一匹の蠅『高橋和巳全集2』428-429頁

あなたたちにとって生きるということは一体どういう意味をもつのか。あなたたちが、いま私の振りあげる斧によって頭をぶちわられたとしても、それが一匹の蠅が殺されたことと価値的に相違することを明証する根拠があるのか、あれば百万言を費やしてでも言ってみろ。その違いは、結局存在するものの形態が少しばかり蠅より大きというだけではないのか。そしてまた、その血と血漿が少しばかり多量であり、生臭く温かいというだけではないのか。
高橋和巳「悲の器」『高橋和巳全集2』428-429頁

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?