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フィルムのホワイトバランスを求めて

先日喫茶店でいつもの自作フィルムVison3-200Tを使用して撮影をしてきました。場所は野々市市のカエデ珈琲さんです。

デジカメ・フィルム問わずホワイトバランスは大切です。人間の目で見た色に近づける場合や意図的にシフトさせてアーティステックにしたり、物の本来の色を再現したりするために、フィルムの場合はその種類によって使い分けを行い、デジタルの場合はケルビンによって調整します。

今回の撮影条件
カメラ NikonF アイレベル
レンズ Auto Nikkor S.C. 50mmf1.4
フィルム Kodak Vison3 200T(色温度3200K)
現像液 MARIXカラー現像液による自家現像

左:肉眼に近づけたもの。右:HS-1800でスキャン結果そのまま

左右を見比べると特に白いお皿の色がグリーンシアンにシフトしています。
暖色の照明の為、3200Kのフィルムである程度正しいホワイトバランスになると思いましたが、だいぶ色が転びました。食べ物も不健康な色になっています。

ホワイトバランスを決める要素
1.フィルムの種類(デジタルの場合はセンサーや画像エンジンの性質)
2.現像手法
3.スキャン機材の性質・モード
4.レンズの性質
5.表示媒体の性質・性能(画面・紙)
6.人間の目・脳

フィルム時代のホワイトバランス
フィルム時代はフィルムとレンズと現像の相性を写真家の方々は研究していました。中には自家製現像液を生成する方もおられたとか。
例えばFUJIG69にProvia100のフィルムで撮影する昼間の山岳写真がとても良い・・・など。昔の先輩方はすごいですよね。
状況に応じでフィルターワークもしていた時代ですね。

気持ちの悪いデジタルカメラ
デジタルのAuto White Balance は正しく説明できている文献がほぼないといっても良いのが気持ち悪く感じます。多くの文献は"カメラが自動で調整して"と書かれています。自動ってなんだ!?私が20年前ほどに疑問に思った答えをだれも答えてくれないし書いてもない。おそらく、ホワイトバランスを検出するセンサーが全体の平均をある値に収めるようにカラーシフトさせているのだと思います。ちょっとわかりませんが。
ちなみに当社の撮影ではWBはほぼマニュアルで行っております。

低温自家現像の為、なめらかな諧調に仕上がった

フィルムはついつい撮って出しで使いたくはなりますが、色やコントラストを整えることは悪いことではありません。
フィルムの場合は2つのWBの考え方があります。
1.1コマ1コマの白ないし、雰囲気を優先する
2.フィルムの性質を優先する(性能曲線や未露光部を黒と定義する手法)

当社のノーリツ鋼機HS-1800はどのようなアルゴリズムで色調整しているのかメーカに聞かないとわかりません。新しいフィルムが出るたびにスキャナー制御のファームアップなどがあれば銘柄によるプリセットがあると類推できますが、そのようなことがないので、デジカメ同様にある値に近づける処理をしているのではないかと思います。

どちらが好きですか

でも、そうなるとたくさんのフィルムの銘柄がある意味がなくなってしまいます。フィルムの風合いを生かしたいのに実際はスキャナーの原理不明の色調整でお客様が喜んでいる。こうなったら、本当の色なんてわかりません。
お店によってはカラー調整や明るさコントラスト調整を行うサービスもあります。当店は明るさコントラスト(いわゆる濃度)調整にとどめています。特別お客様からの指示があれば、CMYの調整を行います。

何が本当の色か

このフィルムの色が好きって自信をもって言いたい場合はぜひご自身でスキャンや検証をされた方が理解が深まります。色の三原色がフィルムの銘柄によって異なった振る舞いをします。それがフィルムの違いです。

あとクオリア。あなたの見ている赤と私の見ている赤は同じ波長を受け取っているが、脳の処理や目の性能によって異なる色に見えているということです。これは哲学でもしばしば話題に上がりますが、最終的に自分が満足する色に落ち着けばよいと思います(仕事の場合はお客様が満足すればよい)

色々書きましたが、色は雰囲気を左右する要素の1つです。ちょっと考えてみても面白いと思います。だいぶ複雑ですが・・・

それではまた次回まで

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