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雀魂で中国の麻雀シーンが注目され始めたので、千羽黒乃さんの記事を批判してみる

最近、麻雀勢の間で雀魂が流行しはじめていますね!

ちょっと前までは政治的配慮だったのか、日本サーバーのプレイヤーは日本サーバーの間でしか対戦できませんでしたが、最近再び金の間以上で日本サーバーでも中国サーバーのプレイヤーとも戦えるようになりました。

それで雀魂勢の間ではよく知られているのですが、中国プレイヤーには日本の常識からはかけ離れたような打牌の傾向が結構見られます。

・副露率が高い(60とか70%を超える者もしばしば)

・大明槓が多い

・押し引きがかなり押し寄り

etc

この点は雀魂の日本進出の頃から指摘されており、Vtuberの千羽黒乃さんが2019年9月にこんな考察記事を書いています。

未知のものに対して考察記事を書くこと自体は素晴らしいのですが、しかしこの記事には誤った情報が多いです。魂天の実績もあり、Vtuberとしても活躍している千羽黒乃さんがこれを発信すると鵜吞みに信じてしまうファンも多いと思われるため、あえて批判するべく筆を執りました。

というのも日本と中国では麻雀人口の規模が、それ以前にそもそもの人口の桁が違う。
仮に中国麻将プレイヤーの僅か1割が日本式麻雀に流れてきただけだとしても、日本の麻雀人口の総数に匹敵する数の雀士が移動している可能性があるのじゃ。なぜそう感じたのか? と思う方もおられるじゃろう。
というのは、彼らの戦術の幾つかは日本麻雀のセオリーからは外れた独特のものであるからじゃ。「日本式麻雀が世界的に流行りはじめている」というよりは「中国麻将や台湾麻雀の打ち手が、気分転換や交流のために日本式麻雀でも遊ぶようになった」
という解釈の方が近いのではないじゃろうか?

中国麻将とのルールの違いからくる独特の戦術さて、ここからが本題じゃ。
中国麻将独特のルールと、そこからくる特徴を挙げてゆくのじゃ!

・リーチがない→当然一発や裏ドラもないため、門前のアドバンテージが小さくなる。

・ツモでもロンでも払う点数が変わらない
→自分が聴牌している状況ならば、リーチを受けても全ツッパ(危険牌であろうと全て押す)する方が得になる状況が多い。

・ドラ・カンドラ・裏ドラがない
→カンのデメリットが少なくなり、相対的にツモ数増加のメリットが大きくなる。また、急所をチーさせないための「邪魔カン」も戦術の1つとして用いることがある。

・フリテン・一翻縛りがない
→片上がりの喰い断や役牌バックにも躊躇がない。中国麻将には役が81もあり、しかも食い下がり(鳴いて点数が安くなる役)がないため、鳴いて面子を確定させながら、あとから役をつけにいくのがセオリー。

また、台湾麻雀はそもそも和了に役が必要ない。

これを読むと、千羽黒乃さんの想定している「中国麻将」のルールは「国際公式ルール」と思われます。中国麻将(国際公式ルール)の説明は以下のwikipediaを参照ください。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E9%BA%BB%E9%9B%80

多分、千羽黒乃さんはこのwikiを読んで中国麻将のイメージを持ったのかと思うのですが、重大な落とし穴があります。

中国には無数の麻雀のルール、ローカルルールがあります麻雀のプレイヤー人口も数億人はいると推測されています。

しかし「国際公式ルール」のプレイヤー人口はそのわずか数%に過ぎません。

というのも、wikiを読めばわかるのですが、国際公式ルールは「競技麻雀として中国政府認定で様々な麻雀のルールを基に新規に作られたルール」で、「競技麻雀としては論理的に優れてはいるが複雑でまったく初心者向けではないルール」です。

いわば市井での賭博とかご近所さんと気軽に打つようなルールではなく、「マニアがガチで対局するための競技麻雀ルール」です。まあ「中国麻雀」でググればまっさきにヒットするのが「国際公式ルール」なので、勘違いしてしまうのは無理もないのですが。

なので中国内でも一般にはあんまり知られていないルールで、プレイヤー人口もかなり少ないです。

中国のリアル麻雀は地域ごとでかなりルールに差があり、ところ変われば全然別物です。その差異は日本のリーチ麻雀の間の細かいルールの違いなんて比べ物にならず、それぞれが別ゲーといえます。

一方、近年ではスマホなどのネトマアプリが普及しており、地域を超えた麻雀ルールの広がりもあります。よくあるのは四川麻雀の系統や寧波麻雀の系統のルールでしょうか。その中には日本麻雀、すなわち雀魂とか姫麻雀も含まれます。

そして中国のネット麻雀でもっとも勢力が大きいルールは多分、日本麻雀です。

理由は『咲-saki-』と『アカギ』のアニメです。中国でもアニメとゲームのオタクが被っています。しかもそのルールは天鳳やMJでネットで打てます。

「メディアコンテンツ」と「ネット麻雀」、このふたつが揃うことでブームとなったのです(多分)

ちなみに中国の麻雀研究者の段昊さんが中国国内でのアクティブプレイヤー人口を推測する記事を書いています。正確な統計ではなく推測です。

国标麻将(国際公式ルール):2 - 5 万人

立直麻将(日本麻雀):50 - 100 万人

これを見ても千羽黒乃さんの仮説

「日本式麻雀が世界的に流行りはじめている」というよりは
「中国麻将や台湾麻雀の打ち手が、気分転換や交流のために日本式麻雀でも遊ぶようになった」
という解釈の方が近いのではないじゃろうか?

これが間違っていると思います。

もちろん、わざわざ日本の麻雀アニメを観るようなひとは元々が麻雀打ちだった可能性は高いと思いますが、その背景となったルールは育った環境によってかなり多種多様だと思いますし、その中に「国際公式ルール」を打っていたひとはレアケースではないかと。つまり一筋縄で考えられるようなものではないと思います。

一般的なことをいえば、中国の市井の麻雀ルールは基本的にネットで打てません。ネットで打てるのはネトマになったルールだけです。

「日本麻雀が先行してネトマとして存在した」こと、さらに「麻雀アニメがあった」こと、これが単純に中国で日本麻雀ルールが普及した要因ではないでしょうか?

では、中国のプレイヤーが独特の打ち方をするのは何故か?

言い換えれば日本のセオリーに囚われないか?

この疑問については

・日本の麻雀戦術書が翻訳されていないし、戦術サイトを読めるのも一部の日本語がわかるオタクに限られる

・アニメの打ち筋に影響されている

・もしかしたら日本とは別の中国独自の戦術理論が議論されている

この辺りが妥当じゃないかと思います。

日本の高段位プレイヤーは中国のプレイヤーの打ち方をバカにしがちですが、現在は日本の方が雀力が上だとしても、将来的には戦術を凌駕される可能性があります。日本の戦術だって数理的に考えるようになったのは意外と最近ですし、それほど洗練されているという保証もありません。

現に麻雀最強AIの「Suphx」の開発者のメインは中国人です。


何がいいたいのかというと、過去の遺物に胡坐をかいているような態度では、いずれ日本の麻雀も中国に超えられます。

新しいものをバカにする人間は必ず老害となるので。

とはいえ、千羽黒乃さんを口実にあんまり関係のない持論を書いてしまいました。

千羽黒乃さん、申し訳ありません!


最後に、中国麻将の「国際公式ルール」に興味を持った方はこちらのマガジンを読んでください。ちゅんま仲間はいつでも募集しております。





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