ドット絵の作画について(光源の表現)
ハード性能の向上とゲームビジュアルの発展
ドット絵の黎明期には、解像度や同時発色数の問題で、明確な光源…それを元にした陰影の表現があまりされてきませんでした。個人的にはゼビウスあたりが、光源表現がそれと判る形で表現され出した気がしていますが、子供の頃の話なので定かではありません…。
余談ですが、上の画像は、友人のサウンドディレクターから会社のノベルティ用にデザインしたものです。ディグダグ時代あたりのナムコっぽいキャラクターという発注で、音符を元にしたデザインと、会社のロゴである虹色のテーマで作りました。このように、アイコン的に機能するキャラクターを作るには、むしろ制限があった方がテーマが際立つこともありますし、レトロな味わいがあります。
それはさておき、キャラクターに使用できる色数がある程度増えて来た頃に、自然と”光源”を意識した絵作りが出来てきたと考えられます。ちょうど古典ピアノがモダンピアノに変革したように、技術の進歩とアートの発展には密接な関係があるのは間違いありません。
ただし、悪魔城ドラキュラの”死神”が代表するような、少ない色数ながらハイコントラストで強烈な陰影を表現したキャラクターもファミコン時代から存在していましたので、先人達の創意工夫によって、制約の中、様々な画調のゲームグラフィックが生み出されてきたこともまた事実です。
ここで話を戻しますと、90年代のアニメ調ドット絵の大きな特徴のひとつとして「明確な光源設定」が挙げられると思います。受け売りではありますがナムコの「ギャラガ88(80年代じゃねえか!)」では光源がオブジェクトの左上に設定されており、キャラクターのハイライトを左上に描くことで画面全体としての調和がとられています。立体感を出すために陰影を描き込んでも、肝心の光源がキャラクターによってバラバラに設定されていたのであれば、画面に並んだときにチグハグになってしまうことでしょう。*反転しちゃうと光源が逆になりますがこの場合はスルーしてください。
光源の設定とその作画
その点、1990年移行のアニメ調ドット絵画調では、光源の位置が比較的明確にあります。光源の位置はステージとの相性を考慮し、または作画上最も自然な位置として、キャラクターの上方に光源を設定しているケースが多かったと思います。
光源についての話題になると、どうしてもアウトラインの問題に言及することになってしまうのですが、ドット絵のスタイルとしてキャラクターの周りを濃いアウトラインで囲うという流派があります(メタルスラッグとかがそうですね)。
これは、背景に対してオブジェクトの存在感を際立たせる効果があり、漫画っぽいコミカルな風合いもあるので、根強く人気のある手法です。
ここで紹介するアニメ調ドット絵スタイルは「アニメ調」と銘打っているのに、不思議なことに絵をアウトラインで囲わないのです。
木炭デッサンをしたことがある人には馴染みのある手法かも知れませんが、光源にあたる方は、背景色との落差で結果的にキャラクターを浮立たせることが出来ますし、影になる部分は意図的に濃い色を配置することでアウトラインのような効果が得られます。このため実際には濃い色で意図したアウトラインを描く、ということはしていません。これは背景を含めた、絵としての一体感を高める効果があったと思いますが、アウトラインで囲わないことで簡素な塗り方でありながら結果的にリアリティのある仕上がりになったのではないか、と考えています(現実のオブジェクトにはアウトラインが存在しないので)。
と、ここまで書いてみて、光源の話は奥が深いので、次回「立体感について」で合わせて解説いたします。
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