健康麻雀の思い出
以前、僕が鬱病となり仕事を休職してた頃の話です。
鬱病はあらゆるやる気を奪うので、趣味などにも没頭出来ず、毎日をベッドの上でただ寝転ぶだけの虚無の日々を過ごしていました。
外出と言えば、月に一度の精神科への通院だけ。本当に虚無しかありません。
とはいえ、いつまでも虚無では済まされないので、主治医から「作業療法」に通うことを薦められました。
作業療法については知らない方は適当にググっていただくとして、要するに週に何回か病院の作業療法室に通って、パズルで遊んだり、切り絵をしたり、エアロバイクを漕いだりという適当な作業を行うことで、社会復帰に向けて能力の回復を行う治療法です。
僕はそれを聞いて、「(鬱病でなくても)つまんなさそうだなー」と思っていたのですが、作業療法士の説明の中で「健康麻雀をやっているグループがある」ということをチラッと聞いて、少しだけ関心を持ちました。
これは前に書いたnoteなのですが・・・
当時僕にはリアル麻雀の経験がこのくらいしかなく(他には一度、点5フリーに自動卓の使い方がわからないまま突撃したくらい)、ちょっとリアル麻雀をやれる機会はアリだと思い、作業療法の一環として、健康麻雀をすることになりました。
とはいっても所詮作業療法の一環の健康麻雀なので、麻雀講師やルール表なんてものは存在しません。精神科の患者の自主活動です。僕が参加するまではメンツが三人しかいなく、四人麻雀のルールを三人打ちで遊んでいたようです。全員が同じ日に集うとも限らないので、開催は不定期です。
ここで登場人物紹介。
Aさん
健康麻雀グループのリーダー的存在。アラサーくらいで麻雀をするとき以外は常に耳にヘッドホンを付けている。麻雀の進行はAさんが主導して行い、僕が面倒くさがって覚えない「賽振りからの山の取り出し」はAさん任せ。ただし点数計算は出来ない(早見表頼り)
Bさん
70才近くの爺さん。年の功か、グループの中で一番牌捌きの手つきがいい。暗槓するときは手牌に入れたまま行うひと。ただし点数計算は出来ない
Cさん
アラフィフくらいのおっさん。麻雀をする前は必ず「麻雀入門の本」を眺めていて、手役の頁を読んでいることが多い。ただし点数計算は出来ない
・・・
作業療法士の紹介で、まずはグループに挨拶。しかし会話をしてくれるのはAさんだけで、BさんとCさんは相槌しか打たない。Aさんにしても明らかにオタクの陰キャ臭が漂うので、僕も含めて陰キャしかいないことが判明。ある意味安心できるメンツです。
最初に麻雀のルールを確認。
誰も詳細なルールなんて決めてないので、とりあえず適当に進行。ゆるゆるである。楽しめればOK。
それでまあ適当にやるんですが、みんながみんなど素人なので所作とかマナーとかいう概念がありません。Bさんは強打しがちだし、Cさんは無駄に長考します。鳴きの手順なんか各自バラバラで誰も正解なんか知りません。
でも僕も含めて誰もそれを気にしないんですよ。
点数計算なんですが、僕しかわからないのでクソ適当です。何となく真面目に計算すれば50符になりそうでも面倒くさいので40符です。
あと点数計算出来ると言っても、ネトマしかしてないので普通に固まります。ロンはすぐわかるとしてもツモは混乱します。メンピンツモはいつも「2700点」と頭にあるので、リアルの700-1300がなかなか出てきません。裏ドラ乗ったら「死ね」ってなります。4翻超えると指を折るのが面倒くさくなるので。
それにAさんの趣味(?)で本場300点なんですが、僕が70%くらいの確率で申告に加えるのを忘れます。どうせみんな点数計算出来ないんだから積み棒なんていらないのでは、と提案しましたが、趣味で積み棒は計算し続けることとなりました。
あとは僕が1pポン、役牌ポンをして和了したときなんですが、普段無口なBさんが「それは和了れないよー」と主張しました。まさかの後付け禁止です。とはいえそれを主張するのはBさんだけでしたし、そもそも点数計算も出来ないひとが先付けの定義を細かく説明できるわけでもなく、その場で今後の取り決めは「アリアリ」となりました。
Aさんはやたらと七対子を狙う
Bさんは門前ばかりでほとんど鳴かない
Cさんは手組みが遅すぎてほとんど和了出来ない
そんな感じだったので、集計とかはとくにしてなかったのですが、僕のトップ率は多分50%を超えていたと思います。
対局中に雑談するのは僕とAさんだけで、BさんとCさんはほとんど喋りませんでしたが、みんな麻雀を楽しんでいて、打てる日を心待ちにしていたように思います。
この関係性は3か月くらい続きましたが、その間に休職からの退職コンボを決めた僕が、知り合いからの打診を受けて再就職をしたことでピリオドを打ちました。
突然決まった就職だったので、麻雀仲間に挨拶をすることもなく、作業療法士に伝言をお願いしただけのお別れとなりました。
あの後、彼らはメンツを揃えて麻雀を続けられたかは定かではありません。
AさんはよくパソコンでCPU相手に麻雀をしていましたが、BさんとCさんはスマホすら使えないのでリアル麻雀を楽しむしかなかったような気がします。
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