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【月刊pic-step8月号】望月しいな先生 インタビュー

こんにちは、月刊pic-step編集部です!
今回はスペシャル会です!ゲストにフリーイラストレーターの望月しいな先生をお招きし、
『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』キャラクターデザイン・アートディレクターを担当する信澤 収先生にインタビュアーとして参加していただきました。


望月しいな
Twitterフォロワー数20万人を超える人気イラストレーター。
ライトノベル等書籍の挿絵や表紙、グッズなど様々なイラストを担当。


信澤 収
『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』
キャラクターデザイン・アートディレクターを担当。
Canvas社代表を務めるイラストレーター。



最初は漫画家を目指していた

Twitterフォロワー数20万人超えの人気イラストレーター、望月しいな先生。今回は望月先生のイラストにフォーカスしつつも、先生自身のことも深掘りさせていただき、ファンの方やイラストに興味がある方、イラストレーターを目指す方へ何かしらヒントになるようなお話を引き出そうと思い、インタビューさせていただきました。

ーインタビュー始めていきたいと思います、よろしくお願いいたします。まずは、ファンの方からの質問にお答えいただきます。

絵師を目指された理由はなんですか?

望月先生:イラストレーターになりたいと思ってイラストレーターになったわけではなく、もともと中学生くらいの時は漫画家になりたかったんです。
その当時初めてデジタルに触れて、イラストを描いてるうちに「自分は漫画に向いてないかもしれない」と思い始めて、そこから1枚イラストをメインに描くようになりました。ただ、本当に趣味で描いていただけで、イラストレーターになるつもりは全然なかったですね。

高校を卒業してからも全然違う職業に就いて、3年ぐらい働いてから、やっぱりどうしてもイラストが描きたいと思い、イラストの道に進むことを決めました。描く時間がなくなってから、自分にとっての存在の大きさに気付いたという感じです。

信澤先生:自分も中学ぐらいで初めてペンタブを買ってもらったのがきっかけで、絵を描き始めたんですけど、ちなみに望月先生は一度漫画家を目指されたけど、やっぱり違うかなと思ったのはどういう理由だったんですか?

望月先生:1枚1枚といいますか、一コマ一コマ、もっというと一人一人、めちゃめちゃ描き込んでしまう癖がありまして。

信澤先生:書かれてるイラストすごい繊細なイラスト多いですもんね。確かにあれで全部コマを描いたら…。

望月先生:でも、昔より実は雑になってますね。前までは、それこそ1ドットが見えるぐらいまで拡大して描いてました。今はなるべく拡大しないように、引いて見るようにしています。

イラスト1:77HaruCollection13

77HaruCollection13

テーマは特に決めない

このイラストのテーマを教えてください!

ーとファンの方からご質問がありますので、お答えいただけますか。

望月先生:これご質問をいただいた時にとても恐縮だなって思ったんですけど、私は絵を描くときにあんまり考えてないんですよ。お仕事をいただいて、テーマがこれですっていうような条件がある場合は、このテーマに沿ったものを描くんですけど、オリジナルで描くときって、そこまで綿密にこのテーマで描きたいみたいなのが正直なくてですね。
強いて言えば女の子のかわいいリラックスしたポーズが描きたいっていうので決めました。

ーでは、かっちりしたテーマを決めて描くぞっていうわけではないんですね。

望月先生:ただ、描きたいキャラクターだけは、「不思議の国のアリス」っぽい水色の女の子描いてるんですけど、その子のイラストで何か描きたいっていうぐらいで…。

信澤先生:自分も、オリジナルイラストを描く時は厳密に考えずに、なんとなく描こうとする時が多いですが、「これでいけるかもしれない」みたいになってきてから、モチベーションが上がってくるのは何かすごくわかるなって思って。

〆切がモチベを上げる

信澤先生:結構イラストレーターの子で最初になかなか筆を持てないというか。
描こうとなってからモチベーションを上げるのって結構難しいって話もよく聞くんですけど、望月さんは「リラックスした女の子を描こうかな」っていうところからスタートされてて、どうやってモチベーションを上げて進めていくのか、工夫してることがもしあったらお聞きしたいなと思いました。

望月先生:〆切です。
「いつまでにやらなきゃいけない」っていうのがいいですね。〆切がモチベに回るのと、あとはイメージが湧かない時とかは、色んな画像をインプットして、自分の中にイメージを蓄積させるというところから始まりますね。リラックス系の作業用BGMをかけるのも良いです。

信澤先生:分かります。インプットしないとアウトプットできないですよね。

線を使い分けて細かいところまで描き込む

―イラストの注目ポイントや、こだわったところをお聞きしたいです。

望月先生:実は結構ネイルのところを細かく描いてまして。

ーよく見ると本当に描き込まれていますね。うさぎさんもかわいいです。

信澤先生:まず最初にうさぎさんの方に目いっちゃいますよね。で、よく見たらネイルもしっかり描かれてるな、という風に目線の順番が出来上がっててすごい良いですね。

ーちなみにこのイラストで特に時間がかかったところはどこでしょうか。

望月先生:私、いつも線画にとても時間がかかる人間なんです。その中でも髪を描き込むのが最近のマイブームなんですが、やはり一番時間がかかりますね。

信澤先生:特に髪の毛とかはわかりやすく毎回すごい繊細に描かれてるなって思って見てましたけど、どういうペンで描かれてるんですか?

望月先生:鉛筆っぽい柔らかさがあるテクスチャと、Gペンとかでよくある液だまりの表現があるペンで描いてます。

信澤先生:線に抑揚が付いてるなーと思ったんですけど、やっぱりそういう強弱の表現があるペンも使いながら描かれてるからなんですね。

望月先生:そうですね、中に細い線があると思うんですけど、さらにペンのサイズ自体を細いペンで描いたりしてます。

イラスト2:Starry Night Show Time

Starry Night Show Time


ーこちらの注目のポイント、ここにこだわったっていう部分は?

望月先生:髪の流れだったりとかスカートのふんわりした感じ。
信澤先生:飛んでる鳥がすごいマッチしてますね。

望月先生:このイラストは、昨年の2022年5月にTOKYO ILLUSTRATION WEEKっていう企画展で使用するために描かせていただいたものです。

信澤先生:こういうイラストを受ける時に、こういうところを特に企業から受ける時は気をつけるようにしてるとか、ここがよくいつも苦労するかなみたいなところがもしあったらお聞きしたいなと思ってたんですけど。

望月先生:比較的私がお仕事させていただいているところは、「望月さんの好きなように自由に描いてください」って言っていただいているので、あまりそういう苦労はないんですけど、自分の得意なテイストとは違う分野の依頼があると、そこが大変かなって感じなんで。

信澤先生:でも、確かに発注する側からしたら、望月さんがこんなの描いたらどうなるんだろうみたいなのを知りたくてしたら発注されてるかも。

望月先生:そうだと思うんですよね。すごい光栄なんですけど、「ごめんなさい描けないんです…苦手なんで」「期待には応えられないかもしれないです」って言うこともあり…

信澤先生:それをはっきり言えるのもすごい大事というか。発注していただいちゃうと、「頑張って応えなきゃ」みたいな感じになりますから、最終的にお互い良いことにならなかったりする。ちゃんと「私無理かもしれません」って言っていただけるのは、発注側からしてもすごい逆に助かるというか。

イラスト3:Dear

Dear

ー全体的に柔らかい印象の絵ですが、中央に黒を持ってくることで少し締まりを出していらっしゃいますよね。

望月先生:実は私、配色するのがとても苦手なタイプで。
何色も使いこなして描かれるタイプのイラストレーターさんもいらっしゃると思うんですけど、私には絶対できないです。同系色でまとめるのはすごい好きなんですけど。

信澤先生:こちらのイラストも、同系色の中の色の変化がすごく綺麗ですよね。そこも繊細なタッチと合っていて。

望月先生:

こちらのイラストはどういうシチュエーションを想定したものですか?

という質問をいただいてたんですけど、

このイラストのキャラクターは、私が描いている漫画のヒロインの女の子をもとに描いていまして。恋愛モノで、相手の男性キャラクターがいるんですけど…

信澤先生:あー抱いてるのは…

望月先生:そうなんです。思いを寄せている相手のジャケットなんですけど。

信澤先生:便箋やペンがいっぱいありますが、手紙を書いたりしているっていうことなんですかね?

望月先生:そうです。
女の子は、好きになってはいけない相手を好きになってしまったという設定なんですけど。

信澤先生:ああ…良いですよね(笑)

望月先生:直接想いを告げることはないけれど、手紙を書いたとしても、直接渡すわけではないけれど…

信澤先生:出さない手紙ってことですね。

望月先生:そうですね、自分の中だけにしまっておくためだけの手紙です。

完成してなくてもどんどん公開していい

ー今後やってみたいことや、挑戦したいことはありますか?

望月先生:元々漫画家になりたいっていう話をしてたと思うんですけど、実はチャレンジをし続けていて、漫画の方に力を入れて頑張っていけたらと思っています。
漫画に触れたことによって、ラフ作成の時間がかなりスピードアップしましたし、イラストを描くときにも役に立ってますし。イラストレーターが漫画を描いても、逆に漫画家さんがイラストを描いても、何も無駄にならないっていうことだけお伝えしたいです。

信澤先生:最初からクオリティの高いものが作れないと公開しちゃいけない、みたいに思ってる子も結構多いと思うんですよね。完成してないと公開しちゃだめ、みたいな。特に漫画とかは長いので。ただ「やることで色んなことにメリットがあるよ」というメッセージが元気づけられるかもしれないですね。

望月先生:ラフでも何でもいいのでバンバン公開していけばいいと思います。完成したものじゃないとSNSにアップしちゃいけないって思い込んじゃってる方、多分すごく多いと思うんですけど、全然良いんです。
ワンドロ(絵を1時間で描くこと)で出したりとか、例えば1日とか時間決めて描いて、完成してなくてもアップしちゃうとか。
そんなに気負って自分を追い詰めてやるのじゃなくて。私、絵を描くので一番大事だなって思ってるのが楽しんで描くことが一番だと思ってるので…。

楽しめないと本当に全て苦痛だと思いますし、楽しいっていう、好きっていう気持ちを何よりも一番大事に、そこだけは忘れないでくれっていうのだけ伝えさせていただけたらと思います。

ーありがとうございます。大変貴重なお話をいただくことができ、素晴らしい回になりました!望月先生、信澤先生、本当にありがとうございました。

さて、今回は信澤先生にも参加いただいた特別な回でした。今回のお話を聞いて、インプット・アウトプットがどれだけ重要なのか改めて知ることができました。
クオリティの高さよりもまず、どんどん発信する。描きかけでも良いから、完成してなくても良いから公開する。というお話は衝撃的でした。大事なのは、その勇気!描いたら溜めておかず、どんどん公開していきましょう。それが技術の向上にも、精神力の向上にもつながるかも。

このインタビューの様子は動画でもご覧いただくことができます!気になった方はぜひ、動画の方もご覧ください。


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次回もお楽しみに!


インタビュー: 萩谷 勇也
記事:橘 爽香

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