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探偵を実装したいという欲望のなかで

「探偵する」から「特別」。どうも、神山です。

今回は第六回文学フリマ札幌参加にかこつけて、これまで何を書いていたのか思い出す記事になります。どちらかというと、次回invertまでに何を自分がしてきたか覚えていない可能性があるので遺しておこうというか。

これまでに書いたものは以下
①死にゆく世界に生きるということ/Re:死にゆく世界に生きるということ(invert vol.1)(Thermohaline Circulation):2013-14
 →探偵とアイドル論
②夢見るこどもと赤い月 ―夢水からマチトムへ、はやみねかおるの世界(invert vol.2):2014
 →はやみねかおる作品論
③誰のための探偵小説―天帝のはしたなき果実、その生る樹について(invert vol.3):2016
 →天帝のはしたなき果実とうみねこのなく頃にを用いた作家・読者(犯人・探偵)論
④三十一文字(みそひともじ)の返信(リプライ)―『#恋人を喪った安田短歌』の狂気と優しさ(invert vol.4):2017
 →恋人を喪った安田短歌論(エッセイ)

とまぁ、これらのようなことを書いてきました(⑤については大分外連味あるエッセイ調だったので、メインとしてはinvert vol.3までとなります)。

これらについて僕は何を目的として書いてきたのでしょうか。

それぞれ小説やゲームなどのコンテンツと探偵という概念、それらへの(からの?)現実社会の反映(投射?)について書いていたといえるでしょう。今読み返しても粗削りで、黒歴史に足を突っ込んでいるとは思いながらも、どの文章もやりたいことは今回の記事タイトルの通り「(誰かの)人生に探偵を実装する」なんだと思います。

それはいったいどういうことなのか。自身を探偵に擬えたフェミニズム批評家の言葉を一度借りましょう。

「犯罪者は創造的な芸術家だが、探偵は批評家にすぎない」という有名な言葉があります。たしかに、批評家はテクストを犯罪現場みたいに嗅ぎ回り、犯罪者、つまり芸術家がばらまいた手がかりを見て、ヘマを探し出そうとやっきになる探偵で、あまり独創性がないかもしれません。でも、この本に登場したミス・マープルのような名探偵は、何が何だかわからないカオスから正しいものを救い出してくるヒーローです。私は批評家にすぎませんが、ミス・マープルと同じような仕事だと言われるならばそれは光栄です。〈お砂糖とスパイスと爆発的な何か/北村紗衣 あとがきより〉

北村さんが言う通り、カオスから正しいものを救い出してくるヒーローとしての探偵、を僕は実装したいのでしょうか。

僕の答えはNO。確かにヒーローとしての探偵について思考したこともありましたし、ウルトラマンと名探偵のようなことを書こうとしたこともありました。けれども、世界の真相を看破し、秩序立てて整理をつけるということはあまりにも困難です。僕が実装したい探偵像は「傍若無人な名探偵」です。それは、各人が自らの技能を用いて、世界を解釈・改変するちからをもてるようになるということ。ここにおいて批評は正しい読解をすることではなく、むしろオルタナティブな作品や世界の見方にスポットを当てることだと僕は考えています。僕が語る、かつその時に限り成り立つ世界の在り様を共有したい。それが、『探偵を実装する』という欲望です。

本当に探偵を実装できるかどうかはわかりませんが、まずは月末読書会side札幌として、文学フリマ札幌にて読書会録を発行します。できるのか……?

ではでは。

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