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日記: 2024.06.09 遠藤ふみ、ミ兵chiまつり


遠藤ふみ ピアノ生音ワンマンライヴ

Polaris

昼、よく行っている小川町のPolarisに「遠藤ふみ ピアノ生音ワンマンライヴ」を聴きにいく。遠藤ふみさんは初めて演奏を聴く。名前だけ聞いたことがある程度だったが、インプロヴィゼーションの人のようだったので逆に予習が要らないだろうという心構えで来た。

着くとPolarisに常設されているアップライトピアノがででーんと真ん中に置かれ、その周りに客席がある。アップライトピアノの生音を聴くのにはどのポジションがベストなのだろうか。着いた時点では真後ろがすっぽり空いていて不人気のようだった。弾いている手が見えないせいかと思ったけど、始まったら皆大体目を閉じて聴いていたので関係ないらしい。でもアップライトの蓋の開き方からすると真後ろでいいような気がする。Polarisのピアノを初めて間近に見たが大変きれいな造形だと思った。

Polarisのピアノ

12時半から少し押した開演の前に、この演奏は14時半に終わるが、それまで休憩なしに続けるのでずっと座っていなくてもよい旨告げられる。インプロヴィゼーションの演奏は大体1セッション40分とか演って休憩を挾んでもう1セッションのようなパターンが多いので確かに長い。掛け時計が外され、遠藤さんから見える位置に置かれる。

スマホとかは持ってないのかなってちょっと思った

長い演奏だったのでしおりを付けるつもりで、自分の頭の中を流れていったものを書き留めておく。

序盤

演奏はとても少ない音――単音か、せいぜい2音――を交互に弾くように静かに始まる。サステインペダルは踏みっぱなしで、先に弾いた音の減衰音と次に弾く音が混じり合い、おそらく他の弦も少し共鳴している。この時点ではそれらがぶつからないように音を選んで弾いているように見え、何処か緊張感はありつつ素朴な響きであった。

20分くらい

20分くらいしたところで和音を押さえるようになる。おお、和音入ってきた、という謎の感覚。このくらいまでは姿勢を左右に動かすことがなかった。つまり真ん中辺の手の届く音域だけで弾いている。なおサステインペダルはずっと踏んでいる。

30分くらい

低音域の利用が許された(?)らしく左手をそちらまで伸ばすようになる。最初は指を開いて離れた音をジャッジャッとやっていたのが、やがてアルペジオもするようになる。ところで依然としてサステインペダルは踏みっぱなしである。こうなると弾く音がいわゆるLow Interval Limitを逸脱したところで混じり合うことになり、音響が加速度的に不穏さを増していく。この演奏における1つ目のピーク。

50分くらい

不穏な時間が一段落して平和が戻る。休憩入れるならここだなー、などという考えがよぎった。しかしいまや低域と和音の使用が許されているので(?)序盤に比べて音は豊かさを増している。

60分くらい

ピアノの上に置かれていた鍵盤ハーモニカを吹き、すぐやめる。コードを連続で刻むようなパターンのピアノ。

70分くらい

何となく旋律っぽいものが生まれ、それに対するバッキングも弾いているように聴こえてくる、が気のせいだったかもしれない。その後リフ的なパターンを繰り返し、次第にダイナミクスを激しく上げていく。この演奏における2つ目のピーク。それがまた徐々に弱くなり平和が訪れる。

90分くらい

それまであまり気にしていなかったリズミックな要素に意識が向くようになり、今鳴っているフレーズは三拍子だろうか、それとも6/8だろうか、などと考え始める。高音域の鍵が使われるようになり、右手でやや低めのフレーズを弾きながら左手で高音と低音を鋭く単音で交互に繰り返し叩くような激しい演奏。3つ目のピーク。嵐が過ぎると3度目の平和が訪れるのだが、やはり「テーマに戻る」ような感じではなく(完全即興にテーマなどないが)、それまで拡張してきた音を踏まえた新しい演奏になっていた気がする。

100分くらい

ピアノの音がミュートされて驚く。ここまでずっと踏みっぱなしだったペダルをやっと上げたのだ。一度あげるとそこからは音を切るということが表現のパレットに追加されて繰り返し使われるようになる。

終盤

ふっと音が全て止まって無音が訪れる。そして長考。この時点で2時25分くらいだったので早めに切り上げたのかと思って拍手する用意をした…がそうではなかったらしく再開。演奏は予告通りの時間に終わる。

ミ兵chiまつり

下北沢SPREAD

打楽器奏者のミ兵chi(はまち)さんが、参加していたりサポートしていたりするバンドやユニットを集めて開催されたイベント。つまり全部のアクトではまちさんが演奏する。

この方を知ったのはごく最近で、今までに2度観ている。最初はタイのLesssugärというバンドが4月に来日したとき、対バン共演で太田ひなtrioというグループが出ており、

これを観て「どうしてこうなった」って思った。そんなわけでこの右側の人がはまちさんだということを覚えた。

2度目は江の島のOPPA-LAというところであったイベントで、私はそのイベントに出るMagic, Drums and Love(マジドラ)というバンドをずっと生で観たいと思っていて、共演者について調べたところLOLOETというバンドも出る(というかそのイベントの主催だったのかもしれない)が、そのバンドのドラマーが太田ひなtrioのはまちさんだということが分かったのでその機会に行くことにした。そのLOLOETはバンドセット(そのときの編成はDs, Ba. Tp.)に日本語やフランス語のポエトリーリーディングを乗せるスタイルの音楽で、それもかなりよかった。そのときの物販で今度こういうイベントがあることを教わったので、来てみたということです。

(以下観たアクト。後で撮った動画を追加するかもしれない)

THPY

女性ボーカルがデスボイスで歌うバンド。来たばかりで始まったので聴く心の準備ができておらず、なんか体感すぐ終わってしまった。

hanazono ninin

女性デュオで、Electribeのマシンビートの上でシンセを弾いたりボコーダーで歌ったり笛を吹いたりする。はまちさんは電子パッドその他を叩き、ユルいコーラスを入れる。「おめでとう」「ありがとう」などと繰り返していたので縁起のいいユニットに違いない。

h2 marimba duo

地下の狭小なライブハウスでマリンバの生演奏を聴くというなかなか珍しい経験。単純にマリンバの音が好きなので良かったしきれいな音を間近で体験出来て嬉しい。演奏後、マリンバを解体・搬出するのでお客さんはちょっと出て行ってくださいと言われた。そんな転換も初めてだ。

ところで打楽器奏者の人がマリンバも守備範囲に入っていると聞くと音大とか芸大とかなのかなっていうイメージがあるのだが、このデュオも大学院の同期仲間で結成していると言っていた。

太田ひなtrio

初見ではツイン電子パッドに気を取られたけど、一旦それを消化すると曲も声もとてもよいシンガーソングライターの人だということが分かる。もう結構ファンかもしれない。

ブッセ

Gt., Ba., Dr.のスリーピースバンド。ギターの寿々木ここねさんは女性ソロアイドルの対バンイベントで一度観たことがあった。あったけど何でこういうバンドをしているのかとかはよく知らない。これすごいよかった。なんかドラマーだけ手練れなノーウェーブ、みたいな。いや、例え合ってないかもしれないけど。というか、バンドとしての狙いがまるで分からない得体の知れなさみたいなところの魅力がある。今日はインストで即興をしていたそうだが、普段はギターボーカルで歌うらしく、歌含めて聴いたらむしろ評価変わるかもしれない。

ブッセ

・・Ⅱ

色んな種類のベース(エレキベース、ウッドベース、アップライト)達による即興にダンサーが踊りをつける。はまちさんは叩けるものは何でも叩きまくる担当で、自分の持ち物の他、エレキベースの弦、ウッベの筐体、フロアの観客のグラスなどを叩いて回っていた。音的には私にはこれがかなりストライクゾーンな感じ。あとインプロヴィゼーションの演奏にダンスをつけるのがすごく良いという感覚がある。それ系の人たちはダンサーとのコラボを積極的に考えてほしい。

ここまで観て帰った。私はタバコの臭いが苦手で、フロアに流れ込んでくるそれがちょっとダメな感じになってきたので(一応喫煙のことはタイムテーブルに書いてあったのでいやになったら帰ろうとは思っていた)。

その後にLOLOETの出番も控えていて、できればみたかったのだけど、LOLOETは直近で別の機会に見られるかもしれないのでそのときにみられたらみる。1つ1つの出演者の持ち時間は短かったけど全然バラバラなものをいっぺんに見せられるレアイベントでかなり面白かった。

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