奥多摩の景色001

まだ写真を仕事にする前の事だ。
長い旅から戻った私は老人ホームで働いていた。
当時から写真が大好きで通勤には初任給で買ったPENTAXのK10というカメラを片手に職場へと向かっていた。

いつもの見慣れたはずの奥多摩は旅をしていたおかげか違った景色に見えた。
毎日が新鮮で、写真を撮るのが楽しくてしかたなかった。

そんなある日、遠くの山に「ちょっと撮ってくれない?」と呼ばれた気がした。
足下に落ちていた自分の目線を上げると、遠くの山が笑っていた。
そのまま自然とシャッターを切る。

・・なんだか神秘的だな

撮り始めると時間を忘れる癖がある僕は慌てて時計を見る。
出勤時間ギリギリだ!
走って向かうのにももう慣れた。
仕事も好きだが、ずっと写真を撮っていたい、
そう思ってたな。