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OpenAIの取締役会が刷新されたのはたぶん正常:出資者の権利や社会への説明責任から考える

2023年11月17日 OpenAIはサム・アルトマン氏をCEOから解任することを突然発表し、同月22日には一転してアルトマン氏の復帰、及び、Board of directors(理事会・取締役会)の刷新を発表しました。この一連の出来事において、CEOが維持されBoardの方が刷新されるという方向で決着しそうだという流れは、企業ガバナンスの観点からは当然のような気がするということについて書きたいと思います。

会社の代表選任に関する一般的な話

OpenAIの話に入る前に、会社の代表が選任される一般的な手続きに関して確認しておきたいと思います。例えば、上場会社では以下のような手続きとなっています。

  • 代表取締役を含む会社の取締役の選任は、定時株主総会で付議事項として取り上げられ、株主の投票によって決定される。したがって、取締役を決める権利は株主(出資者)が持つ。

  • 会社資産の私的流用といった会社に損害を与える違法行為を代表取締役が行った事実が発覚したような場合には、取締役会がその代表取締役を臨時で解任するために動くことはあり得る。(取締役解任のための臨時株主総会の招集を取締役会は決議可能。)

  • ただし、そういった場合には、株主や社会に対しての説明責任が伴う。むしろ、違法行為のような重大事項の事実関係をきちんと説明するのが取締役としての責任。

ちなみにこのような枠組みは、取締役が私利私欲に走ることを防ぐ方向に作用するため、企業ガバナンスの一翼を担っていると言えます。

今回OpenAIでBoard of directors(理事会・取締役会)が行ったこと

17日 にOpenAIのBoard of directorsは、取締役を改選する通常のタイミング(定時株主総会など)以外のタイミングで突然CEOの解任を発表しました。その発表でも、その後数日の対応でも、なぜCEOを緊急的に解任する必要があったのかに関する事実関係の説明はほとんどありませんでした。また、大口の出資者であるMicrosoftと事前にきちんと調整をした形跡がないどころか、MicrosoftのナデラCEOは解任理由について何も説明されていないと報道されている状況です。OpenAIの組織構造が複雑であることは勘案すべきかもしれませんが、出資者の権利や社会への説明責任を減じる理由にはならないでしょう。

まとめ

以上のように、大口出資者であるMicrosoftとの調整無しに、定時総会のようなタイミングでもなく、十分な説明もなく、勝手に突然CEOを解任するというOpenAIのBoardの行動は、出資者の権利保護や社会への説明責任の観点から考えて、信頼を著しく損ねる行動だと指摘できると思います。したがって、企業ガバナンス的には、そんな無茶苦茶な決定をしたBoardの構成員が刷新されるのは当然である気がします。

(参考)OpenAIの組織構造

OpenAIの組織構造については下図(OpenAI公式サイトから転載)のようになっています。より詳しくは、Wikipedia(2023/11/23参照)や公式サイトにある説明をご覧下さい。

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