見出し画像

わたしが望んだものの正体



わたしは一生懸命、階段を登っている

何から逃げているのかも

何を追いかけているのかもわからない


怖くて汚くて壊れそうな階段を

必死に登っている





頂上に着いた時

そこは何故か実家のマンションの部屋で

4階のはずなのに

10階くらいの高さだった

誰かが 「おかえり」 といってくれた


ベランダからの景色をみて

わたしは 『やっと帰ってこれた』 と言った

母が矢継ぎ早に 「そりゃそうだよだってちーちゃん京都に行って…

『そうじゃないの』 わたしはさえぎった

『ここは何階?』

母が 「4階だよ?」 と怪訝そうに答える

わたしには13階くらいに見える

空は綺麗な夕陽のグラデーション





そうだ、わたしの原風景だ

まだ向かいのマンションも建ってなかった

地元の中学も高校もみえた

奈良に聳え立つ山もみえた




わたしはこれがみたかっただけなの




ソファで寝ている父は

いつも通り

仕方ないなという顔をしながらも微笑んでいた

弟はメロンアイスを食べながら

心配そうに覗きこんでいた






夢から醒めたら泣いていた

自分の中で味わって納得したあと

アイマスクを外したら

窓から差し込む黄金の光に包まれていた




ありがとう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?