Tippingに関する論文アブスト( Ofer H. Azarさん)

The Implications  of Tipping for Economics and Management

 チップは、経済行動の動機づけにおける社会的規範と心理的理由の重要性を説明する現象である。チップが社会規範であり、そしてそれに違反することが心理的な負の効用をもたらすため、人々はチップを渡すのである。このチップは経済的にも重要である。アメリカだけで、何百万もの労働者がチップから収入の大部分を得ていて、年間に渡されるチップは数億ドルにも達する。チップは、世界中の国々で流通している。これらは心理学者によって広く研究されてきたが、経済学者にはあまり注目されてこなかった。他の経済学者がこの非常に興味深い現象に対する研究を奨励するために、本論では、経済学におけるいくつかの分野、つまり社会経済学、行動経済学、労働経済学、および情報/経営戦略に対するチップの影響を論じる。議論の一環として、最後のセクションでは、将来の研究に対するアイディアを提供する。

Azar, Ofer H., The Implications of Tipping for Economics and Management (September 2002). International Journal of Social Economics, Forthcoming. Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=339240 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.339240

The Social Norm of Tipping: A Review

 アメリカのレストランだけでも、年間270億ドルものチップが渡されている。チップは他の業種や国でも一般的なものであり、チップは重大な経済活動である。チップに関する研究は、主に心理学、経済学、ホスピタリティ学、観光学など、さまざまな分野に広がっている。本論文は、チップに関する既存研究を概観するためのものである。チップに関する研究の要約に加えて、著者のアイディアも含んでおり、将来の研究課題を提案するものである。

Azar, Ofer H., The Social Norm of Tipping: A Review (September 5, 2002). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=370081 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.370081

Tipping: The economics of a Social Norm

 チップは、経済行動を動機づける上での社会的規範の重要性を示している。人々がチップを渡すのは、これが社会規範であり、規範に従わないことで、感情的なdisutilityを生じさせる社会的不満(不承認)となるからである。チップは経済的にも重要である。アメリカだけで、何百万もの労働者が彼らの収入の大部分を得ている。そして年間に流通するチップは数十億ドルにも達する。本論は、このようなチップ行為が単純な現象ではないと主張する。チップは、6つの機会に場合分けできる。本論ではこれを、報酬チップ(reward-tipping)、価格チップ(price-tipping)、事前チップ(tipping-in advance)、贈収賄チップ(bribery-tipping,)、休日チップ(holiday-tipping)、ギフトチップ(gift-tipping)の6つに分類した。そして、各カテゴリーの経済性について議論する。これらの分析では、多くの場合で非効率を解消し、福利を増加させるという理由から、チップの社会的規範には経済的な正当性があることが示されている。特に、チップは他のメカニズムではできないようなサービスの促進を可能にする。これは、経済学と社会規範との関係が実に複雑であることを示唆している。Arrow(1971)が主張しているように、社会規範が社会的行動を動機づけるだけではなく、経済でき理由もある社会規範の確立を促進するかもしれない。

Azar, Ofer H., Tipping: The economics of a Social Norm (September 16, 2002). 

The history of tipping ―― form sixteenth-century England to United States in the 1910s

 チップは、感情を持たず、社会規範を気にしない利己的な経済主体という伝統的な想定に対して異を唱えるような、数十億ドル規模の現象である。本論では、チップの初期の歴史について概説し、チップのさまざまな側面についての経済分析を示す。それから歴史的証拠を用いてチップに対する以下の2つの疑問に回答する。「なぜ人々はチップを渡すのか?」「チップを渡すとサービスの質が向上するのか?」。チップの理由は年々変化しているが、社会的規範に従い、(それに従わないことに対する)きまりの悪さを感じないため、というのが一般的な理由であった。また、業種によってその程度は異なるが、チップがサービス品質を向上させるようだと考えられる。

 Ofer H. Azar, 2003. "The History of Tipping - From Sixteenth-Century England to United States in the 1910s," Economic History 0309001, University Library of Munich, Germany.

Why pay extra? Tipping and the importance of social norms and feelings in economic theory

 チップは、一般的な経済モデルでは説明が難しいと思われる数十億ドル規模の現象である。本論では、チップの複数の側面について説明し、チップを6つの異なるカテゴリーに分類する。報酬チップ(reward-tipping)、価格チップ(price-tipping)、事前チップ(tipping-in advance)、贈収賄チップ(bribery-tipping,)、休日チップ(holiday-tipping)、ギフトチップ(gift-tipping)である。そして、これら各カテゴリーの経済性について議論する。チップは非効率性を解消し、福利を増すため、経済的な理由があると考えられる。チップの潜在的理由を分析することで、経済行動を動機づける社会規範と感情(例えば、チップを渡さない時の恥ずかしさと不公平さ)の重要性を示す。次に、労働者がチップを渡さない利用者(消費者)に対して示すことがある報復的行動について議論し、将来の研究のためのアイディアを提案する。

Azar, O. H. (in press-b). Why pay extra? Tipping and the importance of social norms and feelings in economic theory. Journal of Socio- Economics.