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振り返り日記: 2024.07.09 ニューヨエコファンミーティング2024 in Tokyoに行ったこと


先日表題のイベントに参加していました。ヨエコさんはかつて倉橋ヨエコという名義で活動していて、15年前に活動を廃業した後、今年になって活動を再開されたシンガーソングライターの方です。このイベントの前に春頃に「プロローグ篇」という同様のイベントを吉祥寺スターパインズカフェで行っており、私はそれには行っていません。そちらも今回も前半トークショー、後半ライブショーという構成です。

先に白状しておくと私はその廃業前からのファンというわけではありません。そんなニワカな人間が「ファンミーティング」に来てもいいのかという感じは我ながらちょっとあって、開場時間からスタッフさんが入場列を捌くのに割と時間があったのでちょっと周りを見渡してみると、なんというか「面構えが違う」んですよね。ヨエコさんに会うこの日のために万難を排してきたという風で、装いも統一されているわけではないけれども強い意志を持って選んだというような。私はニワカがばれないようにおとなしくしていよう……と心に決めました。

座・高円寺2

このイベントのポスターには「音楽でお喋りしよう♪」という文句が書いてあります。このポスターに限らず事前のフライヤー画像など、このライブに関わる色んなところに書いてあったと思います。これは実はこの日披露した新曲の歌詞の一部で、ダウンロードカードを事前購入して予習していればそう分かったんですが、私は届いてからダウンロードして予習する時間が取れていなかったのでした。このフレーズだけ取り出すと何というかまあ凡庸な文句という印象が正直あり、あまり気に留めず通り過ぎていました。この印象は後で変わるのですが。

入場時にチラシと共に団扇を受け取ります。こういうやつ。

入場時に手渡された団扇

「人間をやりなおそう」というちょっとドキッとする、何なら不穏な言葉が書いてある。これも実は新曲の歌詞の一部です。

開演前のステージ

トークショー

黄色くキラキラしたドレスに身を包んでヘッドドレスで顔を覆ったヨエコさんが会場に大拍手で迎えられたあと、前半のトークショーは概ね「プロローグ篇」の話題でした。これは物販の小冊子にも当日の経緯が書いてあり、それに沿って進められたのですが、この日リハーサルまでは出ていた声が直前で出なくなってしまい、本番では不本意な歌唱を披露せざるを得なかった(とはいえ復活を待ち望んでいたファンを失望させたというわけではなかった)ということが司会者(登坂亮太氏)の進行で振り返られます。

その「プロローグ篇」では「ボイトレ講座」なるものが行われたそうです。それはペットボトルをストローでぶくぶくした後に声を出すとよく声が出るようになるというもので、その再現もヨエコさん自身によって行われたのですが、ぶくぶくのあとにヨエコさんが「アー」という高い声をだしたとき(その日初めて「話し声」ではない声を出したとき)、会場が息を呑んだのが分かりました。「いま、聴いたぞ……」というような。

トークショーの後半ではヨエコさんが退場し、「ヨエリスト検定」という賞品(サイン入りチェキ)つきのクイズ企画が行われました。入場時に配られた団扇はここで使うためのもので、クイズの〇×を団扇の裏表で回答して、勝ち抜け方式で絞っていくもの。私は3問目くらいで早々に脱落しました。

ライブショー

ジーンズのドレスとやはりヘッドドレスの装いに着替えて登場したヨエコさんは、自分の右側に歌詞が書かれた譜面台を置き、右を向いて歌うスタイルです。これも先の小冊子にそうなった経緯が書いてあるのですが、書き写さないといけないという事もないと思うので省略します。とにかく制約上そういうスタイルになっている。私は事前に届いた小冊子は目を通していたのでそれを知っていたのですが、うっかり上手寄りの座席に座ってしまった。まあいいんですが。

今回の編成はヨエコさんのボーカルの他はピアノ(菅原敏)とコーラス(葛岡みち、渡部沙智子)で、アレンジは「ニューヨエコ」の音源に近いジャズ的な――ジャズと言っても色々ありますが、歌謡ジャズ的な?――ものでした。

ちょっと意外だったのは、ヨエコさんが間奏時にいわゆる「ワイパー」を促す場面が何度かあったことです。演者に促された以上は当然応じるんですが、なんか曲調にそぐわないかな?という印象をもちつつでした。廃業前にもやっていたのかとかは全くわからないんですが、やりながらちょっと思っていたのは「正面を向くため」なのかなということです。先に書いたようにヨエコさんは歌っている間は右(下手側)をずっと向いていますから、観客全員に顔を見せるにはたまに正面を向く必要がある。ただ、単に正面を向くだけでは手持ち無沙汰であまり格好がつかないから、ワイパーを促すという理由をつけようという意図ではないかと。

この想像はひょっとしたら半分くらい当たっているかもしれませんが、後にアンコール明けでさらに考え直したのは、ヨエコさんは「ついで」としてではなく、実際にそれを積極的にやりたかったのかもしれない(それも想像でしかないけれども)。

ライブ本編のセトリはツイッターを探すと出てくると思いますので省略します。マイナーな曲で往年のファンにサービスするみたいなのがなかったのでニワカの私にも親切でした。歌について1つだけ特筆すると本編最後の「楯」は聴いていて背筋に何かが走って震えるような素晴らしい歌唱でした。

物販Tシャツに着替えて再登場したアンコールでは、予め話すことを用意して書いておいたと思われる譜面台を見つめながら、物販の紹介と、廃業後に福祉関係の資格を取得し、自閉症などの子供たちと接する機会があったことが語られました。コミュニケーションが取りづらそうに思えるそれらの子たちも音(音楽)に対しては体を動かして反応を見せる(音に敏感な子は大きい音に対して耳を塞いでしまうということもあるが)ことに気づき、音(音楽)を使って会話をすることはできるのだと感じた。そのようなことを話されていました(このくだりはヨエコさが選んだ言葉を正確に伝えられればと思うのですが、思い出しながら書いているのでニュアンスが異なる点があればすべて私の責です)。

そのアンコールで歌われたのは"music"というタイトルの新曲なんですが、この曲には合いの手のように「パパン」とクラップが入る箇所がある。ここでクラップしてくださいと言わんばかりのやつなので、音源を予習してきた観客もみんなそこでぴったりと合ったクラップを入れるんですね(私も2回目からは入れました)。

そこまで体験して色々腑に落ちた気がするというか、繋がったという感覚があって。アーティストが音源やMVを出すだけでなくライブも行う人の場合、自分がどういう空間をその会場に作り出したいか、というイメージがおそらくあるわけじゃないですか。アーティストのキャラクター次第で、完璧に作り込まれた演出を余計なMCなしで披露したい人から、観客を煽り続けて沸かせたい人まで、色々。

それで「繋がった」というのは、このヨエコさんのライブでは、当初あまり気に留めていなかった「音楽でお喋りしよう」というのがその作り出したかった空間を端的に表現しているもので、どうやら軽く通り過ぎるべきものではなかったようだ、ということです。それからワイパーのことも、「人間をやり直そう」という言葉についても、終わった後には見え方がガラッと変わっていたのでした。

裏面に“music”の歌詞が書いてある物販のクリアファイル

そんな日でした。おしまい。

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