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いよいよ夏が来るのだ


カートコバーンが死んだ年の夏、
誕生日に吉本ばなな先生の『N・P』を
買ってもらった。

それまでに何度も図書館で借りていたが、
どうしても新品の『N・P』が欲しかった。

初期の吉本ばなな作品が好きで、  
『アムリタ上』『アムリタ下』を読み、
小説家になるのを諦めたくらいフアンだった。


『ハネムーン』や『デッドエンドの思い出』や、
『ジュージュー』も本当に好きで何回読んだか
もうわからないくらい読んだ。

しかし、
その中で『N・P』は別格だ。

Radioheadの「OK Computer」を聴いた回数に
匹敵するくらい読んで来たからもはや聖書だ。


映画や小説の登場人物になりきって読むし、
何なら影響を受けて生き方すら変わってしまう。

私は当時高校生だったから、
同級生が40代の小説家と付き合っているなど、
ありえないと思っていた。

しかし、自分が40歳になってみると、
LEONとマチルダではないが、
一瞬で心を通わせることができる相手が、
恋愛対象から愛するゾーンに入ることは、
いくらでもありえるのだと確信した。

ちなみに私は母子家庭だから、
冒頭の母と娘のシーンも泣ける。

ベルギー人の映像作家が監督した『N・P』は
フォントからして異質な別物だった。

ATMに並んでいるときに、
いきなり銃口を突きつけられたり、
毒入りよ、と出されたシチューに睡眠薬が
入っていたり、海辺でケンタッキーを焼いたり。

私にとってすべてのシーン🎬が宝物なのだ。
日本人クリエイターが集結して、
『N・P』が映像化されるなら、
私は無償で働き参加すると決めている。


「いよいよ夏が来るのだ。」

日本人がダメなら、
ポン・ジュノ監督か、
ミシェル・ゴンドリー監督にお願いしたい。


登場人物

私(加納風美)
主人公で語り手。
大学の英文学研究室で働く。

箕輪萃
作家・高瀬皿男の娘だが、
親子と知りながら関係をもった過去がある。
小説「N・P」に関連するものを集め続けている。風美と出会い、奇妙な友情を育む。

高瀬咲
作家・高瀬皿男の娘。
萃とは異母姉妹だが、あえて交流はしていない。風美が勤務する大学で「N・P」を研究している。快活な性格で風美とも親しくなる。

高瀬乙彦
作家・高瀬皿男の息子で、咲の双子の弟。
萃とは異母きょうだいであるにもかかわら
ず恋仲になる。咲と二人暮らし。

庄司
翻訳家。萃の恋人であった時期に
「N・P」を紹介され、訳し始める。
のちに高校生の風美を恋人にもつ。
パーティーで咲・乙彦の姉弟を風美に紹介する。「N・P」翻訳途中で自殺する。


風美の母。翻訳家。
ろくでなしの夫と離婚し、
女手一つで二人の娘を育ててきた。

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