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こんな時だけ医療従事者をヒーローだと本気で信じてる人たちへ

嫌味なタイトルであることをまずお詫びします

さて、今回はコロナウィルスの影響で院内感染を起こした病院や他の病院の医療従事者に対して批判が相次いでいるので医療現場に対する誤解について話したいと思います

病院は感染リスクでいっぱい

みなさん、病院が清潔だと思ってませんか?

全くの誤解です

確かに病院スタッフは院内の清潔を心掛けていて、実際にいろんな取り組みをやってます

感染委員会の設置
感染に関する勉強会への参加
掃除を業者に委託していたとしても、自分たちも診察台や椅子、スリッパ、手すり、ドアノブなどは消毒液など使って清潔を保っています

でもなぜ、そんなことをする必要があると思います?

それは病院にやって来る患者さんはウイルスを持っている可能性が高いからです
失礼な言い方かもしれませんが、風邪は風邪ウイルスによるものだし、怪我をして来院する患者さんの傷口にも雑菌が存在します
健康で清潔な患者さんなんてほとんどいません

何回掃除したって病院はリスクでいっぱいなんです

新型インフルエンザ流行時にいた病院の対策

2009年、得体のしれない新しいインフルエンザが猛威を振るいました
いわゆる新型インフルエンザです

元々あるものに関しては医療は強いですが、未知なるものに対しては弱いのも事実です
なぜなら日本のほとんどの病院は治療施設であり、研究施設ではないからです治療薬や治療法が明確でない病気に対しては手探りでしかないのです

ようやく開発されたワクチンではありますが、数は十分とは言えませんでした

ワクチンの接種は患者さんにはもちろんですが、実はそれより優先しなければいけない人たちがいます
それが医療従事者です

医療従事者がウイルスの保菌者であれば、全く別の疾患(腹痛、頭痛など)で診察に来た患者さんにうつしてしまうリスクが高いのはわかりますよね?
患者さんは多かれ少なかれ、健康な人より抵抗力や体力は落ちてます
だからまず医療従事者が体内に抗体を作る必要があるのです

待ちに待ったワクチン
数が足りていなかったために院内では優先順位が決められました
患者さんはもちろんですが、医師、看護師、受付、介護士など患者さんに接する機会が多い職種が選ばれました
僕は理学療法士でしたが、リハビリスタッフが接種したのはワクチンの第2陣が届いてからでした

ぶっちゃけ怖かったっすねぇ…

その頃感染疑いの患者さんが来院した時は、患者さんに車などで待機してもらい、医師が車まで行って検査してました
院内に入れないことで院内感染のリスクを最小限にしてたんです

報道の表現に対する違和感

コロナが日本国内で広まり始めた当時、よくこういう言葉を耳にしました

『医療従事者は元々様々な抗体を体内に保有している』

言い過ぎじゃありません?
間違いではないですよ?
でも僕の知ってる人は毎年牡蠣に当たって休んでましたよ
風邪だってひきますよ
ノロじゃなくてもお腹壊しますよ

まるでちょっとやそっとでは病気にならないような言い方だなって思ってました

いいですか?
ここから怒涛の例えラッシュですよ?

医療従事者はなんかやたらと細くて見上げても終わりが見えない塔に登って猫なんだか何なんだかわかんない奴から修行受けたわけじゃないんです

医療従事者は中国の五老峰で日本語ペラペラの老師や日本語ペラペラの女の子に囲まれて廬山昇龍覇を会得したロン毛じゃないんです

医療従事者は不良ばっかり集めた学校作って、事あるごとに殺し合いさせて、挙げ句の果てに敵から無理矢理ロケットに乗せられて宇宙に飛ばされたのに自力で帰って来る塾長じゃないんです

伝説の海賊王の右腕からやたらと過酷な修行をしてもらって、ガン飛ばすだけで雑魚なら気絶させてしまう力を手に入れた麦わらでもないんです

医療従事者は普通の人間です
「医療のくせに感染するなんて自己管理がなってない!」
なんてとんだ言いがかりです
生身の人間が得体の知れないウイルスがいるかもしれない職場に毎日通ってるんです

今の医療の現場は非常事態

今、医療現場にはコロナを疑う患者さんが続々とやって来てます
もちろん保健所経由が本来の道筋ですが、保健所でも対応が間に合わず、結果として直接来院したり問い合わせするケースが多数あります

学校の休校や、親が医療従事者であることで子どもが登園拒否されたことにより休まざるおえなくなった医療者も多いので、他の医療職も合わせて残った職員で対応せざるを得ません

コロナ疑いの患者さんだけが来院するわけではなく、他の体調不良で来院する患者さんもいます
そういった患者さんは“ここでずっと待たされていたら自分もコロナに感染するんじゃないか…”と不安になります
そういった方々の不安にも寄り添わなければなりません

そして大前提として“自分も今頃感染しててもおかしくない”という不安もあるのです

命懸けで仕事をしたかったわけではない

ほとんどの医療従事者は決して自分の命と引き換えに患者さんを救いたいわけではないと思います
救いたいんですよ?
でも自分の命と天秤にかけたら…

死にたくないですよ

人のためにと思って志した人もいれば
お金のため
親が医療やってたから
なんか格好いいから
モテそうだから
いろんな理由で志した人がいます
どの仕事だってそうですよね?

でも、自分の命や生活あっての仕事です
死にたくて仕事してる人なんていません

できることなら逃げ出したいです

今の混乱した職場に出勤するのにどれだけ勇気がいるか

医療従事者は漫画やアニメのヒーローじゃないんです
当たり前のことですが漫画みたいに後々仲間の活躍で生き返るわけじゃないんです

「私、失敗しないので」って偉そうに言う医者って何様?

あくまで僕の想像ですよ
例えば世の中に「私、失敗しないので」って上から目線で言うお医者さんがいたとしますね

医療従事者にとって、特に医師にとって、それは当たり前のことで、
いちいち偉そうに言ってどうすんの?
わざわざ口に出すことでもないでしょ…
って話なんです

しかしそれでも失敗はあります
人間ですし何が起こるかわからないのが現場です

もしかしたら他の病院ならある機器がこの病院になかったために、転院手続きをしたけど手遅れになってしまったケースもあるかもしれません
患者数が多すぎて手が回りきれなかったケースもあるでしょう

TVでスーパードクターの特集とかやってますよね?
あれってよくよく見るとね
そりゃそんだけの機器が揃ってたらやれるかもね?ってのもあるんですよ
お金持ちの病院はいいなぁ…って悔しい思いしてる医師もたくさんいます

そして患者さんの家族から
「TVで○○ってドクターがやってたあの術式でやって下さい!」
って、いきなり言われてもやれるわけがないんです
無理って伝えたら
「はぁ?」
って顔されたりね
ならその病院行きゃいいじゃん…
そして「予約がいっぱいで手術は1年待ちです」って言われりゃいいじゃん…

なんかとっちらかって来ましたが

つまり医療従事者に神がかりな対応を求めるのはいかがなものかと思うのです
病院に入れば死なないなんて神話はないのです
病院には助かる命もあれば、助けられない命もあります
神様じゃないのです
そもそも医療は法律で規制されていることが多いのです
命のためなら法を破ってでも患者を守るかって?
そんなことしたら病院は営業停止させられます
そしたら救える命ですら救えなくなります

命を救いたいから出来ないこともあるのです
命だから救えないこともあるのです

お願いです
医療を責めないで下さい
やれることは全力で、全力以上にやってるのが今の医療現場なのです

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