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スバル1300G

 センサンジ-をこの35年間で4台乗り継いでいる。スバルff-1、略してエフワンである。全てスポーツ系だ。
 スバルは動かしている時が最も楽しいから、草競技には出ているが、置き型イベントには出ない。

そうはいっても集まるときもある

 国内OEMがバリアント内に高性能車を加え始めた当時、スバル1000を発売した富士重工も1000スポーツを出した。ff-1~1300Gとスポーツ系は設定され続け、RX~WRXに成長する。だが、驕れる者は久しからず、スポーツ系はあっけなく終焉を迎えた。

ff-1・1300Gとは

 1300Gの説明には1000の知識が必要だが、割愛する。興味があれば調べて下さい。神話化されているから話半分で十分だ。
 1300Gは1970年に発売開始した。1300Gの「G」はグランドシリーズのGだ。エンジンの総排気量を増大し内外装をスポーティ化、豪華化するなど大幅に高級化した新型車、と書いている。
 消費社会の欲望は肥大化し、とどまるところを知らない。

45年間の経時変化。でかくなりすぎだろ

1300Gスポーツはこんなんだ(パワーユニット編)

 1300G主機のEA62は、1100のEA61に対し、ボアアップで高出力化を図った。それに伴いクランクケース、シリンダヘッド及び主機回転部の剛性向上やベアリング等の容量を増した。
 スポーツ系のEA62Sはベースエンジンに手を加えている。
 ヘッドは圧縮比を上げ、バルブスプリングを強化した。バルブタイミングのオーバーラップを増やし、リフト量を上げている。
 キャブは日立ストロンバーグのツインだ。長い横Gをかけると、フロート室の燃料が片寄る。1000‐1100前期スポーツのSUツインはゴムのダイヤフラムを使う、バイクと同じBDS型で、こっちの方が断然よい。
 排気系は、1000-1100スポーツと同じで1番と2番、3番と4番が集合し、2本で後方に向かうが、1300GはM/M(メインマフラー)に入る前に集合する。1100の排気系が1300より効率が良いのは、M/Mの差だ。同じ3室だが通路が違い、テールパイプ径(Φ49.2→Φ43.4)も太い。だから1100はボロボロと吐出音が大きく、1300はパサパサした気流音が増す。
 結果、当時の1300cc級ではホンダ1300に次ぐグロス93HP/7000rpmを誇る。(フ)だから値は当然盛られている。
 M21型トランスミッションはハイギヤードされた。1速で50km/h以上、3速では100km/h以上伸び、機敏に走る。だが、自分の競技映像を見てもスピード感がない。

1300Gスポーツはこんなんだ(車体編)

 次に車体側だ。
 1300Gはスープアップに伴い、冷却系、燃料タンクを増量した。バン以外のリヤサスはフルトレーリングアーム式からセミトレーリングアーム式に変わり、乗り心地の向上を図っている、と書いてある。新型車解説書では、真の目的を隠す表現をする。当時セミトレはBMWをはじめとするトレンドだったが、VAが主目的だろう。

 スポーツ系の車体側アップグレードは、ブレーキと足回りである。タンデムマスターのX配管で、フロントにディスクブレーキ(GLも)を持つ。
 純正のブレーキパッドは減らないが止まらない。今はFC3Sのスポーツパッドを使っている。ローターは減るが、止まらないよりましだ。インボードなので、パッド交換をするたび顔が真っ黒になる。セダン系のドラムブレーキはアクスルを外さないとドラムが外れないし、復元時はアクスルボルトをカラゲ線で縛るので、もっと面倒だ。
 前後トーションバーの主ばねは固く、減衰力も締めたが、柔らかい。
 その他差別化は、BSラジアル10の145-13、エンブレム、ルーフアンテナだ。先端の尖ったベレG共用だが、多くは先端が丸いレオーネ用に交換されている。サンバイザーと共締めで、緩んでもすぐ直せる。

 トリビアとしてスポーツ系のメタルオプションを紹介しよう。トランクフロアの「ハ」の字のハット材だ。Rフロアは波板ビードで、Rサスの支持点はホイールアーチとフロアのY/0付近である。フロア基本次数の共振モードを励起させる設計だ。ラジアルタイヤ付きは入力が大きく、振幅抑制でハット材を入れた、と昔上司が言っていた。全く静かでないし、トランクに荷物を置く時はいつも、そのハット材が邪魔である。

ハの字の補強の説明だが、本当にどうでもいい。それにしても汚い

 原価低減で、アームが鍛造から厚板鋼板の最中になり、ブレーキは自動調整のアルフィンドラムから手動調整の鋳鉄製になった。量産開発での軽量化と原低活動は最後まで混乱させる。原価は相対値だが、質量は絶対値なので誤魔化せない。開発プロセスを抜本的に変えれば実務を右往左往させず粛々と進行できる。だが経営陣にそれを変える責任感はない。さらに、不十分な要求特性のままRFQを出しサプライヤーの自由選定をした結果、原価と引き換えにインプライドな品質を担保できなくなった。要求特性が不十分なのは経験値に頼る開発だからだ。ただ、自己評価は高く、典型的なダニング=クルーガー効果を示す。

 経験値のノウハウや知見のままでは技術にならない。目標達成の定量的な達成企画を作る概念がなく、あるのは「適合」と言い換えた「チューニング」だけだ。それでも製品開発できてしまう。昔森永さんが「当社の優位性はチューニングだ」と書いていたが、前提がある。設計とは、数値目標を達成する定量的な達成企画を工学的に確立し、具現化することだ。その上で、品質上許容可能な範囲内で定数を微調する作業がチューニングである。マスプロ製品の開発では、技術者が工学的能力を発揮して性能設計、構造設計を実現するプロセスでのみ、チューニングが意味を持つ。製品の各システムが連携し複雑化する今、設計の技術センスはそれを超える速度で進化すべきだが、適合中心の開発でのそれは確実に退化している。

 次に機会があれば、所有したスバルや競技のことを書こうと思う。 
 子供の頃、浜田良美というシンガーが好きだった。以前、彼が在籍したバンドの歌詞にセンサンジーが出てくるのを知り、何となくうれしくなる自分がいた。


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