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#2 ダブルパンチ | 元祖筋育専用干し芋フィジーモ BrandStory

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ダブルパンチ

原発事故後、父の後をトボトボついて苗植えを進めていきました。
毎日、空が不気味に曇っていました。今でも灰色の景色しか思い浮かびません。

こんなイメージしか残っていない

情報が錯綜し、放射能の影響がどうなっているのか全く分かりませんでした。
栃木県産の干し芋、たけのこ、干瓢への風評被害が不安でした。
さらに、仕入が終わったばかりの主力商材の干し大根は、宮崎県産なので関係は無いはずなのに、栃木県の工場で袋詰めをしているという理由で納品を断られることがありました。

もはや「あかちゃんが大喜び」する、安心安全な干し芋を永久につくることはできないのではないか?
70年以上コツコツと築いてきたものが、崩れ落ちる絶望感に襲われました。

売上が無くなって資金繰りが苦しいことに加えて、「お客様に喜んでもらえる商品をもう作れないかも」という心理的ショックのダブルパンチでした。

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代々コツコツと築いてきたものを次世代にも受け継ぎたい

被弾後にみえてきたこと

事故現場から比較的離れた私たちでさえ絶望するのですから、事故現場に近い方々のご心痛は想像を絶するものだったでしょう。

そんな時に、VEフランクルさんの「夜と霧」を読みました。

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夜と霧

想像力を持つ人間だからこそ希望や目的を見出すことができ、それに邁進すれば絶望的な状況をどうにかできる…、救われた気持ちになりました。

この気持ちもあって、災害ボランティアとして何度か被災地入りして干し芋をお配りしたり、瓦礫や泥の除去のお手伝いをしたりしました。

被災者の方々に「美味しいよ」「ありがとう」と温かい言葉をたくさんいただきました。

様々な経験をしながら、どんなことがあっても、戸崎農園のブランドプロミス「あかちゃんが大喜び。オーガニック干し芋。」を守らなければならないという決意を新たにしました。

その後、私たちの畑では放射性物質は検出されず(正確な表現は「検出限界値以下」)、秋には無事収穫を迎えて、干し芋の加工までこぎつけることができました。

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震災以来、放射能測定は毎年必ず行います

たくさんの方々に助けられて

事業を継続するのにたくさんの方に助けていただきました。

銀行借り入れは億単位で増えてしまいました。
しかし、それも金融機関の皆様がいろいろと工夫をしてくださり、首の皮1枚で何とか繋がりました。

有機栽培の認証機関のご指導をいただきながら、移行期間を経て正式に有機栽培の認証を受け、良い干し芋ができる体制になってきました。

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認証は毎年審査されて更新します

硬くて、びちゃびちゃして、まずくてご迷惑をおかけしていた地元のお客様もお店に来てくださいました。
軒先に簡易机の直売所ではお客様に申し訳ないので、中古コンテナを低コストで改造してお店としました。

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戸崎農園おもちゃのまち直売所

メディアが沢山取り上げてくれました。

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日経、下野はじめ沢山の新聞に掲載されました
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NHKやとちぎテレビにも取り上げていただきました

みぶブランドという町のブランドに認定されました。

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みぶブランド

高橋尚子さんが参加する町の目玉イベントである、壬生町ゆうがおマラソン参加賞に採用していただきました。

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小さい頃の思い出カンソイモ=乾燥芋→完走芋→かんそういも

おもちゃのまち団地のキャラクターとコラボしていただきました。

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壬生ゆうゆ

地元の医科大学ブランドとコラボしていただきました。

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独協医科大学有機干し芋

デザイナーさんを紹介していただき、素敵なデザインしてもらいました。

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イラストレーターいわにしまゆみさんのデザイン

商売の最高の喜びは、お客様に喜んでいただいて、また何度も買っていただくことだと思っています(LTVへの考え方は後の機会で記します)。

頑張っていたら、沢山の方々が助けてくださり、その商売の好循環が回り始めていました。

トリプルパンチ?

好事魔多し・・・。

新型コロナ禍で急速に売上が減って、またまた資金繰りが苦しくなりました。
会社のお金がみるみるうちに無くなっていく中、売上を上げるために奔走しました。

一回目の緊急事態宣言発出直前のことです。
売上を上げたい一心で、東京の有名デパートの催事販売に参加していました。

若い男性が売り場に近づいてきました。
お客様はいわゆるマダムの方が多いので珍しく思い、声をかけてみました。

「お兄ちゃん、ガタイ良いけど、何かやってるの?」

(田舎者なので言葉が乱暴でごめんなさい。)ゆったりとしたパーカーを着ていても、肩と腕がモリモリ発達しているのがわかりました。

つづく

文:戸崎泰秀

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