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「1-1+1-1+1-1+・・・」の答えは ?

おはようございます、こんにちは、こんばんは!
ちょっと異色の経歴(?)をもつ古川です。
今回はちょっと難しくも面白い数字のお話し。
あまり深く考えずに楽に聞いてくださいね(笑)

古川 浩
九州大学大学院システム情報科学研究院情報知能工学部門の准教授を勤めていた2008年、PicoCELA社を創業。2010年同大教授を経るも、事業拡大のため2018年3月に退職し、PicoCELAにフルコミットメント。大学と民間を行ったり来たり。九州大学に所属する以前はNECに所属、第3世代移動体通信の研究開発および標準化活動に携わる。古川考案の基地局選択型送信ダイバーシチ方式(Site Selection Diversity Transmit方式、通称SSDT)は3GPPならびに3GPP2において世界標準化された。SSDTの拡張方式は第5世代移動通信においても適用されている。全世界で70件以上の登録特許を保有、100編以上のジャーナル・国際学会論文等を出版。工学博士


数字のもつ意味を考えてみる

いきなりですが、みなさん、
「1-1+1-1+1-1+・・・」
の答えは何だと思いますか?

無限に1と―1を繰り返す、級数の和についての問題です。
足す項を少しずつ増やしながら結果を考えてみましょう。

1=1
1-1=0
1-1+1=1
1-1+1-1=0
1-1+1-1+1=1


うーん、困りました。

これでは永遠に、1と0を繰り返すばかりで
一向にひとつの答えが導き出せません。
このとても単純な問題への明快な答えを得るためには
「無限」の概念について、少し深く考えてみる必要がありそうです。

ここで別の質問。

世の中にあるすべての偶数(2,4,6,8・・・)の個数
すべての自然数(1,2,3,4・・・)の個数
さて、どちらの個数が多いでしょうか?

常識で考えると、当然、自然数のほうが多いと思いますよね?

いやいや、待てよ・・・、両方とも無数にあるわけだし、なんかしっくりこない・・・


よくわからないので、実験!

それぞれ異なる偶数の番号を書いた無数のピンポン玉を袋Aに、それぞれ異なる自然数の番号を書いた無数のピンポン玉を袋Bにいれます。もちろん、袋Aと袋B、両方とも無限に大きなサイズの袋を用意しなければなりませんので、頭の中だけで想像してください(笑)

袋Aと袋Bの重さを天秤にかけて比較すれば、偶数と自然数、どちらのほうが個数が多いかを知ることができますね。
さて、どちらの袋が重いでしょうか?

うーん、頭の中で想像しなければならないので
まだイマイチよくわかりません。

では、こうしましょう。

空の袋Aと空の袋Bを両方天秤にかけ、それぞれ1個ずつ数字の書かれた
ピンポン玉を同時に入れていきます。
こうすれば、どちらの個数が多いか、直ぐにわかりますね!

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ではまず、偶数の一番小さな値2と自然数の一番小さな値1が書かれたピンポン玉を、それぞれ袋Aと袋Bに入れてみることにします。

はい、天秤は釣り合ったままですね。

次に、ピンポン玉#4とピンポン玉#2をそれぞれ袋Aと袋Bにいれます。
そうです、天秤は釣り合ったままですね。

以下、続けていきます。

ピンポン玉#6→袋Aに、ピンポン玉#3→袋Bに入れました。
⇒釣り合ったまま。

ピンポン玉#8→袋Aに、ピンポン玉#4→袋Bに入れました。
⇒釣り合ったまま。



ピンポン玉#100→袋Aに、ピンポン玉#50→袋Bに入れました。
⇒釣り合ったまま。

うーん、まだ釣り合ったままです。続けます。




ピンポン玉#1000→袋Aに、ピンポン玉#500→袋Bに入れました。

ずっと釣り合ったままです。
いい加減疲れました・・・。

もうお分かりのとおり、袋Aと袋Bは永遠に釣り合ったままでしょう。

ということは、すべての偶数の個数とすべての自然数の個数は「同じ」
ということになります。
不思議だと思いませんか?

自然数は偶数と奇数の集まりですから、常識で考えれば、偶数の個数より自然数の個数の方が多いに決まってます。しかし、すべての偶数の個数と
すべての自然数の個数は、実は同じなのです。

これは無限という概念をより正確に理解する上で、とても重要な気づきを我々に与えてくれます。


やっぱり分からないから最初の問題へ・・・

 1-1+1-1+1-1+・・・=?

先ほどの天秤に倣って、1と書いたピンポン玉を袋A、-1と書いた
ピンポン玉を袋Bにいれます。
どちらが重いかは、もう皆さんお分かりですよね?

そう、天秤は釣り合います。

1と書かれたピンポン玉の総数と、-1と書かれたピンポン玉の
総数は同じです。このことは、つまり、袋Aの中の1と書かれたある
一個のピンポン玉に対して、袋Bの中に―1と書かれたある一個のピンポン玉が、それぞれ一対一の関係で存在することを意味します。

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そこで「各々の1」とそれに対応する「―1」をグループで括ってみます。

1-1+1-1+1-1+・・・
=(1-1)+(1-1)+(1-1)+・・・
=0+0+0+・・・
=0

という答えが導かれます。

この話は、私が大学3年生を対象にした通信方式という科目の第一回目の講義で必ず取り上げた話題です。変復調技術を中心とする昔ながらの通信技術は、「=数学」であると言っても過言ではありません。

解析学や線形代数学、確率統計学といった数学的概念を駆使して先人たちが作り上げてきた、とても整った洗練された技術体系(=枯れた技術とも言います😅)であると言えます。

通信技術は、工学の一部として扱われていることが一般的ですが、核となる要素技術は、そのほとんどは天才的な数学者達によって形作られてきました。教科書に書いてある通りのことを応用するのはそれほど困難なことではありません。

しかし、原理をより深く理解できたときに、はじめて見えてくる「美しさ」や「驚き」に、私は何度も感動を覚えました。

今回の「無限」の話は、「数」というものが、人間の素晴らしい頭脳が描き出した「単なる抽象」にすぎないということを象徴する一つのお話として紹介しました。

皆様の記憶の片隅にでも置いていただければ嬉しく思います!


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