ相談センターがあり、Gボーイズというコミュニティが助けてくれます。
この本を読むたびに、実際に子ども。若者に誠のような頼れる人が近くにいてサポートしてくれるコミュニティが必要ではないかと考えさせられます。

今日の担当 上野 格嗣 ueno masashi
note: https://note.mu/masashi0911
twitter: https://twitter.com/911Masashi

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