ポリファーマシー、たくさんの薬への依存

なぜこんなに薬を飲んでいるんだろう

と思う処方箋を、薬剤師の皆さんはよく見かけると思います。

一例として。
血圧の薬が出ているぞ、何種類かある
糖尿の薬もあるな、何種類か

一般的な内科ではこれはよくあります。

あれ、ビタミン剤が三種類か…
B12はしびれかな、トコフェロールは高脂血症?Cはなんでかな

PPIがずっと出てるな。胃粘膜保護剤も…
咳止めと痰切りも定期処方日数分
抗ヒスタミン剤が出てるけど二種類も…
めまい止めも定期日数分…これらは耳鼻科領域?
痛み止めも定期日数分…どこ痛いんだ?
下剤三種類、整腸剤も…
芍薬甘草湯と麦門冬湯も出てる
湿布が毎回70枚、外用ステロイドも数種類、痛み止め塗り薬もあるぞ

ん?この人どういうこと?いらない薬あるんじゃない?ほんとに飲まなきゃいけないのって、血圧と糖尿だけなんじゃ…

そう思ったら、患者さんにきいてみよう!と思う薬剤師と、
監査で疲れはてて渡すので精一杯という薬剤師といると思います。
薬の数か多すぎると、その患者さんのことがよくわかりません。この人一体なんなんだ?と思うことがあります。

私の減薬成功例は、ほぼ胃薬です。
ポリファーマシーの患者さんは高率に胃薬を複数飲んでいます。しかしその中で、消化器疾患を抱えていたり、明らかな症状があり食事が摂れないような患者さんは少数だったりします。
まず何故にあなたは胃薬をこんなに飲んでいるのかときいてみます。
そこで「なんでだろう?」と言ってくる人は減らせる可能性が高いです。胃カメラでは慢性胃炎などの病名がついた経験がある場合でも、現在は症状なしと言う人もかなりいるため減薬提案は有効です。
しかし、胃薬に非常に依存している患者さんもいるのです。これがないとご飯が食べられなくなる、胃薬は絶対この○種類必要なの!!!と…
こうなると減薬は難しいのです。

咳止めや痰切りも、現在は咳や痰がなくても、過去に咳喘息などの既往がある人はないと不安と言います。
耳鼻科領域の薬、耳鼻科にしばらく行ってなくて、そのまま内科で頼んで出してもらったパターンだと、内科医も自分で選んだ薬ではないため手を出しにくいです。
ビタミン剤に関しては現在バランスの取れた食生活を送っていても、「ないよりあったほうが体によさそう」というイメージが根付いているためなかなかやめてもらえません。

薬に依存している状態を「まずい」と本人が感じれば
減薬に向けて薬剤師もアクションを起こしやすいのですが、
薬に依存しているけれども何が問題なのかわからない、
薬がないと不安、なるべく多くの薬に囲まれていたほうが自分が守られているようで安心する、誰にも迷惑かけてないしいいじゃないの、という感情を持っている患者さんは難しいです。
どうしたら変わってもらえるのか、いつも悩みます。

薬減らしたほうがいいよ、
薬多いほうが害があるんだよ、

そんなのいくら言ったって、意味ないんです
本人が変わらないと、焼け石に水です

禁煙の話にそれますが、禁煙できる人のパターンは二種類だと思ってます。
何かきっかけがあって、やめるぞという気合いがものすごい人
あとは自分の身の危険がすぐそこに迫っている人です

たとえば今話題の肺炎になったとする。
入院加療が不要の例でも、死んだ人がたくさんいる肺炎であったら、やばいと思ってやめると思います。
手術不能の肺がんになって、今やめれば助かる確率が少し上がりますと言われた場合。やめると思います。
煙草買うお金がなく、食べるものもない。もう何か食べないと死ぬ。小金ができたら、食べ物を買うと思います。

身の危険がすぐそこに迫らないとやめられない。

薬物依存も同じなのです。
しかし残念ながら、同じような薬効の胃薬を複数飲んでいても、今のところ癌になるとか死亡率が上がるとかいう情報はありません。依存した人の心を揺り動かすきっかけにはならないのです。

私の患者さんで、NHKの番組で六剤以上服用すると~のあれを見た人がいました。
「糖尿、最近数値いいから薬減らしてもらった。あと咳もそんなにないから、定期から外してもらった。胃薬も複数だから一個でいいと思って減らしてもらった。だって六剤以上で頭おかしくなるとかテレビでやってたもん」
その人には、NHKがきっかけになったみたいです。それまでは胃薬への依存がすごかったのですが、ご飯も問題なく食べれるし、たくさん飲んでると不安…と。
たくさん飲んでいることをかえって不安に思ったようです。

さて、しかしながら薬が大好き、囲まれていないと不安な患者さんにはどうやってアプローチしていけばいいのでしょうね。

医師から言ってもらうのが効果的ですが、それすらはねのけてしまう人もいます。薬を減らそうとした医師を、あいつはひどい奴だと言うのです。

私はいつも悩んでいて、答えが出せません…。

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