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アルナイラム、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)治療薬アムヴトラの承認取得-TTR-FAP治療の第2世代siRNA製剤

アルナイラムは2022年9月26日、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)治療薬「アムヴトラ」(一般名:ブトリシランナトリウム)が、同日付で製造販売承認を取得したと発表した。

同剤は、TTR-FAP治療の第2世代siRNA製剤。3カ月に 1回の皮下投与で、トランスサイレチン(TTR)の持続的な産生抑制効果が期待できる。TTR-FAPは、TTR遺伝子変異によって、 TTR由来のアミロイド線維が心臓や神経をはじめ、全身の諸臓器に沈着することで発症する進行性で予後不良の遺伝性疾患。

同剤は2021年12月に製造販売承認申請を実施。同剤は、厚労省からトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーを対象にした希少疾患用医薬品に指定された。また、2022 年 6月には米FDAの承認を取得。同9月15日、欧州委員会(EC)でも承認されている。現在、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)で審査が進行中。

今回の承認は、第3相多施設無作為化オープンラベル国際共同試験のHELIOS-A試験の結果に基づく。

【HELIOS-A HELIOS-A 試験(NCT03759379)】
同試験は、同剤の有効性と安全性を評価する第3相無作為化オープンラベル国際共同試験。日本を含む世界22カ国の57施設で164 人のトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの患者が登録された。

164例のうち、7例は日本人。アムヴトラ25mgを3カ月に1回、計18カ月を皮下注投与する群(N=122)と、対照薬のパチシラン(商品名:オンパットロ)0.3mg/kgを3週に1回、計18カ月静脈内投与する群(N=42)に3:1で無作為割付けした。

同剤の有効性は、HELIOS-A 試験と同様の患者集団を対象としたパチシランの有効性と安全性を評価したAPOLLO第3相試験のプラセボ群と比較している。

主要評価項目は、外部プラセボ群(APOLLO試験)と比較した投与 9カ月後の mNIS+7のベースラインからの変化量とした。9カ月時点での副次評価項目は、プラセボ群と比較した Norfolk QoLDNと10-MWTのベースラインからの変化量とした。

18カ月時点で評価されたHELIOSA試験の副次評価項目には、mNIS+7、Norfolk QoL-DN、10-MWT、補正 BMI(mBMI)、Rasch-built 全般身体障害スケール(R-ODS)、血清中トランスサイレチン(TTR)値におけるベースラインからの変化量が含まれている。また、18カ月時点で新たに評価された探索的評価項目には、NTproBNP量、心エコー所見や、テクネチウム製剤を用いた心筋血流シンチグラフィ画像による心臓アミロイド負荷の診断が含まれている。

18カ月間の治療期間後には、すべての患者が、無作為化継続投与試験の一環として、同剤25 mgを3カ月に1回、または50 mgを6カ月に1回投与する治療を、さらに18カ月間継続できる。

【重要な安全性情報】
同剤の使用は成人を対象とする。注射部位の反応(ISR)が観察されてた。対照臨床試験で、同剤の治療を受けた患者のうち4.1%がISRを発症した。同剤によるISR症状として、注射部位の紅斑、注射部位の痛み、注射部位の掻痒感、注射部位の温熱感が最もよくみられた。

【血清中ビタミンAの減少と補給の推奨】
同剤による治療で血清中ビタミンA値が減少する。同剤を服用する患者はビタミンAの1日推奨摂取量(RDA)の補給が推奨される。血清中ビタミンA値は体内のビタミンA総量を反映するものではない。同剤を服用中、血清中ビタミンA値を正常値にするのを目的にRDAを超えた補給は避けること。 患者にビタミンA欠乏を示唆する眼症状(例:夜盲症)が発現した場合は、眼科医に相談を要す。

【副作用】
主な副作用は、ビタミンAの減少(6.6%)、注射部位の反応(3.3%)、ドライアイ(2.5%)、強膜の変色(1.6%)、消化不良(1.6%)、疲労(1.6%)、および末梢性浮腫(1.6%)。

【トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー】
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、遺伝性ATTRアミロイドーシス、FAP(Familial Amyloid Polyneuropathy)とも呼ばれる。

TTR遺伝子の変異が原因で生じる進行性の難治性疾患で、死に至ることも多い。TTRタンパク質は主に肝臓で産生され、ビタミン Aの輸送体として働く。TTR遺伝子に変異が生じると、異常なアミロイドタンパク質が蓄積して、末梢神経や心臓などの臓器・組織を傷つけ、治療が難しい末梢神経障害、自律神経障害や心筋症などを引き起こす。

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの患者数は全世界で約5万人と推定され、障害発生率と死亡率は高く、大きなアンメットニーズが存在する。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの診断からの生存期間の中央値は4.7年で、心筋症の発症者は 3.4年とさらに短くなる。


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