緑内障分類を薬局で見抜けるか

2019年に、抗コリン作動薬の添付文書がいっせいに改訂されました。
ざっくり言うと
禁忌)緑内障→閉塞隅角緑内障に変更
慎重投与に開放隅角緑内障を追加
挟隅角→閉塞隅角と表現を統一
こんな感じで変わりました。

今まで禁忌)緑内障 とあったので、受診歴や併用薬から緑内障ぽい患者さんについて疑義照会の必要がありましたが、この人は開放隅角緑内障であると判明した場合、疑義照会が不要になったということですね。
これは調剤薬局でも眼科でもわりとWin-Winな改訂と言えますが、
そもそも薬局でこの人は開放隅角緑内障である!と判断つくのか?という問題が浮上したのではないかと思われます。

それを考えるにあたって、まずは緑内障について詳しく知る必要があるのです。

とりあえず隅角ってなんや?ってところから入らないとよくわかってない薬剤師もいるわけで、
なぜ抗コリン作動薬で隅角が狭くなるのかよくわかってない薬剤師もいるわけで、
更に緑内障ってそもそもなんや?って薬剤師もいるもんだから

そのあたりを理解する必要があるのです。

隅角ってなんや?
隅角とは、房水の通り道です。
房水とは、ざっくり言うと目の中の水分で、これがうまく流れないと圧力が高まり高眼圧になります。

緑内障ってなんや?

眼圧が高い=緑内障ではありません
緑内障点眼薬が出ている=緑内障ではありません

この認識がまず必要となります。

緑内障とは、眼圧に耐えられず視神経が障害された状態のことです。
その眼圧は、他の人より高い場合もあれば、普通と言われてる眼圧の場合もあります。
視神経が弱いと、普通と言われてる眼圧にも耐えられずに視神経が障害されるのです。
その、眼圧が普通なのに視神経が障害されている人を正常眼圧緑内障と呼びます。

正常眼圧緑内障は、日本人の緑内障患者の大多数を占めます。
そしてそれは、開放隅角緑内障のうちの一つとなります。
すごくメジャーな緑内障なので、そうなると緑内障=眼圧が高いというイメージは崩れ去るでしょう。

そして眼圧だけ高くて視神経が障害されていない人は、緑内障という病名ではなく高眼圧症という病名になります。
緑内障に移行するリスクが低い場合は、経過観察となり点眼薬も使用しない場合が多いです。

そして隅角が閉塞しているのは、緑内障の人だけではありません。隅角が閉塞していても視神経に問題がない人は、閉塞隅角症という病名となります。
この狭い偶角の人たちの治療の第一選択は手術となります。
隅角閉塞の発生機序に合わせて、虹彩に穴開けたり、隅角広げたりするわけです。白内障合併例では、水晶体を摘出して薄い眼内レンズを挿入する白内障手術をすれば、隅角が拡がり閉塞隅角が解消されます。
術後も人によっては高眼圧が続いたり視神経障害が進む場合は「開放隅角緑内障」として点眼薬などで治療を継続します。

あれ?
薬局で点眼薬もらいにくる人って…みんな開放隅角なんじゃ…?

恐らく、だいたいは開放隅角です。

ただ、何らかの原因で手術をしていない閉塞隅角緑内障の患者も少数ですが存在します。縮瞳の作用のある目薬が出ている人は怪しいです。あとは医師に内服薬に気を付けるように言われています(高齢者は忘れることがありますが…)

抗コリン作動薬が危ないのはどういう機序や?

抗コリン作動薬で緑内障発作が起こる機序ですが、それは散瞳によるものだからです。

ですので見分け方としては縮瞳の作用のある点眼薬が定期的に出ている患者さんと言えるでしょう。そんな症例を見かけたら疑義照会しましょう。

糖尿病に続発する血管新生緑内障は、病期によっては閉塞隅角の可能性があります。糖尿病の人はそれでも、定期的に眼科受診していますし、血糖コントロールも聞き取りしやすいため、我々も注意しやすいですね。

白内障に続発する膨隆水晶体は、閉塞隅角となることがあります。白内障でオペ前の人には、「どうだったかい??」と毎回聞いてみましょう。

そして眼科受診をしていない人に抗コリン作動薬が処方された場合は、急性緑内障発作の説明をちゃんとしましょう。

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