見出し画像

映像からどのような選曲をすればいいのだろう

もう何十年も映像にBGMを貼り付ける仕事をしているけど、いまだに正解を
導き出すことは残念ながらできていない気がする。

選曲するにあたって、まず大事な部分は
映像には、ディレクターの思いが込められていること。
またディレクターは、全体の番組コンセプトに従っているので
どの世代をターゲットにするか、ナレーションでの説明を多くするかなどを
考えながら編集をしていく。
その辺も十分に選曲する側は理解をもって取り組む必要性があると思う。

テレビ番組は、朝、昼、夜(ゴールデン)、深夜で、ターゲットとしている
世代を分けて演出をしている。
視聴率は、見ていただく方の行動パターンを注視しないと視聴率が上がりません。
一番わかりやすいのは、朝の8時から11時あたり。
この時間に、アニメ番組を放送しても、子供は皆、学校で授業を受けているでしょう。
当然、観る人は少ないため放送による効果は、ほぼ絶望的。
逆に、この時間は20代後半から40代中盤の専業主婦の方たちが、時間的に余裕ができるはずなので、おしゃれなお店などを紹介する番組を観たいと思ってテレビを見るでしょう。
その時J-POPや90年代近辺の流行ったBGMを流すことで関心を持って番組の企画を観てもらえる確率が増えると制作サイドは思うでしょう。

本題に戻りますが、選曲って、ぶっちゃけ誰でもできるものです。

もちろん機材操作など、難しい課題はありますが。

結婚式の進行に合わせたBGMとかも選曲です。
選曲で最も難しいのは、音の全くない映像やどんなお客さま(観客)が来ても、ある程度不快にならないBGMを付けること。

結婚式だと、お年を召した方がいらしている中、NiziUのBGMを流したなら
耳障りに思う方もいるでしょう。若い方はそうではなくても、何人かは
何この曲?と不快を感じる人が必ずいます。

自分なりに、ある法則があります。
10人くらいの視聴する規模にしても、100万人が視聴する規模のものでも
人には必ず嗜好があるので、違った嗜好の間で見られる共通点の最大公約数を探すことだと思います。
図で表すと下図のような関係です。

円グラフだよ

「総じて受け入れてくれる人達」のために選曲することが
受け入れやすい。もしくはJ-POPよりだけど洋楽も聞いて
同じ雰囲気がするBGM(似た感じと捉える)なら受け入れられる。

J-POPに偏りすぎる選曲は、洋楽が好きな人とクラシックが好きな人には
到底受け入れがたい選曲になります。
テレビ番組だと、視聴者からクレームもあるでしょう。

「総じて受け入れてくれる人達」のための選曲が言いかといえば
全くよくないのです。
自分のセンスが消滅してしまうからです。
選曲もセンスがないと、仕事として成り立ちません。
先に述べたように選曲は誰でもできます。
誰でもできることから脱却するには、「えっ何、この楽曲」と思ってもらう
驚きをディレクターや視聴者に感じてもらうセンスが必要なのです。
流行曲を、流すだけではやっぱり駄目なんです。
ひと工夫がないとダメなんです。
この辺が、伝えにくいところなんです。
ただ、最初に戻りますが、ディレクターが思いを込めた映像に
どのように反映していくかが大事です。

選曲は自分のエゴだけでは、どうしても成立しないのです。

あるワンシーン(写真ですが)を観て、どのようなアプローチが
あれば選曲として限りなく正解に近いかを感じ取れるかもしれません。
番組の選曲の重要性を感じてもらえると嬉しいです。

カメレオン子供

この画像は、うちの娘が描いたものです。
この画像から、どんなBGMを貼り付けたらいいでしょうか?

カメレオンがハエを食べようと舌を伸ばしています。
なぜかわかりませんが、虹が描かれています。
不思議です。
でもこれにBGMを付けてと言われたら。。。


① コミカルなシーンだなと考えた場合
かわいらしいカメレオンの無邪気さや、雨上がりの虹に誘われて
警戒心なく飛び始めたハエ君から、トイピアノや木管楽器のような
スタッカート気味なコミカルで軽快なBGMを当ててもいいと思うでしょう。
間違いではありまえん。

② 太古から伝わる壁面絵画を考えた場合
古代壁画として捉えたなら、賛美歌などの荘厳な響きのあるBGMを当ててもいいと思うでしょう。
間違えではありません。

③ 震災など不幸があって亡くなった子供の絵を考えた場合
不幸があって、たった一枚だけ残っていた絵。
ピアノによるメロディがぼやけた感じのBGMを当ててもいいと思うでしょ。
間違えではありません。

ワンシーンに、アプローチの仕方はたくさん存在します。

先に述べたように、このシーンだけでは選曲の方向性は全く見えないのが
正解かもしれません。
でもワンシーンからの選曲は上記のように、間違えはありません。
では、何をもって正解に近づけるかといえば。。。

この一枚だけの絵だけではなく全体の構成が、どの方向に向かってディレクターが映像を編集しているかが、とても大事になってくるからです。

ディレクターは震災で不幸に見舞われた方が、今は前を向いて人生を歩み始めた姿を紹介したいというメッセージを強く持って編集しているなら
先の絵は、悲しいだけではなく、一枚の絵から勇気や希望を託された大事な絵なんだ。この辺を導きだせたなら、ピアノのBGMも悲哀な曲ではなく
温かく、やさしい旋律のBGMがきっと正解に近いでしょう。
あくまでも近い正解です。

視聴する人の嗜好は皆、違うからです。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?