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行きたい場所に行くお話

私は20代の頃には放浪癖がありました。

どのくらいの放浪癖かといいますと、例えば土曜日の夜、仕事が終わり、会社の駐車場で車に乗り、そのまま愛知から車を走らせ四国や鳥取や群馬まで行き、ぶらぶらしてご飯を食べて帰る、そして月曜日から仕事をする、という具合です。

殆どの都道府県は旅行に行きました。

色んな滝をみて色んな山も登りました。

前職は年一回の長期休み(一週間)がありまして、その時は近場のアジアに旅行に出かけました。10時間くらい恐ろしく険しい山を登りカレン族の村で正月を過ごしました。ベトナムのマイチャウ族と変な踊りをする正月もありました。カンボジアの田舎でフルーツを食べながらTVをみる正月もありました。水牛に囲まれて怖かったり…サルとかネズミを食ったり…パラオで海に潜ったり、無人島でキャンプしたら、ベルリンで…

写真は撮らなかったけど心の中にいまでも沢山の映像が浮かんできます。

お金持ち…と思われるかもしれませんが、住む場所、食べ物に文句を言わなければものすごく安く旅行に行けます。海外の宿でお湯がでた記憶はほとんどありませんw

なぜ時間が許す限り色んな場所に行ったのかには理由があります。

ある患者さんとの出会いです。

その患者さん可愛らしいおばーちゃんです。かなり壮絶な人生を経験されているのにも関わらず、いつも明るく介護施設を笑わせてました。

90歳でしたが、毎度僕をベットに誘います(/・ω・)/w

患者さんは蜂巣炎という病気を両足に患っていました。

そして車いすの生活をされていました。患者さんはいつも

「足が治ったら富士山に登りたい」

と仰っていました。

患者さんはかなりの高齢者です。私は正直難しいと思ってましたし、患者様も治癒が難しいことは理解しているようでした。

ある日、私はその患者さんに会いに行きました。ちょうど今頃と同じ春で、桜が綺麗に咲いてました。いつものように僕をベットに誘います…もう、それが挨拶のようです。

でもその日の最後に

「お前は若いうちに色んな景色を見ておけよ、足が動かなくなってからじゃ遅いからな」

いつになく真面目な顔で、そういいました。

僕はどんな風に返事をしたか覚えていません。

そしてその日がお会いした最後の日でした。

私たちは足も動いて、行こうと思えばどこにでもいける状態です。でも、その足はいつか動かなくなります。絶対に動かなくなります。

その時がきたら…行きたい場所、行けてますか?

パンデミックが終わったら、また家族で色んな場所を旅行しようと思います。

後悔しないように。

おしまい

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