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万年筆ペン先の共鳴『ペン鳴り』を測ってみる

iTunesストアで面白いappが無料だったので遊んでいます。 「e-scope 3-in-1」と言いまして、iPhoneのマイクから入力された音を、オシロスコープやFFTで表示してくれます。信号発生機能も付いていて、三角関数、矩形、ホワイトノイズ、単音スイープなどを鳴らすことも。 

何で試そうかと思案していたところ、『ペン鳴り』のする万年筆があったのを思い出したので測定してみることにしました。
多くの万年筆のペン先はSUSや金の合金からなる柔らかい金属製で、いずれも片持ち梁=カンチレバー形状になっており適度にしなる構造で、筆記に伴い僅かに変形、振動します。
特に、筆記時に紙との摩擦などでペン先に強い力が加わると、ガラスを引っ掻いたような高い音が生じる現象があり『ペン鳴り』という名で呼ばれています。この現象が起こるとペン先が微振動してインクがパッと細かく飛び散ります。(この音とインクの散る様が、好きな人にはたまらんのです。珍しいので僕もこのペンは特に調整等せず大事に使っています。 )

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この細かく散ったインクが良い ※正式な書類とかだと迷惑

この現象、特異的な高音が生じることとペン先が細かく振動していること、さらにペン先の形状(カンチレバー形状、薄い金属板)からして、いわゆる共振によるものではないかと言われています。

という訳で、通常筆記音と、高い音が強く出ている”ペン鳴り”音を測定・比較していみようという試みです。

まずは通常筆記音の測定から。

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通常筆記音の測定結果

グラフの右側ほど高い音、左に行くほど低い音です。通常のサリサリカリカリ言う筆記音は3,500Hzくらいですね。キーキーとかピーピー言う甲高い音は4,000Hz以上に相当するので、通常筆記時はそれほど高い音は出ていないと分かります。

では次、ペン鳴り時の測定。

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ペン鳴り発生時の筆記音の測定結果

先ほどの通常筆記音3,500Hzに加え、7,000Hz, 10,500Hzあたりに明確なピークが生じています(下に拡大図)。かなり高音なので、おそらくこれが『ペン鳴り』のピーピー音ですね。高音で、かつ通常筆記音のちょうど2倍と3倍の周波数に該当する音でることから、これは倍音と見られ、共鳴現象であることが示唆されました。

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以上、万年筆の『ペン鳴り』が、以前から指摘されているように共鳴に起因しているという説明で良さげ、ということを示すお話でした。精度が十分なのかは良く分かりませんが、iPhoneアプリでここまで測定できるのが面白いですね。

ところで、調子に乗って遊んでいたら、飛び散ったインクが机を汚染しました。

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このインク、顔料インクでして(Montblanc Permanent  Blue,一番の愛用品)。耐水性抜群なので乾くと跡が残るんですよね。慌てて拭いたんですが、ちょっと汚れが残りました。はしゃぎすぎ良くない。

なお、本実験はParker Duofold Centenialを用いています。他のペンの場合は状況が変わることがあり得ますので、ご注意ください。

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