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オムライスと創作料理#01「『カラー版 図説 デザインの歴史』9/23出版」

来月23日に共著本『カラー版 図説 デザインの歴史』が学芸出版社から出版される。ここではその本の制作過程での裏話や各ページに書ききれなかった内容あるいは補足を綴っていこうと思う。

記事タイトルは、執筆を終えての感想である。
オムライスと創作料理、両方ちゃんとしたもの作るの大変だなー、って。

この本は大学や専門学校でのデザイン史の教科書として書いたもので、主な内容は見開き44章と7つのコラム、合計51本からなっている(他に年表とか索引とかもあるが)。具体的な目次はAmazonとかで確認可能だが、51本のうち私が執筆担当したのは、以下の15本

  • 02 アーツ・アンド・クラフツ運動

  • COLUMN4 日本の工業デザイン教育のはじまり 

  • 22 グッドデザイン・ミッドセンチュリー

  • 23 北欧のデザイン

  • 25 戦後ヨーロッパの工業デザイン

  • 29 よく遊び、よく学べ

  • 33 生活領域横断型ブランド

  • 34 マーケティングとPR

  • 35 家電──風と熱の利用

  • 36 モビリティのデザイン

  • 37 人間工学とユニバーサルデザイン

  • 38 形態は機能に従う?

  • 39 スポーツカジュアル

  • COLUM6 ジャパン・アズ・ナンバーワン

  • 44 存在しない女たち

オムライス

執筆者5人いるのに1人で15本は書き過ぎじゃないのか、というのは置いておくとして、このタイトルの並び、デザイン史を一通り学んだ方ならお感じになると思うが、前半5つは定番メニューである。どのデザイン史の本にも必ず載っているであろう項目であり、そこでのメイントピックも決まっている。ものすごくざっくり言うと、こう。

  • 02 アーツ・アンド・クラフツ運動 ▶モリス

  • COLUMN4 日本の工業デザイン教育のはじまり ▶東京高等工芸

  • 22 グッドデザイン・ミッドセンチュリー ▶イームズ

  • 23 北欧のデザイン ▶アアルト

  • 25 戦後ヨーロッパの工業デザイン ▶ディーター・ラムス

東京高等工芸だけちょっとマイナーかもしれない。純粋美術(東京藝大)でも建築(東大建築)でもない、工業デザイン教育を目的とした、現在の千葉大デザイン学科の前身である。

さて、書くべきことがハッキリしているなら、書くのも簡単。となるだろうか。答えはノーである

これはオムライスなのだ

オムライスを食べたい人にオムライスを提供して、「普通に美味しい」ではなく、「!!」と思わせるのは相当難易度が高いだろう。

定番メニューを「普通に美味し」く作るためのレシピは確立されている。例えば北欧デザインについて書くならアアルトだけでなく、椅子と照明の名作の数々は外せない。

しかし、「普通に美味しい」と言われるだけなら、何も自分が作る必要がないのではないか。何らかのオリジナリティを発揮したい、という作り手(書き手)の欲がある。だがやり過ぎてもいけない。あくまでもオムライスでなくてはならない。半熟の卵をドレスのように巻いたりするアレンジはあり得るかもしれないが、炒り卵にまでしてしまうとそれはもう「…チャーハン?」と思われてしまうだろう。

本の話に戻すが、教科書的な本を書く人は必ずこのジレンマを経験することになるのだろう。

創作料理

一方、「29 よく遊び、よく学べ」以降の10本は定番感の薄い、創作料理のようなものだ。よく言えば自由に書けるのだが、どうまとめ上げるかが難しい。腕の見せ所、とも言える。

わりとすらすらと書けて文字数削って収めたものもあれば、なかなか構成案がまとまらず、〆切前々日くらいまで一文字も書き出せずにいたものもある。具体的に言うと、「35 家電──風と熱の利用」が難産だった。なまじ自分が家電の歴史を専門にしているだけに、取捨選択が難しかったのだ。

また同じ店の創作料理10皿であるので、どのくらい統一感が必要なのかも大いに悩むところであった。悩むというか、すべてを同じような構成では書けなかった。「この人ページによって書きぶりが全然違うな…」、と思われてしまうかもしれない。

やはり、創作料理は創作料理で難しかった

そんなわけで、私の初めてのオムライスと創作料理、最善は尽くしたつもりなので、多くの方にご賞味いただければ嬉しいし、本当にご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い致します、という気持ちでいっぱい。



余談だが、私がオムライスで「!!」と思ったのは、世界中からお客さんがやって来る、京都の『ザ・洋食屋・キチ・キチ』さん。

オムライスをエンターテイメントにまで昇華させちゃうなんてちょっと考え付かなくてすごいと言わざるを得ない。意味わからないと思うので、是非YouTubeなどで動画をご覧いただきたい。

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