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【疾患レファレンス】寒冷凝集素症(cold agglutinin disease;:CAD)

【寒冷凝集素症(cold agglutinin disease;:CAD)】

寒冷凝集素症(かんれいぎょうしゅうそしょう)は、患者の赤血球に結合する自己抗体 (蛋白)ができて、赤血球が異常に早く破壊されて発生する貧血の自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の1つ。重篤な慢性希少血液疾患とされる。補体とよばれる体の免疫系の一部が自己の正常な赤血球を誤って破壊することで発症する。

AIHAは自己抗体が赤血球に結合する至適温度で、温式と冷式のAIHAに2つに分類される。さらに冷式は寒冷凝集素症と発作性寒冷ヘモグロビン尿症に分類される。

CAD患者には慢性的な貧血、溶血性発作や生活の質(QOL)の低下がみられます。近年、レトロスペクティブな解析で、CAD患者は、血栓塞栓症や若年死のリスクが上昇することが明らかになった。

自己抗体の発生原因の詳細は不明の部分が多く、成人を含めた自己免疫性溶血性貧血の推定患者数は100万対3~10人。年間発症率は100万対1~5人とされる。温式AIHAは成人女性に多い。小児期では思春期以降の女児患者が多い。

寒冷凝集素症のうち続発性は小児や若年成人に多く、マイコプラズマ感染症後に多いのが特徴。発作性寒冷ヘモグロビン尿症はほぼ小児期に限ってみられ、麻疹・水痘・ムンプス等のウイルス感染に続発する。

■自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の分類
(厚労省難病指定「61自己免疫性溶血性貧血」から引用)

(1) 温式AIHA
臨床像は多様性に富む。特に急激発症では発熱、全身衰弱、心不全、呼吸困難、意識障害を伴うことがあり、ヘモグロビン尿や乏尿も受診理由になる。症状の強さには貧血の進行速度、心肺機能、基礎疾患などが関連する。代償されて貧血が目立たないこともある。黄疸もほぼ必発だが、肉眼的には比較的目立たない。特発性でのリンパ節腫大はまれである。脾腫の触知率は32~48%。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併する場合をEvans症候群と呼ぶ。

(2) 寒冷凝集素症(CAD)
臨床症状は溶血と末梢循環障害によるものからなる。特発性慢性CADの発症は潜行性が多く慢性溶血が持続するが、寒冷暴露による溶血発作を認めることもある。循環障害の症状として、四肢末端・鼻尖・耳介のチアノーゼ、感覚異常、レイノー現象などがみられる。皮膚の網状皮斑を認めるが、下腿潰瘍はまれである。

(3) 発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)
現在ではわずかに小児の感染後性と成人の特発性病型が残っている。以前よく見られた梅毒性の定型例では、寒冷暴露が溶血発作の誘因となり、発作性反復性の血管内溶血とヘモグロビン尿をきたす。気温の低下、冷水の飲用や洗顔・手洗いなどによっても誘発される。寒冷曝露から数分~数時間後に、背部痛、四肢痛、腹痛、頭痛、嘔吐、下痢、倦怠感についで、悪寒と発熱をみる。

【治療法】(厚労省難病指定「61自己免疫性溶血性貧血」から引用)
特発性の温式AIHA の治療では、副腎皮質ステロイド薬、摘脾術、免疫抑制薬が三本柱であり、そのうち副腎皮質ステロイド薬が第1選択となる。成人例の多くは慢性経過をとり、はじめは数か月以上の時間枠を設定して治療を開始する。その後の経過によって年単位ないし無期限へ修正する必要も生じる。2/3次選択の摘脾術や免疫抑制薬は、副腎皮質ステロイド薬の不利を補う目的で採用するのが原則。

恐らく特発性の80~90%はステロイド薬単独で管理が可能と考えられる。CAD及びPCHの根本治療法はなく、保温が最も基本的である。温式・冷式共に抗体療法(rituximab)の有用性が報告されている。




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